(奴の機体の接近武器はあの触手による攻撃のみか…) 武はテンペストの周りを旋回しながら相手の出方を伺っていた。 吹雪は地表すれすれをホバーで移動しながら、テンペストとの 微妙な距離を保っていた。 触手に対して攻撃を仕掛けようと近づく吹雪を迎撃するのは レーザーブレード化した触手だけだったことから テンペストの近接武器はあれのみと武は判断した。 (そしてあの触手の動き…) 吹雪は狙われたとき、常に時間差で攻撃を避けていた。 具体的に言えば、先発の3、4本の攻撃に、残りの触手が援護に入るといった感じだ。 (この動きは間違いない!) 武は何かを確信し、吹雪の出力を上げる。 (なら…前回同様懐にさえ入れれば…!) 吹雪は武の操縦の下、徐々に旋回位置がテンペストに近づいていく。 その動きにボルケスは反応して、 「馬鹿め! むざむざ落とされに来たか!!」 吹雪を正面に捕らえている触手のうちの3本が、吹雪に向かっていく! 「やっぱりな!!」 しかし吹雪はその触手を正面から避けて一気に懐に飛び込む。 触手のカーテンを潜り抜け、本体に向きあう吹雪。 まさに絶好の的である。 「もらったぁぁぁぁぁ!!」 武の雄たけびと共に吹雪の右腕が可変する。 一撃必殺の兵器、フォトンバスターへと。 エクシードブレイブス 第32話 暴風は雷によって堕ちて (あいつは所詮ニュータイプじゃないんだから、同時に攻撃できる兵器がいくらあったって 目視で動かせるものは限られてくる) 最初に動くのがボルケスの操作による攻撃で、残りはAIによる 追従攻撃だったのだ。 ニュータイプならば、ファンネルに代表されるように 無数の兵器による一斉攻撃も可能だが、それが出来ないのならば コンピューターの攻撃など武には恐れるほどではない。 そう読んで武は真っ向から触手を避けるという行動に出たのだった。 当然、内側への攻撃が難解なテンペストは吹雪の前に無防備の 弱点をさらした格好となった。 この機を逃す武ではない。 すぐさまフォトンバスターへの可変を行った。 この反応の速さは武ならではである。 ボルケスが触手で吹雪を払いのけるより、フォトンバスターのチャージのほうが わずかに早かった。 「喰らえ…フォトン…!」 しかし、 突然本体中央部から巨大な砲門が飛び出した。 「!?」 武はすぐさま発射を中断し、素早く機体を旋回させる。 「遅いわ! 喰らえ!!」 ズドオオオオオ!! 武の視界を巨大な光の粒子が埋め尽くす。 吹雪は急速旋回でその場を逃れようとしたが、 左半身を粒子砲に掠める。 「くっ!!」 吹雪の中にかなりの衝撃が伝わる。 武は操作レバーから手が離れそうになるのを必死にこらえながら、 粒子砲から吹雪を離れさせる。 避けきった頃には、吹雪の左半身はかなりのダメージになっていた。 左肩のスラスターや、脚部へのダメージも酷い。 装甲がかなり焼け付き、バランスも悪くなっている。 武は計器で吹雪の損傷を確認する。 幸いホバーはまだ生きているようなので、動きには問題ないが 左腕の武装はほぼ全滅だった。 (くそっ…無防備だった本体にメガ粒子砲を取り付けてやがったのか…) 武は舌打ちをした。こうなると単独でテンペストを落すのは 不可能に近い。 「はーはっは!! いいざまだな小僧!! これが改良型のテンペスト・Rだ!」 ボルケスが勝利を確信したように高笑いをする。 「へっ、たかがメガ粒子砲一門でどうにかなると思ったら大間違いだぜ」 「ふん虚勢を張るな。どう考えても貴様の武装では少なくとも 単独での戦いは明らかに不利であろう?」 反論はしなかったがその通りだ。 だが武は決して屈してはいなかった。 信じているからである、仲間の存在を。 「まあ俺一人じゃ無理だな」 「ほう、ようやく観念したか。まあいい、苦しまぬよう一撃で沈めてやる」 そう言って粒子砲を再び開く。 だが吹雪はその場から動かない。 傍目には諦めたように映るだろう。事実ボルケスはそう思っていた。 だが、 「勝利を確信したときこそ最大の油断が生まれることと知るがよい!」 ザシュ! 掛け声と共に現れた紫色の戦術機。 手には背丈と同じくらいの長さの対艦刀。 「な、なにい!?」 ボルケスは突如視界に現れた建御雷に驚いた。 建御雷は素早く粒子砲の砲身を切り裂いたのだ。 しかも上から突如真正面に現れて。 「…反応が遅い」 続けて黄色の戦術機、金剛が現れエネルギーを乗せた 強力なソバットを本体に当てる。 その動きは人工筋肉を取り入れた機体の性能も相まって 一芸に長けた技の冴えだった。 「ぐおおおお!?」 