――??? 「イサイル様…これを」 イサイルは椅子を回転させて部下が持ってきた報告書を見た。 そこには諜報部が仕入れた連邦軍の動きの詳細が事細かに書かれていた。 「へえ…相変わらず強欲だね連邦は。火星からの要請にこのように答えるとは」 「しかし、どうやら火星側から連邦への要求は断ったようです」 イサイルはぴくりと眉を動かした。 気に障る、と顔全体で表現しているような感じだ。 普段はクールに努めていてもやはり普通の子供らしく感情が動くこともある。 「どういうことだ?」 「連邦への協力は断ったということです。変わりに自衛団を組織する 地球の財閥への依頼を送ったそうです」 「何? その自衛団とはまさか…」 「ええ、そうです。エクシードブレイブスに組み込まれていて 度々、イレイザーと何度か交戦したアンリミテッドです」 「なるほど考えたな。エクシードブレイブスが動かなければ連邦に 顔を立てる必要はないということか…。おい!」 「はいなんでしょう?」 「地球残留軍に伝えろ。アンリミテッドを宇宙に上げるな。 何としても阻止しろ。だが失敗した場合は速やかに部隊をまとめ 火星に帰還するようにと」 「了解しました」 男は敬礼をして部屋を出た。 イサイルは椅子に座ったまま以前交戦した少年の顔を思い出していた。 「信哉に祐一だったな…。さて火星に来るのはどっちだ?」 少年は実に楽しそうに笑った。その顔は年相応の笑顔だった。 内面に満ちるどす黒い感情さえなければの話だったが。 エクシードブレイブス 第26話 急襲! バフラム軍 ――倉田研究所 エアポート ノアシップはすでに発進準備に入り、研究所から次々と物資が 積み込まれていく。 その中には牧島の機体、ガンダムエッジや、 つばさのトーラスカスタム、ひかりのライトフェンサーなど 研究所で調整段階だったPTやMSも含まれている。 トーラスは一弥が直接手を加えた機体で、変形機構をオミットする代わりに 機体性能をやや向上させている。武装面は山彦が担当した。 ライトフェンサーはヒュッケバインの前身でもあるビルトシュバインを ベースに近接用PTとして倉田研究所が作成した試作機である。 近接戦を得意とするひかり用に調整され今回実践投入が決まった代物だ。 どちらも概観には特に変更はなかった。 そしてもう一つ…旧式だが機動性の高いガーリオンに修理・補給機能をつけた ガーリオン・ヘルパーという機体だ。 こちらはカノン・バンガードの格納庫へと運ばれていく。 ガーリオンはアーマードモジュール(AM)と呼ばれる戦闘機をベースに開発された 人型機動兵器だ。 今でこそテスラ・ドライブが普及したためPTも空戦可能だが PT開発当時は、一部のPTしか空戦を行うことは出来なかった。 そのためDC戦争と呼ばれた地球人同士の戦争ではAMには非常に手を焼いたといわれている。 さて話が逸れたが、ガーリオンに搭乗するのは… ――倉田研究所 廊下 「繭? 繭〜?」 ロングヘアの少しおっとりした少女が、人の名前と思われる 名を呼びながら廊下を歩いていた。 少女の名は長森瑞佳。前述のガーリオンのパイロットで浩平の幼馴染でもある。 世話焼きでいらぬトラブルに巻き込まれやすいタイプで、かつからかいやすいタイプでもあるので 昔はよく浩平にからかわれていたようだ。 瑞佳はきょろきょろと廊下を歩いていたが、前のほうからショートカットで スケッチブックを持った少女が歩いてくるのを見て歩を止めた。 「あ、澪ちゃん。ごめんね繭を知らないかな? そろそろ カノン・バンガードに乗らないといけないのにどこにもいないんだよ」 すると澪と呼ばれた少女はスケッチブックになにやら書き出す。 