エクシードブレイブス結成から三日後…。

 報告や事後処理、今後の対応などの相談や雑務を終え、

 珠瀬長官は極東支部へと戻っていった。

 さて新体制になったわけだが、元々協力体制でやってきたうえ、

  隊員同士もほとんどが顔見知りということもあり、

 実働部隊の者達にはこの決定はそれほど影響しなかった。

 いつもどおり、お互いで話し合ったり、トレーニングしあったりの毎日だった。

 そんなある日…。

 「山彦、この部品ってこっちだっけ?」

 舞人は何故か整備室で整理班の道具や部品の整理を手伝っていた。

 「ああ、そっちの棚の上に積んでおいてくれ。それが終わったら
 
  そことあそこの道具をあっちとそっちに…」

 「ちょ、ちょっと待て。一度に言うなわからなくなる」

 慌てて舞人は落ちている部品を拾い集めていった。

 そもそも彼がここにいるわけは至極単純だった。

 罰ゲームである。

 先日の夜に、皆でやったポーカーに一人負けした舞人は

 山彦の命令を聞くという罰ゲームを背負ったのである。

 その罰ゲームの内容とは…日ごろ散らかりぎみ整備室の整理整頓を命じられたのである。

 「くそっ次があったら絶対負けるものか…ちくしょう〜」

 ぶつぶついいながらもしっかり手伝っているのはお人よしだからか

 融通が利かないのか…。

 と、そんな舞人の目の前に見慣れない機体があった。

 薄い青を基調にしたガンダム。

 「おーい、そこの万年発情期。この機体はなんだ?」

 「なんだよ恋愛否定組…っとこいつか。こいつはなマックスの機体だよ」

 「あ? 牧島の奴いっちょまえにガンダムに乗り換えるのか?」








 エクシードブレイブス 第12話

 刻み始めた秒針











 マックスもとい牧島とは牧島麦兵衛という少年のことである。

 ここデュランダルのパイロットで、礼儀正しく熱血漢の好青年である。

 ただ、雪村小町を敬愛していて舞人が彼女をたらしこんでいる悪人という図式を

 持っていたため、いまだに舞人に対してだけは不敵な態度を取る。

 が、お互いにそのほうがやりやすいという認知があるため決して仲が悪いわけでもない。

 「あいつどうも接近戦のほうが得意らしくてな。それで

  接近戦を主体にしたガンダムの試作機のテスト…という名目で
 
  うちが預かったのさ」

 「ふーん…」

 見た目には特に目立った特長はない。

 「そいつは元々試作機の一号機をベースに作ったらしいぜ」

 「試作機をモデルにまた試作機とはな〜」

 舞人は軽く笑い飛ばした。

 「ほらほら手が止まってるぞ、次々!」

 「へえへえ…」

 山彦の激が飛び、舞人はしぶしぶながら再び仕事に戻った。











 ――アンリミテッド支部 ロビー

 「じょ、冗談だろ…?」

 信哉は祐一の発言に絶句した。

 他の皆は周知の事実だったので特に気にも留めない。

 「ああ、マジだ。あの部屋にあった目覚ましは全部毎日鳴っているぞ」
 
 それは今朝のことだった。

 祐一が名雪の部屋に用事があったので信哉もそれに付き合った。

 基地内の部屋なので内装は皆同じだが、一つ気になることがあった。

 それは目覚ましの数である。

 大小あわせて数十個は軽くあったので信哉はあれはなんだと祐一に聞いたのである。

 「あいつの寝起きの悪さは筋金入りだ…。あゆや真琴の苦労が目に見て取れる」

 「そうなんだよ、祐一君。ボクもう毎朝大変で…」

 「あう〜…」

 あゆと真琴はうんうんとうなずいて疲れた表情を見せる。

 「どうやら相当らしいな…」

 「おそらくギネス級だな。今度応募してみるか」

 「う〜…祐一が酷い事言ってる〜」

 二人は慌てて振り返った。

 見るとそこにはちゃんと基地の正装を着た名雪が立っていた。

 「私、そんなにねぼすけじゃないよ〜」

 「嘘だな」

 「嘘だね」

 「嘘だよ」

 祐一、真琴、あゆの三人が一斉に言った。

 「う〜う〜、ちょっと朝が弱いだけで、ギネスになんか載らないよ〜」

 「お前のを基準にしたら世の中の全員が早起きになる」

 そんな祐一の言葉に納得がいかないらしく

 う〜う〜いい続ける名雪。







 ビービービー!!







