地球…

 豊富な資源と、自然に囲まれたこの青き星は

 その魅力は内外からあらゆる物をひきつけた。

 それは決して幸福ばかりではなく不幸すらも引き寄せた。

 時には異星人の侵略もあった。
 
 時には同じ地球の中から地球を滅ぼそうとすることもあった。

 永劫に続く営みの中、人は常に争い続けた。

 そして手を取り合ってもきた。

 それは人が宇宙に出てからも変わらなかった…。

 今、垣根を越えて集いし者が

 運命の輪に導かれて歴史の一ページにその生き様を刻もうとしている。








 エクシードブレイブス 第1話

 今、機を逃さず











 ――????

 「ダメです! 全ての防衛プログラムが無効化されています!」

  警報が鳴り響く研究所。

  オペレーターの一人が焦ったように報告を続けている。

 「なんとしても止めろ! 奴らを逃がせば多大な被害を請うむる!」

  指揮官らしい人物はモニターを睨みながら激を飛ばしている。

  表情には余裕が一切なく心底焦っているようだ。

  指揮官の男はすでに火の消えたタバコを力強く噛みながら

 「奴らめ…全ては演技だったのか…?

  捕獲当時は15歳のガキだったくせに…」

  ブチッ

  男の加えていたタバコは噛み千切られぽとりと床に落ちた。










 「急げ! もうすぐプログラムが復旧する!」

  走りながら隣を走る少年に声をかける少年。

 「わかってるよ信哉。だが計算上後15分はあるはずだろ?」
 
  信哉は走りながら少しあきれたように言った。

 「祐一はそのゆとりが武器だけどな…。とりあえず何が起こるかわからないんだ。

  常に切り詰めるくらいで丁度いいと思うんだけど…」

 「信哉はその先読みしすぎるのが悪い癖だな。ハゲるぞ」

 「うるさい、このスケコマシ」

  どうにも急いでいる間にするような会話とは思えない会話をする少年二人。

  しかし驚くべき点は話しながら走っているのに今だ息切れのする様子の無い

  二人の体力であろう。

  二人は研究所の警備の網を抜けてひたすら走る。

  自分達の愛機の眠る、格納庫へ。













  ――??? 格納庫

 そこにはすでに見慣れた機体が連ねられている。

 祐一と信哉は自分達の愛機を見つけハッチからコックピットに入る。

 「予定通りだ。後は1分後に出撃体制に入るよ」

 信哉は直接通信で祐一に話した。

 「ああ。奴らの慌てふためく顔が目に浮かぶぜ」

 祐一は笑いながらそう言った。







 「おい! 奴らはまだ捕まらんのか!」

 男はまだ怒鳴っていた。

 「そ…それがどうやらレーダーに反応しているのが次々にダミーのようでして…

  奴らプログラムの改ざんで二重に警備の網を抜けたようです…」

 「ロックシステム、解除できません! 外への通路が開いています!」

 その報告に男はにやりと微笑んだ。

 「よし、入り口に警備兵を固めろ。奴らがいかに強靭であろうと
 
  数十の銃相手ではどうにもなるまい」

 ところが飛び込んだのは別の報告だった。

 「か、川崎所長! 二機のマシンが出撃状態に入っています!
  
  ドアオープン完了! 出撃を止めることができません!」

 川崎は目を点にした。

 だがすぐさま落ち着くとマイクを掴んで怒鳴る。

 「どの機体だ! 報告しろ!」

 「ぱ、パーソナルトルーパー(PT)とオービタルフレーム(OF)です!
 
  識別機体番号PT04とOF00!」

 そして突然モニターに二人の顔が映る。

 どうやら画面通信をジャックしたようだ。

 「二年か…世話になったな川崎所長」
 
 信哉が消え次は祐一が映る。

 「悪いがあんたらの兵器になるつもりはない…。もう俺達が兵器になっちまったのなら

  俺達は自分の納得のいく兵器になる」

 そして二人の顔が分割で映る。








 「「この機体は拉致のときの慰謝料ってことでいただいてくぜ!」」










 「PT…フラムベルクと…」


 「OF…クラウ・ソラスをな!」











 キュウウウウウウン…





 シュゴオオオオ!!













  機体の発信音と共に通信は消え、研究所のメインシステムは全て沈黙した。

  川崎は茫然自失となりへなへなと座り込んだ。

 「はは…ははは…体のいい操り人形ごときが…私に…歯向かうだと…?」

  だが、すぐさま気を取り直したのは失ったものに対する怒りだったのだろうか。

  やがて生きている通信を使い、

 「出撃だ! 奴らを落とせ! なんとしても抹消するんだ!!」














 ――日本近海上

 首尾よく研究所からマシンを強奪し海上を移動する二機。

 信哉は追っての確認を終えると通信を開いた。

 「で? どうするんだ祐一」
 
 「とりあえずこのまま北上すれば日本のどこかにつく」

  信哉ははあ…とため息をついた。
 
 「そのまま行ったらお前が最初に目にするのはおそらく香港だ」

 「え?」

  祐一は手元のマップをモニターに移した。

  確かに方角的には北だが微妙に位置がずれたらしく

  直線状には確かに香港がある。

 「いやちょっと修正すれば日本だろ」

 「お前方向感覚ぐらいは強化されといたほうが良かったんじゃない?

