「長官、間もなく本部に到着します」 オペレーターに声をかけられ、ひげを生やした紳士は窓を見る。 「ふむ…そうか」 眼下に広がる基地を見下ろす。 あそこにいる主力の部隊の大半がまだ二十歳にもならない少年少女たちだという。 大人がふがいないばかりに若い者達が戦場で命を散らす。 しかもそれを当然といわんばかりに傍観し 自身の保身のみを考える上層部に嫌気が差す。 (いかんな…) これから会うのはそんな醜い権力者の思惑とは別に 自らの信念の元に戦う者たちだ。 彼らがそんな思惑に巻き込まれないように尽力すべく自分が そのような不満を顔に出すわけには行かない。 スーツの胸ポケットから写真を取り出す。 そこにはピンクの髪の変わった髪型をした少女が映っている。 「さて…どのくらい成長したかな? わが娘は…」 厳しい目つきをしていた紳士が、優しい顔つきに変わる。 子供を慈しむ親の目に。 やがてクラップ級の戦艦は着陸態勢を取り始めた。 エクシードブレイブス 第11話 結成、新部隊 ――アンリミテッド本部 ロビー 「というわけで本日極東支部の珠瀬長官が来訪されます。 皆さん気負う必要はありませんが、本日はなるべくおとなしくしててくださいね」 朝礼は秋子のそんな報告から始まった。 ここの部隊に所属しているもので長官にあったことのあるものは少ない。 ほとんどのものが初めて会うことになる。 「白銀さん、それに伴って鎧衣さんと珠瀬さんが霧島研究所より 一足早く戻ってくるそうですよ」 「え? てことはあいつらの機体完成したんですか?」 武は秋子に聞き返した。 「ええ、「疾風(はやて)」と「閃光(せんこう)」は完成したそうですよ」 「へえ…じゃハッチまで迎えに…」 そういってきびすを返した武の前に、 「その必要はないよ武」 「わたしたちもう戻ってきてますよ」 武の前にはすでに見慣れた友人達が立っていた。 学友の鎧衣尊人と珠瀬壬姫。 苗字でわかるとおり、珠瀬長官というのは壬姫の父親だ。 「おう! お前ら早いじゃないか!」 「そりゃ長官が来る日に完成するんだもの。急ぎもするよ」 「ぱ…長官はまだついてないんですか?」 壬姫の質問に武は首をかしげた。 その質問に答えたのは窓を見ていた往人だった。 「さっきクラップ級が着陸した。おそらくあれがそうだろう。 もうすぐこっちにくるんじゃないか?」 往人の言葉どおり月詠に案内されてひげを生やした紳士がロビーに入ってきた。 「ふむ…じかに顔をあわせるのは初めてだね。 初めまして、私が極東支部長官の珠瀬だ」 全員敬礼その場で敬礼する。 軍慣れしてない祐一や信哉もみなにならう。 「ふむそんなにかたくならんでよろしい…おや?」 長官は何かに目をつけた。 視線の先は彼の娘だった。 「おお〜たま〜!」 (ってあんたもたまだろうが!?) この場にいた全員がそう思ったそうだ。 「あ、パパ…じゃなかった長官! お久しぶりです!」 「いやいやそんなにかたい挨拶でなくてよいのだよ〜。 ん〜立派になったなあ。パパ嬉しいぞ〜」 見事な親ばかぶりだった。 というか娘を溺愛する父親のいい例かもしれない。 極端でないという意味では。 「ふむゆっくりと語りたいところだが、まずは仕事をせねばな」 我を見失うほどでもなかったようだ。 全員を見渡せる位置につくと、着席をみなに促す。 席に着くと、モニターを用意させた。 「現在、我々が相手取っている勢力だ。 まずは火星。主にアンリミテッドの皆が接触した火星の未開発地域から 襲撃を行っている通称『イレイザー』」 「奴らは基本的にクラゲみたいなマシンで攻撃を行っている。 …無人機だけどな」 武が追加で補足する。長官はうなずいて続ける。 「その通りだ。そのため彼奴らの目的は未だ不明だ。 そして彼らと最近協力体制を取っているらしい 『バフラム・リベンジャー』」 「彼らの戦力の中心はイサイルという謎の少年です。 かつてのバフラムのOFを中心とした戦力で構成されています」 真理奈が書類を読み上げる。 「彼らの目的は地球の制圧、および支配だ。火星で未開発地域での労働力の 確保のため…というよりはスペースノイドの権威を示す発言を 連邦にはほのめかしているがな。彼の持つ戦力は一体どこから得たのかは 未だ不明だ」 (あれだけの戦力…破棄されていたのはオシリスだけだとしても 何かバックアップは背景にあるだろうな…) 信哉は無言で考えていた。 