――火星軍駐留基地周辺 あちこちに激戦の後の残る火星の荒野。 そこに一つの軍事基地は存在した。 独立を認められてから、地球の干渉は無くなったがそれから 一年と経たずに出現した「イレイザー」達を相手にするために結成された 混成軍。 それが火星軍の通称「ディフェンダー」と呼ばれる部隊だった。 ここは彼らの本部である。 現在はバフラム復活の影響もあり部隊をいくつかに分けて作戦を展開していた。 その基地の上空に一機の変わった形の戦闘機が現れる。 だがその姿は通常、戦闘機といって思い浮かべる形には到底思えない。 コックピットが先端になっているような形は戦闘機に似ているが 機体のフレームには索敵用のレドームをそのままくっつけたデザインになっている。 形自体は戦闘機だったが、この何とも極端なデザインは何とも滑稽に思えるだろう。 しかしこれこそが「ディフェンダー」の開発による「R−TYPE」と 呼ばれる高機能戦闘機だった。 今、上空に見えているのは偵察用の「R−9E3 SWEET LUNA 」と呼ばれる レドーム耐久強化型の型だった。 そのパイロットはおもむろに通信を開いた。 「バード1より本部へ。先程の前線コロニーの小競り合いの結果だが どうやら地球から来た部隊のようだ。信号も一致している」 パイロットは男性のようだ。偵察時に集めた情報を操縦をしながら 行えるあたり只者ではない。 「間違うことなくこっちに向かっている。本機もこれより帰還する、 あー、それと」 ブツッ 通信は無言で切られてしまった。 「…綺麗な女がいるようなら教えてくれって言おうと思ったんだけどなあ…」 どうやらオペレーターのほうが彼の性格を理解していたらしい。 おそらく続きを言おうとしたところで察したのであろう。 「ま、いずれわかりますか」 そう言うとパイロット、マーク・フォークナーは 愛機R−9E3を発着口へと向かわせたのだった。 エクシードブレイブス 第30話 赤き星の現状 ――ディフェンダー本部 作戦会議室にはすでに火星側の人間が待っていた。 全員がそろうと月詠は敬礼をして挨拶をした。 「独立自衛団アンリミテッド、ただいま到着いたしました」 「遠路はるばるご苦労。私がここの本部長であるデニス・ケンリッジだ。 まずは堅苦しい挨拶を止めにすることにしよう。若い方も多いようだし」 デニスは髭を生やした人のいい老紳士といった感じの人物だった。 だがその鋭い眼は未だ現役を退いてなお、衰えぬ輝きがあった。 デニスの一言をきっかけにそれぞれが席に着く。 作戦会議室というのはどこも一緒の風景らしい。 モニターを正面に構え長テーブルに椅子というのはもはやお約束だった。 「まず諸君らにはこれを見て欲しい」 デニスが視線を走らせると、助手らしい人物がモニターを操作する。 テーブルの中央の空間に立体映像が映る。 「現在戦況は困難を極めている。それで地球に援軍を要請したが…まあその辺の 経緯は無しにしよう」 「連邦のお偉いさんのわがままに困ったもんだよな」 武はそうつぶやくと、正面に座っていたマークが、 「ほう地球は一枚岩じゃないって聞いてたけど、どうやら本当らしいな。 子供に支持されていないようじゃろくな事はしてないんだろう?」 「まあ、武力凍結を行って我が物顔で政治を行ってきた連中の末裔しか いないから、その辺は否定しないわ」 ひかりが呆れたように相槌を入れる。 現在の地球連邦軍の上層部はほとんどが過去に兵器開発凍結、 敵対勢力の掃討などの恒久平和に対して貢献したものの末裔で構成されており 事実上、彼ら以外に力を持つものはいなかった。 そこへ口を挟んだのはデニスだった。 「まあやり方としては間違ってはおらんな。あらゆる情報、経済を 一握りの権力者が管理し、それらに異を唱える分子を掃討した上ならば 一番有効な平和といえるじゃろう。事実、地球圏は100年以上そのおかげで 戦争と呼ぶ戦争はなかった…」 確かに事実上はそうだったが。しかしこの場にいる全ての人間が もう一度そんな方法を取ったら平和になるのか? 「結局押さえつけるだけでも平和を維持することは出来なかったんだよな。 長い時間があっただけでさ…」 信哉の一言に慧も続く。 「…一つの思考で統一、支配することはある意味で正しい。 けれど結局どこかで反発という歪みを生んだ、今の状況は 100年前からの反発なのかもしれない」 「…そうね。歴史上では連邦はいくつもの反乱勢力をつぶしてきたからね…」 千鶴もそう付け加えた。そうなると、ここにいる火星側の人間は そういった身勝手な人間のわがままとはいえ同じ地球から来た 自分達をどう思っているのか。一同に少しだけ不安が走るが それは杞憂に終わった。 「お前さんら胸を張りなさい。私たちとて元は同じ地球から来たもの、祖を同じくする 同じ人間じゃ。そんな風に気を使う必要はない」 「あ…」 見れば、他の人たちもそれが当然であるように微笑んでいた。 「さて話が逸れてしまったが、当面の状況の説明に移ろうか。 見ての通り我が軍は完全にバフラム、イレイザーの連合軍に押されておる」 見れば火星の3分の2は彼らの手に落ちているといっても過言ではない。 「そこで現状を打開すべく我らの同士がある兵器の凍結の解除に全力を注いでおる」 「ある兵器ですか?」 月詠が訊き返すとデニスは、 「OF専用空間圧縮砲ベクターキャノン…かつてのバフラム戦役において 開発された対アーマーン用の超兵器だ」 ベクターキャノンとはOFに取り付けるサブウェポンの一種で エネルギーラインのほとんどを注ぎ込んでしまうため固定砲台と化す。 