上月澪、言葉を発することの出来ない少女だが前向きで明るく そのようなハンデを感じさせないのは、ころころとよく変わる表情のせいだろう。 川名みさき、深山雪見とは在学中は同じ演劇部の仲間内であった。 『もうポテトと一緒に船に乗ったの』 元気よく広げられた真っ白なページにはそう書かれていた。 「そうなの、もう繭ったら。ありがとう澪ちゃん」 『どういたしましてなの』 二人はきびすを返して搭乗口へと歩き出したが ビービービー!! 「敵襲! 敵襲! 各員戦闘体勢に入れ! 繰り返す…」 研究所内に緊張が走る。 澪と瑞佳は頷き合うと無言で走り出した。 ――研究所周辺 研究所の周辺は開けた平地に立ってはいるものの回りは森林に囲まれていて 近隣には人はいない。 この状況にいち早く対応したのは祐一、石橋、名雪、舞人、希望、留美の五人だった。 彼らは格納庫で搬入チェックを行っていたためすぐ出撃できたのである。 「ブリッジ! 敵の勢力は!?」 祐一の問いかけに応答したのはあゆだ。 「ラプターが数機! えっと後はマミーヘッド? ラプターシリーズの防御重視型だって!!」 「バフラムが仕掛けてきたか。おそらくノアシップの火星行きの阻止だろう。 よし! 敵機を母艦に近づけるな!! 相沢! 桜井! 俺に続け!」 言うが早いかグルンガストは急速発進し前方のマミーヘッドに向かっていく。 マミーヘッドはラプターをすっぽり覆った円形のシールドに肩部に 二門のハルバードを取り付けた防御支援型だ。 シールドを破壊しても分離しラプターとなって襲い掛かるタイプも存在し 距離を取られるとハルバードによる中距離レーザー攻撃を行う 少々厄介な相手だ。そして何より相手は空戦機だ。 グルンガストは飛行時間が短い。 自ら空戦を挑むのは自殺行為ではなかろうか? 疑問を抱きながら祐一と舞人は石橋の後に続いた。 「いかなる相手であろうと眼前の敵をただ切り裂くのみ!!」 グルンガストはスピードを維持したまま、 「アイソリッドレーザー!!」 眼部より連なった細いレーザーを放つ。 だがマミーヘッドはその単純なレーザーを水平移動で避ける。 「甘い!」 そこへグルンガストが地を蹴り空へと舞う。 マミーヘッドの正面に。 避けた先に敵がいたため無人機の行動は一瞬固まる。 だがその一瞬が石橋の前では命取りになる。 「軍神剣! 八相斬り!!」 ズギャアアア! 右の太刀を両手で構えた巨大な軍神剣で放つ。 その長さはラプター程度真っ二つに出来るだろう、そして厚い刀身は 戦艦や戦闘機をも切り裂くことすら出来るのではと思わせた。 「チェストオオオォォォ!!」 そして息をつく間もなく返す左の太刀が見事な八相をマミーヘッドに刻んだ。 ズドガオオオアン!! 分離する暇なくマミーヘッドは散った。 そして地響きと共にグルンガストが着地する。 機体の脚部にかなり負担をかけそうな行為だったが 生憎グルンガスト・クロガネはこの程度で痛む機体ではなかった。 「我が剣の露と消えよ!!」 ブオン! グルンガストは剣を再び片手に構えなおした。 無人機がその程度でひるむかは疑問だったが 追い討ちをかける様にフラムベルクとセイクリッドは敵陣の真正面まで 距離を詰めた。 こちらは両方とも空戦機。ましてや祐一は何度も相手をしたラプターだ。 恐れるに足らず。 「舞人! 外すなよ!!」 「言ってろ、この俺がそんなへまするか!」 先手を打ったのは祐一だ。左手の3連マシンガンでラプターをけん制しつつ 距離をつめ、フェイズブレードの間合いに持ち込む。 だがラプターは元々近接機。こちらもおいそれとは喰らわず 素早い動きで右へ左へと回り込みながら両手のサーベルを繰り出してくる。 