――??? コンコン あまり遠慮のないノックの音に青年は起き上がりドアを開けた。 「武か…どうした?」 武と呼ばれた少年は 「月詠さんが出撃準備をしてくれって」 簡潔に用件だけを伝えた。 「また『イレイザー』どもが来たのか?」 青年の問いに武は静かに首を振る。 「未確認のPTとOFだってさ。敵意のある奴だと困るだろってことじゃないか?」 「なるほどな。わかったすぐに行く」 青年はそう言うとドアを閉める。 「急げよ、往人」 「ああ」 ぶっきらぼうな返事だったが往人は手早く支度を始めた。 言葉よりも行動で示すのが信条だからだ。 単に話すのが面倒くさいという説もあるが。 エクシードブレイブス 第2話 騒ぎはじめる火星 「すまない月詠。少し遅れたか?」 往人、武、そしてオペレーターである少女達の 神代 巽(かみよたつみ)巴 雪乃(ともえゆきの)戎 美凪(えびすみなぎ)の三名。 そして実質的艦長である月詠真那のいるブリッジに長めのポニーテールの少女が入ってきた。 「いいえ、冥夜様。時間通りでございます」 冥夜と呼ばれた少女に深く頭を下げる月詠。 通常の上下関係ならあきらかに不自然な光景だが、この自衛団艦隊『ノア・シップ』では これが普通なのである。 この自衛団を結成したのが御剣財閥であり、冥夜がその跡取り娘だからだった。 だが、彼女は一兵士として戦うことを望んだため、彼女の侍従長であった月詠が艦長を務めているのである。 「ではそろったところで状況を説明します」 巽が咳払いをしてモニターにマップを映す。 「現在地点がここです。そしてここより南東の方角ですでに小競り合いが発生しています」 雪乃が続けて報告する。 「未確認機の方は未だ確認は取れていませんが、相手機のほうは MSのバーザムであることが確認されました」 「バーザム…ってあのティターンズのか?」 武が思わず口に出したがそこに往人が口を挟んだ。 「確かにMSの中ではティターンズがメインに使っていた機体だな。 しかしジオンのも含めてそっちのMSのデータは機密事項じゃなかったか?」 月詠がこくりとうなずいた。 モニター上の点の数は徐々に減っている。 減っているのはバーザムの数である。 「その通りです。ですから機体で敵勢力を予想するわけには行きません。 そこで今回のミッションです。未確認機に接触し、身元を確認の上保護すること。 もし敵対の意思があるならば…」 その先は口に出さなかったが皆はその場の雰囲気で答えを知った。 現在、日本の戦力は複数の勢力に対し向けていなければならない事態である。 これ以上敵が増えるようならその前に手を打つ。 それが彼らの出した暗黙の了解であった。 「それでは各自ミッションに入ってください!」 月詠の号令に 「「「了解!」」」 一同は口をそろえて返事をした。 ――ノア・シップ 格納庫 「やれやれ、ろくに休む暇もくれないな」 武はぶつくさといいながらコックピットに座り込んだ。 ハッチが閉じるとすぐに通信が入ったので繋いだ。 「仕方あるまい。この間の戦闘でほとんどのメンバーの戦術機は修理中なのだ。 動ける我々だけでなんとかせねば」 通信の主は冥夜だった。 武は苦笑いをしてこう返した。 「わかってるよ。ちょっとぼやいただけだからさ」 冥夜は通信の向こうで微笑んだ。 わかっている、と言いたげな表情だった。 「二人とも準備は済んだか?」 往人の声で二人は顔を引き締める。 戦いに赴くパイロットの顔に。 「ああ」 「いつでもいいぞ」 「それじゃ…行くぜ!」 武の戦術機「吹雪」 冥夜の戦術機「建御雷」 そして往人のスーパーロボット「フロンティア 神奈式」がそれぞれハッチから 青空と海の支配する空間へと飛び出した…。 ――日本近海上 その頃、すでに追っ手を撃退していた祐一達はこちらに接近してくる 機体の存在を確認していた。 「お、今度はどうやら日本からの迎えだぜ」 信哉はモニターの状況を見てそうつぶやいた。 祐一はため息をついて、 「いきなりドカン! はないだろうなあ…」 「やめろよ縁起でもない」 と軽口で返した信哉だったが少し考えが甘かったかもしれない。 ドカン!! 突如二人の耳に入ったのは爆撃音だった。 しばし無言の二人だったが 「…だから言ったじゃねえか…」 祐一は不運を恨むようにそういった。 