ゆえに、扱いが困難でかつての戦いではジェフティだけがその威力を 存分に発揮できた。 「どうやらバフラムも空間圧縮技術をオシリスから流用しているようでな… こちらも対抗手段が必要となってきたのだ」 「なるほど…して首尾のほうは?」 ところがその月詠の質問にはデニスは少しうなだれて答えた。 「度重なるバフラムの襲撃により作業が思いのほか進まんのだ。 ましてや研究所の近くがすでに防衛ラインのギリギリとなってはな」 「このままじゃ研究所を放棄しないとならないかもしれないんだ」 マークが続ける。どうやら現状はとりあえずベクターキャノンの確保が優先らしい。 逆に言えばこれが確保できなければ状況は悪化する一方だ。 「わかりました、ならば我々デュランダルが防衛と、敵のラインを押し上げる 役目を請け負いましょう。ついでに別働隊にこちらの研究員をそちらの研究所まで 送り、作業の効率化を図ります。その間皆さんは今までどおり防衛に力を注いでください」 そう言って月詠は自分達の部隊を見回して、 「意義のある者は?」 「「「「異議なし!」」」」 全員が元気よく答えたのだった。 「しかし…いくらなんでも貴女の部隊だけでは…せめて一小隊でも我々の部隊を…」 「いえ、失礼ながら攻め手に戦力を割く余裕は少なくとも現状ではそちらにはないでしょう? こちらも現在の戦力で可能な作戦を展開します。どうかご心配なさらずに」 「むう…ならばマーク! お前はユユと共にデュランダルに同行しろ。 見たところ偵察専門の方はおらんようだからお前が情報を集めるんだ」 「まあそう来るとは思いましたけど。了解」 そう言っておもむろに椅子から立ち上がり、 「つーわけだ、しばらく厄介になる。よろしくな」 「こちらこそよろしくお願いします」 そう言って月詠は頭を下げた。 かくして火星軍の諜報部マークはデュランダルに同行することになった。 ――ディフェンダー本部 廊下 「それにしても貴方のR−TYPEだったっけ? 随分と奇抜なデザインなのね」 千鶴、ひかり、信哉がマークを格納庫まで案内しているときだった、 千鶴が突然そんなことを言い出したのである。 確かにあの突飛なデザインは気になるところである。 「あーあれな。実は用途別にかなりの数があるんだ。多分…実用的なものを 含めて50は軽く超えるな…」 「50…MSと比べても遜色ないくらいあるのね」 ひかりがさして驚きもせず続ける。 「まあPTと同じで火星で発見されたオーバーテクノロジーの結晶だからな。 いまだに扱いきれない点もあるんだ。そういうところは女と一緒だな」 そう言って信哉に意味深な視線を向ける。 信哉はやれやれと肩をすくめた。意味が分かっているのかどうかは知らないが。 「まああのシリーズは製作者に似てじゃじゃ馬でな…」 「はーいはい。マーク? どういう意味かしら〜?」 そう言って後ろから声がした。 全員がその声の主に向かって振り返る。 そこには赤い髪を前にたらして二つに分けた髪型。 透き通るような赤い目。 そして整った顔立ちの少し可愛い系の美人が立っていた。 「ユユ…聞いてたのか今の?」 「ええ、それはもう」 「あー、その今のは…」 「…くすくすっ」 「だー! その小悪魔的な笑いを止めろー!!」 「で、何か言うことは?」 「俺が悪うございました」 どうやらマークはこの女性には頭は上がらないらしい。 どうやら彼女がR−TYPEの製作者らしい。 「初めまして、可愛い女の子に可愛い男の子さんたち♪ 私の名はユユ−ミナサキ。地球にいた頃の言い方だと 水咲 祐々って言うんだけど…こっちの生活が長かったから ユユって気軽に呼んでくれるとお姉さん嬉しいかな」 ふふっと柔らかい笑み浮かべるユユ。 「ええ、こちらこそよろしく。ということは貴女が?」 千鶴の質問に頷くユユ。 「そうよ、R−TYPEの生みの親にして、まあ今はマークの専属メカニック? この人の乗り方荒いから」 「いや…お前が普通のチューンをしてくれたら苦労はしないんだがな」 そう言ってマークは会話に割り込んできた。 「だって普通のじゃつまらないでしょ?♪」 「俺に同意を求めるな!!」 どうやら立場的にマークはユユに頭が上がらないらしい、 「じゃさっきの暴言の埋め合わせをしてもらいましょうか?」 「ぐ…」 「ね?」 「ああ…わかったよ行くよ! 行くともさ!」 そう言ってユユに並ぶようにマークは歩き出した。 「悪い、お前ら後でな」 「ああ気をつけて」 信哉はそう言って手を振った。 その時、隣でいぶかしげな表情を浮かべている慧に、 「どうかした、彩峰?」 「…危険」 彩峰は未だ鼻歌を歌いながら歩いているユユの背中を見ながら 「…あの人、ユユは油断ならない」 「は?」 「…大丈夫、敵の間者とかそういう意味じゃない」 しかしそうなると信哉にはますます意味が分からない。 とりあえず信哉は考えないことにした。 一方その危険視されたユユだが… (うーん何とも可愛い女の子が勢ぞろいだわね〜。 うふふ…楽しみ楽しみ♪ 誰からつまもっかな〜♪) どうやらあらゆる意味での危険らしい。 ただ一人マークだけがその微笑の意味を理解し 先行き不安だということを理解していた。 続く
後書き 局長 「えー今回登場のマーク、ユユは」 武 「それぞれマークさん、琉餡さんより詳細データを頂きました」 舞 「…かなり感謝している」 純夏 「お二人ともありがとうございました!!」 SSのTOPに戻る