「落ちろ! 落ちろぉぉぉ!!」 まるで何かに取り付かれたかのように襲い掛かるテンペスト。 全体がサーベル化した腕は一本だけでも止めるのに苦労する。 戦艦で待機している陸戦のメンバーはこの状況を歯がゆく見守っていた。 「あれじゃあ…スナイプでも本体を狙えません…」 壬姫の機体、閃光は先ほどからスナイパーライフルで 腕の隙間、相手の攻撃の硬直、様々な隙をうかがっていたが 相手の攻撃範囲、手段が多すぎて手を出せず意気消沈して ライフルを下げた。 その顔には悲壮が浮かんでいた。 「くそっ…吹雪がもう少し空中戦に長けてりゃ…」 モニターを見ながら武は悔しそうにつぶやく。 吹雪にも脚部に飛行移動用のブースターが積まれているが 長期的に空中戦を行うためのものではない。 そんなことをすればすぐにエネルギーが底を突くだろう。 「だったら僕が行こうか?」 その台詞が合図だった。 尊人の戦術機、疾風は背中のパーツをパージした。 そこには四枚のウイングが展開されている。 「な!? 尊人それ!」 「この戦術機は一応、空戦がメインなんだよ」 ズドオオオオ!! 重厚な戦術機が華麗に空へと向かう。 荒れ狂う暴風雨を止めるため、その新しい機体は惜しげもなく 銃弾の雨の中へその身を躍らせた。 (そろそろ時間だしね…) 尊人の表情はいつもどおりだった。いつもどおりのはずだった。 エクシードブレイブス 第14話 裏切りと絶望のシンフォニー ヒョウ! まさしく風を切ってその場に躍り出た疾風は その名に恥じぬ登場の仕方だった。 「みんな、今まで見たけどこのテンペストの腕は 根元の部分が出力が甘いね」 言うが早いか疾風は再びドライブを起動すると バーニアを利かせてテンペストの上部めがけて特攻する。 狙い済ましたように襲い掛かる三本の腕。 それらを右、左の両方から抜ける小型のブレードで捌く。 しなるように腕は払いのけられ、目当ての一本に対し、 「斬り…さけぇぇぇぇ!!」 ザシャァァァン!! 交差するように切り裂く二刀のブレード。 ドオン! 爆音を立て海に落下していくテンペストの腕。 「何い!?」 明らかに動揺した声でボルケスは叫んだ。 どうやら搭乗者からはこの弱点に気づけないようだ。 「行けるよ!」 その様子を見守っていた希望が叫ぶ。 「艦長! 分析完了しました。テンペストの腕部の根元の エネルギー出力、38%と頂点に比べると間違いなく低いです」 オペレーターの一人が報告する。 「全機に告ぐ! テンペストの腕を4本以下まで削りなさい! その後、OFによる一斉攻撃を行います!!」 秋子は指令を飛ばす。 「了解!!」 その言葉にフラムベルクとセイクリッドが前進する。 「舞人、抜かるなよ!」 「わかってるって!」 先ほどの攻撃でほぼダメになりかかった盾で上手く攻撃を捌きながら舞人は テンペストととの距離を詰める。 一方、フラムベルクは機動力と装甲を生かし腕の間をかいくぐりながら 本体を目指す。 一足速く目当てのポイントに到達したセイクリッド。 「一点集中! 狙っていくぜ!!」 普段使用する片手剣型のブレードを収納し、変わりに馬上で騎士が使うような 円錐型のランスを取り出す。 「貫け! ホーリーランサー!!」 舞人の内在するエネルギー「エーテル」を解して集約する光。 やがてランスは無機質の金属から、神秘的なエネルギーの槍へと変化した。 そしてそれを構え、体ごと突き刺すかのように突進する。 ズドオオオン! 見事に一本の腕を落とした。 そのまま勢いを殺さずにセイクリッドは上昇しそのまま本体をやりすごす。 「くそっ! うっとおしい蝿が!!」 ボルケスは頭に血が上ったように、攻撃に冷静さがない。 単純な軌道しか生まない攻撃を避けることは容易だった。 やがて、無数に思えたテンペストの腕は今は3本しかなかった。 その様はまるで調理前の多足類を思わせる。 「今しかない! 佐祐理さん! 頼みます!」 信哉の合図でOF組の、クラウ・ソラス、ビッグバイパー、アルテミスは 連携を組んで一斉攻撃を始める。 主にビッグバイパーの道を開ける為だ。 アルテミスはエネルギーライフルのニードルランチャーで残りの腕をけん制しつつ 接近、クラウ・ソラスはブレードで腕を切り払う。 ビッグバイパーはツインレーザーを本体に当てつつ高速で接近、 やがて二人から大分距離を離した。それは本体への接近を意味する。 「舞! これでとどめですよーっ!」 「…はちみつくまさん」 止めとばかりにバーストレーザーを叩き込み衝撃で相手のバランスを崩す。 ビッグバイパーはその瞬間、瞬く間に人型に変形する。 スピードを殺さず一瞬で変形を終える彼女達の操縦技術は まさに天下一品といえる。 