  単独で基地潜入したら迷いまくって自軍に帰ってきたりして?」

  などと二人は脱走者とは思えないのんきぶりだった。

  この状況に流されないのが彼らのもっとも強みといえるかもしれない。

 「ま、未識別の機体が日本に接近すりゃ連邦なりが接触してくるだろ」

 「軍属はカンベンして欲しいけどな〜」

  信哉は肩をすくめた。

  とことん形式ばったやり方が苦手な信哉である。

 「今の情勢だったら自治団とかもいるだろ…。

  何ならこのまま地球圏脱走してもいいし俺」

  祐一はこともなげにそういったが

 「俺達の機体はそれが可能だが、俺達の食料とかどうすんだよ?

  どっちにしろ準備が必要だぜ」

 「でもなあ…どうせ俺達って世間的には死んでるんじゃないか?」

  祐一と信哉は非合法の方法…つまり拉致という形で研究所に連れて行かれた。

  その際、祐一の両親は目の前で殺されたのだ。

  信哉はもともと孤児だったため失うようなものは何もなかったが

  ただ脳裏には一人の少女のことが浮かんだ。

 (あいつ…どうしてるかな…)

  信哉はまだ色あせぬ風景を思い浮かべていた。

  優しい神父のいた小さな孤児院。

  そこにいつも自分の後をついてきた年下の少女のことを。

 「……哉…おい! 信哉!」

  祐一の怒鳴り声で信哉は我にかえった。

 「見えたぞ、あれ日本じゃないか?」

  どれどれと信哉は映し出されるモニターを見た。

  間違いなく日本であると確信した。

  ただあまり綺麗に見えないのは未だ戦乱の火種がくすぶっている証拠である。
 
 「さて最初にコンタクトかけてくるのは誰かな?」

  信哉がそういったときレーダーに反応があった。

  …自分達の後方からである。

  後方から接近してくるような機体に心当たりは一つしかない。

 「よりにもよって追っ手が最初かよ!」

  祐一は嘆くように言った。

  無理も無いが一番最初に行動を起こしたのはおそらく

  研究所だろうから無理も無いだろう。

  悪く言えば当然の結果ともいえる。

  信哉が研究所内をパニックに陥れたものの

  全てのゲートを開放させるためだったので

  さすがに他の戦力をつぶすほうには手が回らなかった。

  信哉はあきらめたようにつぶやいた。

 「仕方ない派手に戦闘するか。それで気づくかもしれないし」

 「そうだなもう日本の領域に入っている。それに…」

  祐一は追っ手の機体タイプを確認した。

  バーザムが数機である。

  主にティターンズが現存していたころ主力で使われたモビルスーツ(MS)である。

 「所長の奴最後まで人のことをなめているようだからな…。
 
  少し認識を改めてもらおう」

 「今のまま雑魚扱いしてもらったほうが俺としては楽なんだがなあ」

  そう言いつつ祐一の後に続き信哉も戦闘体勢に入る。

  日本近海海上。

  特に被害の見当たる船もない。

  つまりは二人にとって遠慮はいらないのである。
 
 「それじゃあ、行くぜ! フラムベルク!!」

  祐一の機体…フラムベルクは通常飛行形態から戦闘に移るため

  ウイングを広く広げバーニアを始動する。

  ぐんぐんバーザムとの間合いを詰める。

  重装甲のわりに軽やかに空を舞う赤い機体は

  敵機のパイロットを愕然とさせた。

 「悪いな…落ちろ!」
 
  右手からやや幅広のエネルギーサーベル『フェイズセイバー』を取り出し

  フラムベルクはそのままバーザムを串刺しにするように特攻した。

 「ぐ、ぐわあ! だ、脱出を!」

  バーザムのパイロットの悲鳴が響く。

  大破する機体を梅雨払いのごとくセイバーから切り捨てる。

  後ろから信哉の機体クラウ・ソラスが上昇する。

 「相変わらず早いねえ…。じゃ俺も行くか。
 
  …喰らえ!!」

  クラウ・ソラスは右手を高々と上げるとエネルギーを集約させる。

  そこには丸々バーザムを飲み込むかのような強力なエネルギー弾が

  チャージされた。

 「バーストショット! ロックオン!!」

  そして敵に向かって右手を突き出した。

  当然、チャージショットは敵に向かって猛スピードで飛んでいく。

  エネルギーの威力と物理法則によってバーザムはそのまま海の中まで沈められた。

 「よし、この調子で行くぜ!」

  フラムベルクは別の機体に向かって飛んでいく。

  クラウ・ソラスもまた続いていく。

  その様子に追撃部隊はただおろおろとするばかりだった。

  翼を得た少年達を止める術は…ない。








  ――????

 「未識別の機体…二機を日本近海上にて補足。データはわかりませんが

  周波数から察するに…PTとOFだと思われますー」

  間延びした緊張感の無い報告が飛ぶ。

 「OF…? 火星圏の者が入り込んだのか?」

  やや厳しい表情をした女性が疑問を投げかける。

 「いえ…そのようなデータはありません」

 「今のところ、目下戦闘中のようですが〜?」

  女性は少し考える仕草をしたが

 「冥夜様と武様…それに国崎様に出撃準備をなさるよう伝えなさい」

 「「「はい! 真那さま!」」」

  三人の少女のオペレーターたちは口をそろえてそういった。

  ところが真那と呼ばれた女性は表情を曇らせて

 「艦長です! そう呼びなさいと教えたでしょう!!」

  オペレーターたちを怒鳴りつけていた。

  ここでの出会いが祐一達の運命の始まりだった…。

                                  続く

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