「み、尊人…?」 誰もが悪夢のような光景の中、言葉を発せない空気の中 ようやく言葉を紡いだのは武だった。 一年前からずっと共に生活してきた彼が。 「何だい? タケル?」 まるでちょっと呼ばれたかのように気さくに返事をする尊人。 が、その顔に浮かぶ笑みは狂気だった。 あまりに普通すぎた。この裏切りなど本の些細なことのように。 「な、…お前…本当に?」 「そうだよ。ボクはR・Gさ。そしてもう一つの呼び名が …CL−03 プロジェクト「ゴッド・フォース」の一人」 誰もが突拍子もない尊人の発言に言葉を返せなかったが 二人ほど反応した者がいた。 「…ゴッドフォース…しかもCL−3…だと…!?」 「お前が消えた3人目か!?」 信哉と祐一だった。 二人の悲痛な叫びに答えたのは北川だ。 「そうだ、一年前のアザゼルからの逃亡事件…あの日 俺達と一緒に脱出した一人だよ、尊人は」 「そうそう、あの研究員を残らず虐殺して逃げ出したときのね」 尊人の言葉には悪びれた様子もない。 エクシードブレイブス 第15話 始まりは全てあの日から 「…貴方が私達に接触した理由は何かしら?」 この問いを発したのは秋子だった。 つとめて冷静のようだが内側からこみ上げてくるプレッシャーに そばにいたあゆは身震いした。 「簡単に言うとね、ニューテクノロジーの保持者の技術を奪うこと。 ちょうど抜け出したときに有名だったのは香月博士と霧島博士だった」 「アンリミテッドは結成されて間もなかったからな…。 身元不明人を放り込むにはうってつけだったわけだ」 だが、そのような不確かな真似を月詠はしない。 彼の身元は存在した。それを証明するものも。 だが…彼の生活の痕跡。そう過去までは手が回らなかった。 そこまで調べればわかったはずなのだ。彼には…空白の… 研究所での生活の時間が。 「3年前のバフラム戦役を皮切りにロボット技術はあちこちで興されつつある。 だけどほとんどが100年前の戦いを最後に封印された技術のみ…。 このような戦況で勝つにはどうしたらいいと思う? …簡単だよ。相手より新しい技術を生かせばいいんだ。 既存のものでは追いつけない技術でね」 尊人は普段のままだった。いつも武達の前で語ってみせたときのように 今は自分達の目的を話している。 「つまり…お前にとってこの一年は全てそれを得るためだけだったと?」 武はまっすぐに疾風を見上げ尊人に尋ねる。 「うんそうだよ」 「共に戦ったことも、一緒に馬鹿やったことも…全部嘘だってのか?」 「いやそんなことはないよ。楽しめることは純粋に楽しんだよ。 でないと、いつ来るかわからないチャンスなんて待ってられないし」 「そうか…」 武の中で何かがはじけた。 表現しがたい黒いものが彼の心を覆っていく。 わからない。 わかるわけはない、所詮他人だ。 その腹の中で何を考えていようともわかるはずはない。 だから見抜けなかった自分達が間抜けだといわれても反論しようはない。 「尊人ぉぉぉぉぉぉ!!」 理屈がそうであっても感情がそれを許さない。 武は猛然とブーストを利かせて無謀にも空に浮かぶ 疾風へと向かっていく。 「無茶だ! タケル!!」 冥夜の必死の静止も届かない。 「うおおあああぁぁぁ!!」 今の武に思考はない。 ただがむしゃらに。 ただその剣を疾風に向けて。 「あはは…いくらなんでもそれは無理だね」 ゴウッ! 吹雪の突き出したブレードは虚しく空を切る。 そのまま勢いごと前に突き進む。 途端に武は背後から衝撃を受けた。 「ぐあっ!!」 「単純に腕だけなら互角だけど…機体の差は大きいよ。 今は、ね」 ズガガガガ!! 疾風は縦横無尽に飛び回りその二刀のブレードで 吹雪の背後を、肩を、足を、腕を容赦なく斬りつける。 残像のせいで3体の疾風が斬りつけているようにすら見える。 破片が飛び散り、本体からあちこち爆発がおき吹雪のダメージは あっという間に限界値まで達した。 「うわああぁっ!!」 