特に可変型のものは特に扱いに癖があるためである。 「…狙いは中心のコア…」 バーストエネルギーをセイバーに集中する。 高速で接近、舞は破壊するための一点にのみ集中する。 「…やあぁぁぁ!!」 ズゴガアアアアアアアン!! 駆け抜けざまに叩き込む必殺の一撃。 爆音と共に本体のあちこちから爆発が起きる。 コアの破壊による機体の制御不能が起こったためだろう。 「くそ…このガキども…!」 ボルケスは悔しそうにつぶやいた。 自分とてOFの操作はそれほどベテランというわけではない。 だが戦いに関しては、このような経験の浅い子供よりも 数々の場数を踏んできたという自負があった。 そこから生まれる自信を、もろくも粉砕された。 それは彼にとってどれだけの屈辱であっただろうか。 ボルケスはこのままこの場の誰かに恨みをぶつけたかった。 手段は問わない。 何か、自分の味わった屈辱を刻める何かを。 そんな時 「艦長! この空域に急速に接近する機体が…この反応 オシリスです!」 巴が慌てて真那に報告する。 その様子は当然他のメンバーにも伝わっている。 「オシリス…!」 信哉は回りに目を凝らした。 やがてテンペストの頭上に見覚えのあるOFが空を舞っている。 「ボルケス、ご苦労だった。研究所の襲撃はならなかったが かまわない。この場は引きたまえ」 テンペストは大分浮力を失っている。 そろそろ限界が来るだろう。 「イサイル様…しかしおめおめと」 「言ったはずだよ。研究所の襲撃はあくまでついで。 今回の目的はテンペスト・プロトのテストだとね…」 ボルケスは黙っている。 「了解です…」 だが最後には脱出装置を働かせた。 テンペストの頭上から緊急脱出用のポッドが射出される。 「ああ、そうそう。ボルケス、手元のボタンを押してみたまえ」 「は?」 イサイルの言葉どおり、ボルケスは手元にあったボタンを押した。 するとすでに大破しかけていたテンペストがゆっくりと動き出し 残った三本の腕で待機していたビッグバイパーを掴んだ。 「な!?」 「いけない!」 舞と佐祐理は慌てて操作するが完全に捕縛されていて ブーストを作動させても機体は動かなかった。 「どうだい? 近くにいる機体に対して遠隔操作で自爆する おまけを用意しておいたんだが?」 イサイルの表情は見えなかったその顔はさぞかし愉悦を浮かべていただろう。 彼は子供だ。 遊びを楽しむ子供なのだ。 「は…ははは! ありがたき幸せです!」 一瞬、何が起こったのかは理解できなかったが このまま奴らが悔しさに顔をゆがめるのだと理解したとき 彼の中にも喜びが走った。 「ではまた会おう諸君。もっともそこの彼女とは会うこともないかな? ハハハハハハハハハ!!」 怨念にもにた捨て台詞を残してイサイルとボルケスはその空域から去った。 「テンペスト、内部エネルギーの分析完了! 後3分で爆発します!」 「その際の〜衝撃をシミュレートした結果〜 爆発の規模はさほどではありません〜」 「で、でも倉田さんのビッグバイパーの生存率は… 2%…」 ノア・シップのオペレーター三人娘はそこで言葉を切った。 「あきらめるんじゃありません! ノア・シップ急速発進! なんとしてもビッグバイパーを格納するんです!!」 真那は叫んだ。 死なせてはならない必ず! その叫びだけで真那は動いた。 だがそれより早く。 一機のOFが高速でテンペストに近づいていく。 白い純白の機体。 アルテミス。 「真理奈!?」 「佐祐理さん! 今助けます!!」 高速飛行しながらウィスプを全弾射出する。 すでに捕獲のみの思考となっているテンペストならば払い落とされる心配はない。 だが全部の腕を破壊することは出来るだろうか? 真理奈にそのような疑惑が浮かんだがその考えを打ち消す。 (やってみなきゃわからない! 迷ってる時間なんてないよ!) 移動しながらでも攻撃可能な兵器も組み合わせ、ビッグバイパーを 捕縛する腕に集中攻撃を仕掛ける。 「くそ! 今からじゃ手の出しようがない!」 爆発まで後1分を切ったとき、信哉が悲痛な声を上げた。 「真理奈ぁぁぁぁ!!」 ズドオオオオオオ!! クラウ・ソラスがその時、信じられない出力でバーニアを作動した。 「あいつ…。念でクラウ・ソラスの出力を上げたのか!」 祐一は複雑な声を出した。 確かにサイコドライバーは「念」によって様々なものに影響を与える。 機体の操作、人間の思考、そしてかつてはその力によってのみ 操れたという機神…。 だが、現在においてOFを動かしたサイコドライバーは事例がない。 