 「警報!? 敵襲か!」

 祐一がいち早くロビーを飛び出す。

 その場にいた隊員は皆、後を追うようにドアから飛び出していった。

 信哉はすでに見知った廊下を走り、作戦会議室のドアをくぐった。

 円形で縦長のテーブルを囲むように椅子がそなえてある会議室。

 信哉は空いている席を見つけて座った。

 隣に真理奈が着席し、その他の面々も順次着席していった。

 モニターの前には秋子をはじめ、上層メンバーがすでに準備を始めている。

 「全員そろいましたね。では始めましょうか」

 モニターには港町が映っている。

 その右上には地図の画面が割り込みで表示されている。

 港町を上から見たようなマップに複数の光点が近づいている。

 「どうやらバフラム・リベンジャーが動き出したようです。

  彼らの狙いは進路からして…」

 「霧島研究所…ですね」

 秋子の言葉をさえぎるように往人が言った。

 秋子は黙ってうなずいた。

 「発見が早かったのですぐに行動に移れます。

  皆さん、すぐにそれぞれの母艦に乗り込んでください!」

 かくしてエクシードブレイブス初の出撃は始まった。








 ――カノン・バンガード ブリッジ

 「水瀬艦長、このままだと奴らは我々よりも早く

  町に到達してしまいます」

 「困りましたね…」

 秋子はオペレーターの報告にモニターを睨みつけている。

 確かにこの速度では頭ひとつ分くらい彼らのほうが先に到達するだろう。

 何か手はないか…そんなことを考えていたときだった。
 
 ノア・シップから通信が入る。

 「はい、こちらカノン・バンガード」

 「水瀬艦長、状況は確認しました。それでこちらから

  彼らの足止めをするための手を用意しました」

 通信は月詠からだった。

 「もしかして…彼…ですか?」

 「ええ、今回も不利な点はありませんし、問題ないと思います」

 「わかりました、3分敵をひきつけるよう指示してください。

  無理ならすぐに離脱するようにとも」

 「了解しました」

 返事と共に通信は切れた。






 ――ノア・シップ ブリッジ

 「というわけで鷹嘴。今回のミッションは3分よ。

  あまり長くないけど…油断してはなりませんよ」

 月詠の指示に鷹嘴と呼ばれた男がうなずく。

 「ああ、了解した。この一文字鷹嘴、責任を持って
 
  その3分稼いでみせる」

 一文字鷹嘴。

 かつては公道でカリスマ的存在とまで言われ、御剣家の運転手役をしていたが

 主である冥夜がこの艦に乗ったときに、

 「自分ならではの戦い方がある」

 といって乗り込んだリ・ガズィのパイロット。

 そう、彼には「送迎最速理論」という独自の理論に基づいた運転技術がある。

 つまり彼の戦い方というのは…。








 ――港町南の海上

 無人機のOF、ラプターは指令どおりにまっすぐ町を目指していた。

 彼らに意思はない。

 与えられた命令を機体が動く限り遂行する駒だ。

 とはいえ、敵対行動を行うものがいればそれを撃墜することを

 最優先とする。

 それがたった一機のMSであろうとも。

 彼らのうちの一機が何かを察知し部隊の停止を指令する電波を流した。

 下手な部隊よりよっぽどよく取れた統率の元、ラプター部隊その場に停止し

 接近する敵機を確認する。

 BWS搭載のMS。

 リ・ガズィが彼らの目の前に存在してた。

 そう、この機体には鷹嘴が搭乗している。

 鷹嘴は早速トリガーを引いてビームキャノンをラプターに直撃させる。

 ズドオン!!
 
 的確に頭上を撃ち抜きラプターは海上へと落ちていく。

 ラプターの部隊の空気が一変する。

 どうやらリ・ガズィを敵と認識したらしい。

 フォーメーションを展開しリ・ガズィを包囲するように動き始める。

 だがそのようなあらかじめ設定されたような動きは鷹嘴の前では児戯に等しい。

 「道がいつも同じように答えてくれるとは限らない。

  天候、路面、気温…あらゆる要素が俺達の裏をかく。

  そしてそれは…戦いも同じだ」

 鷹嘴はレバーを水平に倒し、ドライブを急発進させ直進する。

 ラプターの目の前に向かって。

 ラプターはそれに対し撃墜行動に入る。

 両手の一体型のビームサーベルで叩き落そうとする。

 ところが鷹嘴がレバーを右に倒し、すぐさま左に戻す。

 波を描くようにリ・ガズィは動きラプターの横を平然とすり抜けた。

 それだけではなくそのまま宙返りをしラプターの頭上を通り越した。

 非常識な、戦闘にはまるで向かないほどのスピードでラプターの囲みを縦横無尽に

 飛び回る。

 絶えうる限界ギリギリの設計でスピードのみを強化した機体。

 それが鷹嘴のリ・ガズィである。

 ラプターたちはそれを直線的に追うことにAIを支配されたようだ。

 徐々に動きが緩慢になっていく。
 
 無人機は人間のように突発的な自体に臨機応変に対応できない。

 鷹嘴は己の腕でコンピュータの思考パターンを破壊したのである。

 とはいえ、武装はビームキャノンしか搭載していない上、

 猛スピードの状態で撃つ事は想定されてない。

 彼は鍛え上げたその腕で、ラプターたちをとりこにしたのである。

 やがて彼の視界に二つの戦艦が目に入る。

 「どうやら俺の出番は終わったようだな」

 レバーをあざやかに回転させるとラプターたちの間を縫うように

 潜り抜け、一直線に戦艦へと向かう。

 「スピードってのもある意味凶器だからな…」









 「はあ…あんな戦い方もあるんだな」

 舞人はコックピット内からすでに肉眼で確認できた鷹嘴の動きに見とれていた。

 「並みの腕じゃあんな真似はできないね…」

 希望もまた呆然としていた。

 「ちょっと二人とも! そろそろ行くよ!

  空戦可能な機体のみ出撃、陸戦機は甲板から援護射撃。

  わかってるね?」

 つばさの檄が飛ぶ。

 誰も異論を挟まない。
 
 「それでは…エクシードブレイブス出撃!!」

 秋子の声を合図に一斉に機体が飛び立った。

 主にOF、特機、MA、PTなどが中心となっている。

 残りのメンバーは戦艦で待機。

 リ・ガズィはそのメンバー達とすれ違いざまに戦艦に向かった。

 「後は君たちの仕事だ…」

 一仕事終えた青年は次の者達へのバトンタッチとばかりに

 ブーストをきかせて戦艦へと戻っていった。

                                 続く
SSのTOPに戻る