――霧島研究所
 
 今日も今日とて晴天の霧島研究所。

 不気味なほど静けさを保っている敵勢力に対し、

 自主訓練という形で、もしくは自由時間という形で時を過ごすエクシードブレイブス。

 そんなある日、二機のロボットが霧島研究所に近づいている。

  一機は深山の機体ディープスノーと同型の機体ヒュッケバイン。

 機体色は黒、ディープスノーよりも装甲が厚く、背部に別パーツが換装されている。

 もう一機はジムだ。ただし頭部だけはといったほうが正しい。

 それ以外の部分は、装甲はほとんど原型をとどめておらずスーパー系並みの重厚さがあり

 両腕にはやや太目のビームサーベルが装備されている。

 両脇にはプラグのようなものも設置されているが用途はあまり知りたくないところだ。

 そして大きさ。原型であるジムを一回り大きくしたくらいの大きさだ。

 それでいてヒュッケバインと同等のスピードを出しているのだから恐れ入る。

 「住井、そろそろ着陸に入るわよ」

 「おおっとそうだな。うっかり見逃すところだった」

 ジムの方のパイロットは女性だ。

 青髪のツインテールが特徴的な活発そうな少女だった。

 住井と呼ばれた少年は少し目立たない感じの少年だ。

 いや、目立たないのが特徴というべきか。

 「七瀬、降りるぞ」

 「だからあたしが言ってんのに…はいはい」

 七瀬と呼ばれた少女も出力を落とし滑走路に向けて着陸態勢に入る。

 ヒュッケバインも同様にジムの後を追う。

 この二人が、部隊に一体どんな影響を及ぼすのか…

 今はまだわからない。








 エクシードブレイブス 第19話

 LOST INNOCENT











 ――カノン・バンガード 艦長室

 「住井護、七瀬留美の両名他勢力の調査および倉田研究所からの

  新兵器の輸送の任完了しました」

 住井と留美は秋子に対し敬礼をし報告をする。

 住井護、七瀬留美は優秀なパイロットだが、本人たちの能力は

 MSやPTの扱いだけにとどまらず、戦闘能力も高い。

 そのため単独による諜報活動を行うことも多い。

 「ご苦労様です。では早速ですが報告をお願いします。

  お茶を用意させましたから」

 部下の報告を聞くのにお茶を用意するような上官もそうはいないだろうが

 そこは秋子の性格なのか、住井も留美も反論はしなかった。

 「まず現在もっとも活発に動いているR・Gですが、その準備期間は

  1年に満たないことがわかりました」

 1年に満たない…つまりそれだけの短い期間で連邦の全戦力を

 上回るだけの戦力を整えたという事実は重い。
 
 短期間にそれだけ武力、人の移動があればただでさえ

 武力にうるさい連邦が気づかないはずはなかったからだ。

 「その背後にはアザゼルという研究所が絡んでいます。表向きの顔は

  一応総合企業「グレゴリ」ということになっていますが、

  実体はニュータイプ、サイコドライバー、その他特殊な才能を持つ

  子供を兵器として研究しているようです」

 「では、R・Gとアザゼルのつながりに関しては?」

 秋子の問いに住井は別の書類を取り出す。

 「まずR・Gの総帥が久瀬 実を名乗っています。そして幹部クラスに

  北川 潤。この二人は俺達と年はそう変わりませんが

  アザゼルに対して何らかの圧力をかけられる要素を握っているようです」

 (…確か北川とは祐一さんが言っていた…では…R・Gとアザゼルは

  決して対等な関係ではない…?)

 秋子は視線をそらししばし思考にふけった。

 そんな様子に次を言っていいものか悩んでいる住井。

 はっとそんな様子に気づいた秋子は

 「すいませんね、続きをお願いします」

 「あ、はい。なお、R・Gの本拠地は現在は宇宙のサイド4の周辺…

  すでに大部分のコロニーは彼らの行動を支援しています。

  スペースノイドにとっては何らかの影響がすでに出始めています。

  元々スペースノイドは地球連邦に対してあまりいい感情は抱いてませんからね…」

 「100年近くが過ぎましたが小競り合いは続いてきましたからね」

 それだけの時間、同じ人間同士が信じあえなかったというのは

 正直、なんと悲しいことだろうか。

 連邦の人間が利己的過ぎるのか。それとも宇宙に飛び出した人が進みすぎているのか。

 何故人は同じ過ちを繰り返すのだろう…、秋子はそう思わずにいられなかった。

 「すでにR・Gの支部は地球上のあちこちに存在しているようです。

  俺達が潜入した基地は小規模でしたが、

  少なくともつい最近出来たという感じではありませんでした」

 「そうそう、建物も内部の真新しさに比べて外壁は結構汚れてたしね」
 
 そのとき何かいやなことでもあったのだろうか留美は少し顔をしかめた。

 「何にせよR・Gの動きには注意すべきです。その気になれば

  地球を一気に掌握できるだけの戦力は集められそうですから」

 それだけ言いと住井はようやく冷めかかったお茶に口をつけた。

 (!? しまったこの茶は…)