「言ってる場合か! 状況を確認しないと!」 気づくと上空から数機の接近が確認できた。 信哉はすぐに相手のパターンの照合を始める。 「…無人OF…ラプター!?」 信哉の反応に祐一も驚きを隠せない。 「馬鹿な! バフラムが全滅したのって1年前だろ!? 何でバフラムの戦闘機がここに!?」 その疑問に答えてくれるものはいない。 だが二人の出した答えは一緒だった。 二人は自分達の機体を相手のほうに向き直らせた。 「とにかく無人機は無差別攻撃を行う。祐一! 日本に一機たりとも通すな!」 「了解! たかがAIで俺達を落とせると思うなよ!!」 二人の声に呼応するかのようにフラムベルクとクラウ・ソラスは上昇を始めた。 待つより迎え撃つほうが早いと判断したためだ。 そしてそんな二機の様子を伺っていた冥夜たちは次の行動を考えていた。 ここで手をこまねいていては被害が出てしまうかもしれない。 冥夜は悩んだがあの機体に対して通信を行うことにした。 祐一は突如外部通信を受信したことに気づいた。 「外部通信!? さっきの奴らか?」 祐一は戦闘に集中しつつ通信をオープンにした。 「そちらの機体のパイロットの者は応答願う。 私は自衛団ノア・シップの御剣冥夜と申す者だ」 飛び込んできたのは自分と年の変わらない少女の姿だった。 だが妙にかしこまった口調がミスマッチで祐一はなんとも調子を狂わされた。 「ああ聞こえている。ご丁寧にどうも。俺は相沢祐一だ」 この状況下で名乗り返す祐一もどうかと思うが。 「事情は知らぬがそちらに我らに対する敵対の意思がなければ援護を申し出たい」 「日本に喧嘩を売る気は無い。手伝ってくれるんなら急いでくれ!」 祐一はそれだけ答えた。 「承知した」 そして通信は切れる。 「武、往人、どうやらあの者たちには敵意は無いようだ」 武は少し唖然として、 「いや…あれだけのやりとりでわかるもんなのか?」 「あの者の言葉…嘘偽りは無いと思う」 そう言うと冥夜は黙ってしまった。 だが往人はいち早くマシンを発進させた。 スーパーロボットの割に運動性に優れ、装甲面に不安の残る武士のような姿をし 背中に綺麗な純白の翼を持つ機体。 フロンティア 神奈式。 「あいつらが敵じゃないなら急ぐぞ。結構な数のラプターだ。 AIとはいえ、あれだけの数では少々つらいだろう」 そういわれると武も返す言葉がなく無言でマシンを発進する。 「ま、今は冥夜の直感を信じてみるか」 「…すまない武。そなたに感謝を」 冥夜もそういいつつ二人の後を追う。 上空ではすでに戦闘は架橋に入っているようだった。 「ちっ…この!!」 フラムベルクは近寄ってくるラプターを三連マシンガンで迎撃する。 無数の弾丸がラプターに突き刺さりやがて爆音と共に ラプターが落下していく。 しかし、息つく間もなく上下左右から次のラプターが襲ってくるため 絶えず自分の周りを気にしていないとならないこの戦闘は想像以上に 集中力を使う。 一瞬でも気を抜けば袋叩きにされるであろう。 信哉も先ほどから無言だった。 クラウ・ソラスは高機動力を駆使し、ダッシュブレードで攻撃しては距離をとりまた攻撃… という一撃離脱を繰り返しつつ戦っている。 しかし360度が敵というのはあまり好ましい状況では無いらしく 徐々に手数が減りラプター側の動きが活発になっているのが 祐一にもわかった。 (くそ…何か打開策は…) 祐一が考え始めたとき、目の前に巨大な翼が映った。 「射程に入ったな…あきらめろ」 往人はそうつぶやきレバーを操作する。 目の前に立つ敵をただ切り捨てるために。 「斬鉄・十文字!!」 日本刀をそのまま巨大化したような刀でフロンティア神奈式は ラプターを文字通り十文字に切り裂いた。 キンと刀が鞘に収められるとラプターは音を立てて爆発した。 「お前らを援護する。とっとと片付けるぞ」 往人はそう言うとまた別のラプターに向かっていった。 祐一はあっけに取られていたが 「と、とにかく援軍が来たってことか?」 信哉は少し考えたが、 「ま、後ろからばっさりってことはないだろう。 今はとりあえず協力し合うか」 そういって信哉も体勢を立て直し飛び立った。 「運がいいのか悪いのか…微妙だな」 ぼやきつつも祐一のフラムベルクは再びその羽を広げた。 続く SSのTOPに戻る