MSなどとは大きく操作系の異なるOFでそのようなことをすれば どのような副作用があるかわかったものではない。 だが、今は共に視線を潜り抜けた親友を見守るしかなかった。 ドオン!! テンペストの自爆かと、祐一は思考を現実に戻す。 いや違う。腕が2本吹っ飛んでいる。 ビッグバイパーを縛る鎖はもうない。 残りの腕は捕縛というよりはへばりついてるだけの感じだった。 あれならば振りほどけるだろう。 「佐祐理!」 「はい! ビッグバイパー飛行形態へシフト! 緊急離脱!!」 ゴウッ!! ビッグバイパーはそのまま直線距離で急速発進し 一気にテンペストの爆破可能範囲から脱出した。 だがすでに残り時間は20秒を切った。 アルテミスはそのままのスピードでテンペスト駆け抜け やりすごすつもりだった。 ところが、目標の離脱を確認したテンペストは近くにいた アルテミスを最後の腕の一本で脚部を絡め取った。 「あっ!?」 ガクンとコックピットに伝わる衝撃で真理奈も瞬時に理解した。 (やっぱり…無理だったのかな…) 残り10秒…バーストレーザーならば焼ききることは可能だったろうが チャージタイムが足りない。 (ごめんね…信哉…みんな…) 真理奈は目を閉じた。 どうしようもない。 彼女にあるのはそれだけだった。 だが 「やらせるかぁぁぁ!!」 9 彼女に飛び込んだのは信哉の叫び。 8 彼のバーストブレードはチャージタイムが短い。 7 エネルギーが収束 6 斬撃が放たれ腕が切り離される。 5 だがここからアルテミスが発進するには時間が足りない。 4 クラウ・ソラスはアルテミスの腕を掴む。 3 信哉は自分の念をバーニアドライブに集める。 2 バーニアに一気にエネルギーが集まる 1 発進!! 0 ドオオオオオオオオオオン!! 白い閃光が当たりに広がる。 爆発の規模は確かに小さい。 これなら海上から衝撃波が届いたとしても突風程度の被害しか 近隣には与えないだろう。 だが、その場にいたものはそれよりも 二人の行方を追っていた。 やがて光が消え影から見えたのは… ぼろぼろになっても決して手を離さない二つの機体だった。 「クラウ・ソラス、アルテミス、両機ダメージは深刻ですが 両者生存です!!」 クルー達はその声に歓声を上げた。 本当によかった、と。 「やれやれ…無茶しやがって…」 「…ごめんなさい」 信哉のつぶやきに力なく謝る真理奈。 「馬鹿、謝んなくていい。お前がああしなかったら きっと倉田さんたちは死んでいた…。 お前は間違ってないよ。ただ無茶したのは間違いないけどな」 「うん…」 だが自分の決断に今ひとつ自信がもてないのか真理奈はまだ元気がない。 「心配するな。お前はこれからもそうやって無茶してろ。 何かあったら俺が行く。約束したからな」 「信哉…うん!」 そこまで言ってようやく笑顔で答えた真理奈。 信哉は今まで気づかなかった彼女の姿に微笑んだ。 (しばらく会わないうちに…立派になったよなあ) だがそんな思いが形になるのはまだ先の話だった。 一方、ノア・シップ甲板では 「やれやれこれで今回のミッションは終わりかな?」 武がそうつぶやいたそのとき、 「皆さん! 高速で接近するMSとPTの反応が2体あります!!」 それは突然現れた。 祐一には予期せぬ再会を 武には突然の裏切りを そこに現れたのは2体のMS。 一機は漆黒の黒いキュベレイ。 もう一機は銀色で統一されたPT。 右手に取り付けられたクワガタのようなはさみが印象的だった。 「久しぶりだな…相沢」 信哉と祐一はその声に驚愕した。 「き…北川?」 モニターには金髪の青年が映る。 どうやら通信を通常回線に切り替えたらしい。 「紛れもなく俺だ。こんな形で再会するとは思ってなかった って顔だな…」 当然だ。 信哉も祐一も彼がR・Gに所属していたなど知る訳もない。 ・ ましてや、彼らにとって北川達の脱走は…。 「今日は用事を済ませに着たんでな…一戦やらかす気はない」 その言葉に動いたのは疾風だった。 「な、尊人! 危ないぞ!!」 武の制止も尊人は聞かなかった。 彼は知っていたからだ。危険などないことを。 何故なら 「よう、お疲れさん尊人」 「全くだよ。まさかこんなに長い時間潜入するとは思わなかったよ」 尊人は…R・G側の人間と親しかった。 続く
祐一 「鎧衣が敵だったってか!?」 局長 「うん、なんと言うか裏切っても違和感なさそうだから」 珠瀬 「な、何か酷い言い様です」 局長 「原作でも180度違う展開だったしね彼」 武 「180度の意味が違うだろう…」 祐一 「ところで北川のPTって…」 局長 「まあそれは次回ということで」 珠瀬 「ばればれだと思うんですけど〜… SSのTOPに戻る