 住井の口になんともいえぬまたは表現できない味にのた打ち回りそうになった。

 だが仮にも製作者の前でそのような真似が出来ようはずもない。

 まさしく生き地獄に苦しむ住井だったが

 「そ、それでは…俺は失礼します」

 「はい、ご苦労様」

 よろよろと部屋を出る住井を見て留美の中の何かが危険を告げていた。

 「そ、それじゃあたしもネロの様子を見てきます!」

 ばたばたと留美も部屋を飛び出した。

 「あらあら」

 秋子は例によって頬を手に当てるポーズで二人を見守っていた。

 その心の中は誰にも計り知れない。
 
 そしてお茶の中に入っていたものも誰にもわからない。








 ――カノン・バンガード ロビー

 「おっ住井帰ってきてたのか…って何で死にかけてる? お前?」

 「…おお、折原。いや…ちょっとミステリアスゾーンに自ら足を踏み入れてな…」

 テーブルに突っ伏してうめく住井。

 「ミステリアスゾーン…?」

 いぶかしげに首をひねる浩平に

 「水瀬艦長の手製の…」

 「わかった! それ以上言うな! 頼むから言うな!!」

 どうやら秋子手製のアレは部隊内では周知の事実らしい。

 一体どのようないきさつがあったかは想像だにつかないが

 彼らの不遇を哀れまざるをえない。

 「あの表現できない味が俺の五感を」

 「人の話を聞けよ! いいから黙れ!」

 「貴様にも俺の苦しみを…ぐわっ!!」

 悲鳴を上げて住井は完全に堕ちた。

 浩平が住井の首に手刀を入れたのだ。

 弱っていた住井はさすがに耐え切れなかったのだろう。

 「ああ折原ここにいたの…って何息切らしてんのアンタ?」

 そこへ留美が入ってくる。

 息を切らした浩平の前にいるのは、完全に沈黙した住井。

 「気にするな正当防衛だ」

 浩平は額の汗をぬぐって留美に向き直る。

 「で、何か用事か?」

 「アンタ危険な任務から戻ってきた乙女に何か言うことないわけ?」

 「そもそも乙女は危険な任務になぞつかん」

 バキィッ!!

 間髪いれずに留美の右ストレートが炸裂した。

 浩平はきりもみ状に回転し床にその身を打ちつけた。

 「一言で否定すんじゃないわよ!! あたしの苦労を!!」

 「く…ますます腕が上がったな…さらに乙女の道は遠のいたんじゃないか?」

 「まだ言うか、完全に堕ちる? そこの住井のように」

 バキボキと手を鳴らす留美。

 その姿のどこに乙女らしさがある!? と浩平は思ったが何とか押し黙る。
 
 誰だって命は惜しい。ましてや背後に炎を背負い

 飢えた獣のごとき目をして闘志を燃やしている留美の前で

 これ以上うかつな発言は本当に命を散らしてしまいかねない。

 「ふん…ほらアンタ宛に預かり物」

 ポンと倒れこんだ浩平の腹に何かを投げる留美。

 あまり飾り気はないが丁寧にたたまれた封筒。

 「なんだよこれ…」

 「茜からアンタに。よかったわね愛されてて」

 その言葉を聞くや否やガバッと起き上がり封筒を取る。

 確かに差出人は浩平の恋人、里村茜となっている。

 覚えのある字に確信を持って、浩平は静かに封を切る。

 手紙の内容は研究所で新型のガンダムのパイロットについたことや

 日々の生活のこと、浩平の幼馴染長森瑞佳とのことや

 茜の親友である柚木詩子とのたわいないやりとりが事細かく書かれていた。

 そして浩平に向けられた思いと心配が4枚の便箋につづられている。

 「ったくそんなに心配なら離れなきゃいいのにね…」

 「茜が望んだことだからな…。それにただそばにいるだけが

  お互いのためになるとは思わない。たった4枚の手紙でも

  俺にはあいつがそばにいるときと同じくらいの安らぎを感じるよ」

 「のろけるのは本人の前でだけにしときなさい。やってらんないから」

 そういって二人はしばしお互いでの近況を話し合って談笑した。

 向こうのほうで堕ちている住井のことは完全に忘れて。






 ――極東支部 支部長室

 「なんだと!? そんな馬鹿な提案があるか!」

 珠瀬支部長は秘書の報告に声を荒げて怒鳴った。

 「しかし、どうやら決定事項のようなのです。

  火星からの救助要請に対し、鎮圧後の地球による自治統括という取引の話は…」
 
 火星は、先のバフラム戦役の際の立役者達によって地球からは完全に独立している。

 地球が派遣した人物が統括するカウンティ(州)は完全に廃止され、

 火星開拓者達の星としてすでに独立国家として大きく成長していた。

 ところが、イレイザーとバフラム・リベンジャーの活発な動きによって

 火星側の戦力だけではよいよ戦局は危なくなっていた。

 そこで救援要請を地球に出したが、返って来た返答は上のような話だったという。

 確かに地球も火星に割く戦力がないといえば、対等な条件のように思えるが

 それ以上に連邦が、自らの目の届く場所を管理するのは自分達だという

 主張のほうが強いとしか思えない。

 彼らが必死に戦い勝ち得たものを、彼らは取引で再び奪おうというのである。

 珠瀬長官は頭を悩めた。

 エクシードブレイブスを派遣する方法はある。だが彼らは曲がりなりにも

 連邦に所属はしている。もっとも権力はほとんどないわけだが。

 だが、それが連邦の上層部に知れればこれ幸いと例の要求を呑むよう火星に通達するだろう。

 自分達の信念の元戦う少年達を権力争いの道具にするわけにはいかない。

 ましてや連邦上層部の都合のいい手駒だったなどとあの純粋な少年達に思わせたくはない。

 悩みに悩んだ挙句珠瀬長官は通信回線を開いた。

 「水瀬艦長、少々お話があります」

 今、彼が下した決断とは…。

 エクシードブレイブスは少しずつ大きなうねりに飲み込まれようとしていた。

                                    続く


あゆ    「うぐぅ…最近出番のないあゆです」 真琴    「同じく真琴です…って何よこの台本!」 あゆ    「だって祐一君がこれがお前達のだって渡したよ…」 真琴    「あう〜こんなのヒロインの台詞じゃないわよ!!」 あゆ    「しかも後のページは白紙だし…」 真琴    「祐一ぃ…許さないからね」 SSのTOPに戻る