だが、祐一はそれらをG・テリトリーで難なく防ぐ。 そしてバリアにはじかれ動きの固まったラプターに 「今だ! 喰らえぇ!」 ズギャア! フェイズブレードを正面から突き刺した。 コアを貫かれしばらくは電気を放出しながら串刺しになったかえるのように ぴくぴくと動いていたがやがて ズドオオン!! 爆音と共にラプターは爆発した。 「相変わらず早いな…あいつは」 そうつぶやく舞人とて負けてはいない。 中距離からラプターが詰め寄ってくるのを見計らい 「セイクリッドの武器は剣だけじゃない…行け! ホーリーランサー!!」 いつの間にか左手に構えていた騎乗用の円錐型ランスを 躊躇なくラプターに突き刺すセイクリッド。 バゴオオオン!! 勢いよく繰り出されたランスはラプターをそのまま粉々に破壊する。 「ヒュウ…ソルジャー舞人と呼んでくれ。今日から紳士は廃業だ」 「え、舞人君そうなの?」 「…お前は本当に場を読まない奴だな。突っ込みの一つも入れてこそ 彼女だろうが」 「そうだね。舞人君ならどっちもありえないもんね」 「…希望さん、少しきつすぎやしませんか?」 戦場で夫婦漫才をやるカップルも珍しい。 舞人に緊張感がないようであるという中途半端なのが問題だが。 一方、地上から次々と精密なビームライフルによる射撃で ラプターが打ち抜かれていく。 地上を見ると名雪のガンダムステイメンが狙撃している。 普段はぼうっとしているだけにそこそこ近距離とはいえ これだけの射撃を行うのは祐一達を驚かせた。 「祐一〜桜井君〜ラプターは私にお任せだよ。 二人はマミーヘッドのほうをお願いね」 「了解!」 祐一と舞人は後方に待機しラプターを援護している マミーヘッドに狙いを変えた。 一方、地上で突撃の機会をうかがっている 石橋と七瀬は妙な気配を辺りから感じ取っていた。 「師範…もしや」 「うむ、水瀬艦長聞こえるか? すまないが出来るだけ 残りのメンバーの出撃を急がせてくれ。どうやら敵は…」 バババババ! 森林から素早く何かが飛び出しグルンガスト達の周りを囲む。 「エクシードブレイブスだな! 我らがR・Gの理想達成のため ここでお前たちには消えてもらうぞ!!」 それはR・Gの保有するレイ・ドーガの部隊だった。 数にして10機程度。 指揮官が見当たらないところを見ると偵察部隊のようだ。 功を焦ったのか、偶然自分たちを発見したのか。 どちらにせよ石橋は彼らの無謀という行為を哀れんだ。 「愚かな…敵部隊発見の際には素早く本隊に連絡をいれ 相手に気取られぬよう見張るのが常。その程度の手勢で 我らをどうにかできると思うとは愚の極み!」 「本当ですよね師範。アンタ達! 覚悟は出来てんでしょうね!」 啖呵を切る石橋と留美にレイ・ドーガに乗る一人は 「ジ、ジム程度の機体で何が出来る!?」 「ふん…この機体はね、見た目こそジムだけど そこらのガンダムよりもよっぽど火力とパワーだけならあるわよ! 見た目で判断すると痛い目みるってことを教えてあげるわよ!!」 「覚悟が出来たものから来るがよい。我は石橋剛三! この剣、振るうは我が信念の為に!」 地上と空で火星出発を巡り一つの戦いが勃発した。 続く
後書き 往人 「ようやくほぼ全員と機体が出来上がったな」 聖 「いや乗り換えようの機体もある。まだまだ先だがな」 舞人 「にしてもさただでさえ俺って出番が薄いのに」 つばさ 「宇宙編に行ったらまた出番がなくなるねさくっち(ニヤソ」 希望 「そうだね、八重ちゃん」 舞人 「うわあぁぁぁん! 八重樫なんかレーザーに撃たれて死んでしまえぇぇぇ!!」 SSのTOPに戻る