本体一部が大破し、テンペストはかなり後方まで下がっていく。 その様子を見て武は、 「まあ援軍が来たからお前には勝てるけどな」 吹雪は金剛と建御雷のところまで移動する。 「武、大丈夫なのか?」 「まあ左は結構ヤバイが、あいつを倒すのには支障はない。 彩峰、触手は任せてもいいか?」 武は彩峰にそう申し出るが、 「えー、めんどい」 「棒読みで反論するな」 「焼きそばパン一個」 「作戦行動に見返りを要求するのか?」 「白銀甲斐性ないね。そんなんじゃモテないよ」 そんな二人のやりとりに冥夜は呆れて 「彩峰、冗談はそれくらいにしておいたらどうだ?」 「そうだね、そうしようか」 「あっさり納得すんなよ!?」 武はその変わり身の早さに思わず突っ込んでしまった。 「…さっさと終わらせるよ」 「…はいはいわかりましたよ」 武は半ば諦めてそう言った。 彩峰にペースに乗せられるのはいつものことだと言い聞かせて。 その武の発言を合図に三機はそれぞれ散開する。 金剛は正面から吹雪は左に、建御雷は右に しかし武はその動きに少し歯軋りしていた。 (ちっ、機体の動きが俺の操作についてこねえ…!) 今までもこのようなことは何度もあったが、今回は機体のダメージもあるため 多少の性能の悪さで済む問題ではない。 だが、武はそれを機体のせいにするつもりはなかった。 (ついてこないなら、ついてこない性能で出来ることを やればいい!) 武はそう誓い、さらにテンペストの距離を詰める。 一方金剛のほうは、その機動性を生かし次から次へと テンペストの触手を根元から断っていく。 蹴り、手刀、組技とあらゆる手段でテンペストを追い詰めていく 「…機体の性能にパイロットの腕がついていっていないね…」 ポツリとつぶやいたその言葉は半ば同情のような響きがあった。 右に左にと金剛に振り回されたボルケスはすでに他の二機の位置を レーダーですら確認する余裕はなかった。 「行くぞ! 冥夜!!」 「うむ! いつでもよいぞ!!」 吹雪がまず、横からテンペストの本体へブレードによる一撃を与える。 突き、そこから右に水平に払う。 その攻撃によりテンペストの動きが一瞬固まる。 「喰らうがよい!」 さらにそこへ大降りの建御雷の雷神による斬撃が叩き込まれる。 その衝撃はボルケスを慌てさせるには十分だった。 そして本体への損傷もかなりのものだ。 同時に二人は一旦距離を取り、助走をつけて再びテンペストへの攻撃を仕掛ける。 (どっちだ…どっちだ…どっちだ!?) すでに錯乱状態にあるボルケスには吹雪と建御雷どちらが攻撃を仕掛けるかを 読むことは出来なかった。 「うああああああ!」 本体に取り付けられているバルカンを乱射しながら ボルケスは狂ったように叫んだ。 襲い掛かる恐怖から逃げるように。現実から遠ざかるように。 しかし、 「これで決める!!」 ズガアアン!! 武のブレードがさらに本体に一撃を叩き込んだ。 その衝撃でテンペストそのものの動きが止まる。 「今だ!! ぶった切れ、冥夜ぁぁぁぁ!!」 「はぁぁぁぁぁ!!」 野球のフルスイングのように、建御雷は雷神を右から左へと 水平の一閃を走らせる! ズザァァァァン!! その見事な剣閃はテンペストの本体を両断した。 本体のあちこちから次々へと爆発が起こりはじめ、 テンペストのコックピットにも炎が上がり始める。 「…勝て…なかった…か…。 く…ふ…フハハハハハハ! はーーっはっは!!」 テンペストが炎上する中、ボルケスは狂ったように笑い、 手元にあった脱出装置にすら触れなかった。 それが何を意味するのかもはや本人でもわからない。 そして、 ズドオオオオオオオ!! 巨大な爆音と共に、テンペストは爆発した。 「終わったか…」 静寂の中武の一言が重く響く。 すでに司令部は壊滅状態で前線の指示を送るような者は残っていない。 つまりAIによるラプター部隊の指揮系統はめちゃくちゃだというわけだ。 「後は前線の部隊の救援に行こう」 武は吹雪を発進させる。 「武? 大丈夫なのか?」 「まあ足手まといにはならないさ。それに戦力が足りないのは事実だからな」 それだけ言うと武は再び吹雪を起動する。 (駄目だ…吹雪のせいじゃないが、これ以上は限界だ…) 機体の能力が追いついてこないもどかしさ。 武は今回の戦闘で感じたこの無力感を何とも疎ましく感じていた…。 続く
後書き 武 「あれ?」 局長 「なんだよ?」 武 「決めは俺のフォトンバスターじゃなかったのか?」 局長 「ああ、最初っから合体攻撃の初お目見えに決めてた」 武 「…なんか微妙だな…」 SSのTOPに戻る