オシリスの圧倒的力を思い出して。 「次に「R・G」を名乗るMS部隊。…過去の戦争の ネオ・ジオンの思想に近いものをもって動いている。 彼らは地球から人類を粛清するつもりだ」 「その分やりかたが過激だよな。 命をなんとも思ってない」 浩平が毒づいた。 彼はもっとも前線で彼らの戦いを見ていたから。 「そして最近暗躍し始めた『アザゼル』という研究機関だ。 どうも『R・G』とコンタクトを取ったらしい」 「な!?」 祐一と信哉は同時に反応した。 「技術提供と引き換えに戦力を借りているらしい。 すでに共同での戦闘を連邦の別部隊が目撃している」 裏づけを話す長官の視線は二人を捕らえていた。 「相変わらず手段を選ばない奴らだぜ…」 「絶対に叩き潰してやる…」 二人はうなずきあうと再び席に着く。 「そして独自の目的で動く謎の勢力… 『えいえん』と呼ばれる異世界の勢力に 『黒騎士』が率いる謎の機械生命体の部隊」 浩平と舞人は複雑な表情を浮かべた。 彼らが少なからず敵を増やしてしまったことには変わらないからだ。 だが長官はそんな二人の表情を見抜いて、 「二人ともそんな顔をすることはない。どのみち 彼らの目的が君ら一人ではない以上、あれは人類共通の敵だ。 だから間違っても一人でカタをつけようなどとは思うなよ? そんなことはこの場にいる誰もが望んでおらん」 うんうんと、その場にいる誰もがうなずいた。 一人として例外はない。 「そんなかっこいい役、さくっちには似合わないよ」 舞人の隣にいた希望がぽんと肩を叩く。 「浩平君には守る人と帰る場所がある それが戦う理由でしょ?」 みさきがやんわりと微笑む。 「に、似合わなくて悪かったな」 「ああ…そうだ。一人で背負い込もうなんて考えてないさ」 そんな風に返した二人はいつもの二人だった。 「さてそこでだ。今後君達には「アンリミテッド」「デュランダル」の壁を越えて 共同で部隊編成を行うことになった。それに伴って部隊名を考えてほしい」 確かに今のままでは呼びにくい呼称である。 それはその場にいた誰もがそう思った。 その場その場で思いついた名前を話し合っている。 「うーん…肉まん!」 「真琴…それはお前の好物だろ? 祐一とその仲間たちってのは?」 「却下」 「…はちみつくまさん」 「あははーっ…舞、それも名前じゃないよー」 「それなら桜坂連合ってのはどうだ?」 「や、なんかちんけな族っぽいから没」 「うーんそうだな…ラーメンセット」 「往人…お前…真琴ちゃんと同レベルか?」 さすがに千差万別な名前(?)が飛び交い思うように決まらない。 そこで秋子がぽんぽんと手を叩いて皆の注意を集めた。 「そうですね…『エクシードブレイブス』というのはどうでしょう?」 「ほう…どんな意味があるのかね?」 「エクシードとは超越…という意味の単語です。 環境、住んでる場所、年齢、性別、そんな垣根を越えて集まった 勇士達…そういう意味ですがどうでしょうか?」 秋子は頬に手をやるなじみのポーズでその場にいる全員を見た。 「ボクはいいと思うよ。武の考えた奴よりよっぽどいいや」 「一言多いんだよ尊人。でも俺も賛成だな」 そんな武と尊人の会話を皮切りに皆も口々に賛成を促した。 「では決まりだな。本日よりこの部隊は エクシードブレイブスとする!」 ワアアアアアアア!! ひときわ大きい歓声が上がった。 未来への架け橋を繋ぐ部隊。 エクシードブレイブスは今日この日に生まれた。 今、この瞬間をもって。 そして新たなる火蓋も切って落とされた。 ――???? 「ふむ…どうやら連邦側は自衛部隊と結託したらしいな」 「ま、考えられることだな。厄介ごとははみ出し物に任せようって腹だろう? 奴らも災難だな。実力があるばっかりに余計にな 金髪の青年の発言に、眼鏡の少年はうなずいた。 「ああ、彼らの能力はまさに一騎当千。 甘く見ると痛い目にあう…」 「じゃ軽く仕掛けるか? 準備がてらに」 「君は熱くなると周りが見えなくなるからな…彼女を連れて行きたまえ」 「ったく信用ないねえ…どっちを連れてけばいいんだ?」 「君が選べばいい」 くっくっくと眼鏡の少年は笑った。 さも楽しそうに。 それは友人をからかう少年の顔だった。 「美坂は苦手だからあいつにするよ」 「わかった。健闘を祈る」 金髪の少年は軽く手を上げると部屋を出た。 その表情は含み笑いを浮かべている。 「やっと会えるな…あいつに」 続く SSのTOPに戻る