そして疾風は左手のブレードをしまい、すでにバランスを失った 吹雪の首を掴む。 「残念だったねタケル。これで何勝何敗だったけ?」 「…お前がきてからの戦績は…79勝…80敗だ」 ふふふ、と尊人は笑った。 目には覗き込めば恐れそうなほど深い闇を浮かべ 心の底から恐ろしい笑いを。 「そうか、よかったよ。これで決着がついて。 引き分けのままじゃタケルも気分悪いものねえ」 「…このまま済ませると思ってんのか?」 エネルギーはほとんどない。 武はわずかな希望をかけて右手のレバーを引いた。 握られたままのブレードを持った吹雪の右手が疾風に突き出される。 完全なゼロ距離。 さすがの尊人も虚をつかれ反撃は出来ない。 はずだった。 ジャギン!! そのブレードを断ち切ったのは北川の機体だった。 「さすがだな、クロムビルガー。戦術機の合金だって 簡単に断ち切るとは」 そうクロムビルガーの右手のハサミことクラッシャー。 それが一瞬にしてブレードを切ったのである。 「それじゃ…さようなら武」 ズドドオオオオン!! 掴んでいた腕から爆撃を放ち、吹雪は直撃を喰らって海に向かって落ちていく。 「いけない!!」 だが、距離的に誰も間に合わない。 ましてや戦闘後でエネルギーも十分ではない。 「タケルっ!!」 冥夜が慌てて飛び出そうとするが、 ダダダダダダン!! その出鼻をビット…ファンネルから放たれた無数のビームによって くじかれた。 放ったのは漆黒の黒のキュベレイのようだ。 「貴様っ!」 冥夜はキュベレイをにらみつけた。 パイロットのモニターは表示されない。 どうやら通信を切っているらしい。 そして、間に合わなかった武の吹雪は海に… 落ちてはいなかった。 「よっと…タケルちゃん重いよ〜」 白とピンクを貴重にした戦術機が二枚のウイングで武の吹雪を支えている。 「…純夏?」 「うん、遅れてごめんね〜」 海上すれすれで吹雪を拾い上げたのは鑑 純夏の戦術機だった。 そのままエンジンの出力をあげノア・シップの甲板まで たどり着く。 その様子を面白そうに眺めている尊人たち。 「残念…純夏ちゃんが来ちゃうとはね…さすがは武だよ。 ただじゃ死なないんだね」 「仕方ねえ。目的も果たしたしここは引き上げるか」 北川達が空域から離脱しようとする。 「待て北川! 久瀬は…久瀬も一緒なのか!?」 祐一の叫びに北川機が一瞬動きを止めた。 「いずれわかるさ。俺が答えずともな。 変わりにいいことを教えてやるよ」 クロムビルガーは徐々に上昇していく。 「ゴッドフォース……最後の一人は確かに見つかっていない。 だがお前らなら知っているはずだ…。感じているはずだ。 この地球のどこかに息づいている最後の「神」の存在をな!!」 キュベレイ、疾風がそれを追う。 「…久瀬は…久瀬は何を始める気だ。本気であんな世迷いごとを信じているんじゃ ないだろうな…」 信哉の問いは空へ吸い込まれる。 北川は答えない。 いや、無言こそが答えか。 そのまま何も話さず彼らは星の浮かぶ空へと消えた。 「…」 そして彼らもまた何も話せずにいた。 「…全機帰還してください。とにかく話し合う必要があります」 秋子の命令で一機、また一機と母艦に戻る。 戦乱の火蓋はすでに落とされたはずだった。 だが、衝撃的な動きに打ちのめされたものも少なくはなかった。 本当の戦いはこれから始まる。 続く
信哉 「うわあ伏線張りまくり」 真理奈 「収集つくんですか?」 局長 「だ、大丈夫だ。多分」 名雪 「それはともかく北川君の機体って」 局長 「αUの主人公機 ビルドビルガーがモチーフだ」 あゆ 「うわあ…よりにもよってそんなリッチな機体なの?」 真琴 「あうーっ北川の癖にー」 局長 「何かエクシードブレイブス側には何か乗せても似合うキャラがいないというか」 秋子 「でも、あの機体は二機一対ではありませんでしたか?」 局長 「大丈夫そこら辺は考えている。心配しなくても北×香ではないから」 SSのTOPに戻る