「やらせるか!!」

 信哉の掛け声と共に、クラウ・ソラスが縦振りの一撃を見舞う。

 しかし、グラオファングはそれを難なく流す。

 どうやらパイロットであるカロンは接近戦に長けているらしい。

 クラウ・ソラスは一旦距離を取り、ハンドガンでけん制する。

 飛び交う弾丸を両腕のブレードで弾きながら、グラオファングは

 再び距離を詰めてくる。

 真正面から攻めるグラオファングに対し、クラウ・ソラスもまた

 正面から剣撃で応酬する。

 ブレードがぶつかり合うたびに、お互いが弾かれるが

 そのたびにどちらからともなく再び距離を詰めるOF同士の

 肉弾戦が繰り広げられる。

 「ほう…若いのに間合いの掴み方を掴んでいる。やるな」

 「あんたもな。さすがに歴戦の戦士って奴か?」

 「…フ。場数だけではないがな」

 その言葉と同時にグラオファングの左腕のブレードがクラウ・ソラスの

 ブレードを大きく弾く。

 あまりの勢いにのけぞり、がら空きのボディに右腕のブレードの連撃が叩き込まれる。

 「ぐあああっ!」

 コックピットに伝わる衝撃に思わず叫ぶ信哉。

 「さて、俺にはそれほど時間がない。遊びに付き合う余裕はないぞ」

 その台詞には威圧感を感じざるを得なかった。

 信哉は拳を握ると、再び目の前の敵に向き合った。









 エクシードブレイブス 第34話

 戦場に身を置くもの、その居場所











 「まだまだこの程度で終わりではないぞ!!」

 右に左にと交互に移動を繰り返しながら、重い一撃を放ち続ける

 グラオファングに、信哉は防戦一方だった。

 マミーを展開し、ある程度の攻撃は防げるが相手のバースト攻撃は
 
 タイミングを見計らい避けるしかない。

 ところが避けたその瞬間にはもう、目の前に相手がいる。

 そこからマミーを展開することは出来ず、徐々にではあるが

 クラウ・ソラスは追い詰められていた。

 (くそ…あの機体は直接攻撃に硬直時間がないのか!?)

 信哉は内心焦りながら必死に攻略法を探す。

 相手の得意な近距離戦に持ち込むにはあまりに不利な要素が多すぎた。

 敵の両腕のブレードは剣であり盾である。

 攻撃速度は互角でも手数において圧倒的に劣るこちらの手段としては

 遠距離攻撃で一気に殲滅に持ち込むほかない。

 しかし、相手の特徴からして実弾系の兵器はまず通用しないだろう。

 となれば、バーストショットかハルバードなどの兵器で対抗するしかないだろうが…。

 (ハルバードはまず当てられない…となるとバーストか…)

 しかしあの機動力ではまず避けられるだろう。

 避けられない状況、それをどうやって作るか信哉は必死に考える。

 だが考えている間に、グラオファングの手が休まるわけではない。

 「どうした! あがくのはもう終わりか!!」

 グラオファングのブレードが交差するように振り下ろされる。

 信哉はバーニアを作動させ、その場から緊急回避する。

 (軽く様子を見るか!)

 そしてクラウ・ソラスは三発程度ホーミングミサイルを打ち出した。

 尾を引いて、猛スピードでグラオファングにミサイルが向かっていく。

 「甘い!!」
 
 しかし、グラオファングは信哉の予想通り、一瞬にして襲い掛かる

 ミサイルを切り払う。

 爆煙が漂い、一瞬グラオファングの姿が煙の向こうに霞む。

 (あれ……? …そうか!)
 
 信哉は何かを思いついたらしく急上昇して天井近くまで上がる。

 そこからホーミングミサイルを射出できるだけ準備すると、

 (一か八か! いくぞ!!)
 
 打ち出したミサイルと共にグラオファングに特攻を始める。

 スピードが乗り、ぐんぐんグラオファングは目前に迫る。

 だがミサイルのほうが徐々にクラウ・ソラスを追い抜いていく。

 「玉砕覚悟か、面白い!!」
 
 当然、立ち止まったまま全てのミサイルを迎撃できるわけもないので

 グラオファングも動き出す。

 時間差で縦横無尽に360度四方から襲い掛かるミサイルを次々に切り払っていく。

 徐々にカロンの視界が煙によって覆われていく。
 
 だが機体の姿を隠せるほど、濃いわけでもないのでカロンは辺りに

 注意を払っていた。

 やがてミサイルの攻撃が途絶え、正面から向かってくる影をカロンは捉えた。

 (甘かったな少年!)

 グラオファングはその影に向かってとどめの一撃を放つべく

 右腕のブレードから鋭い突きを放つ!

 ボヒュ!!

 だがカロンが予想したような手ごたえはそこにはなく、あるのは

 電影で作られた影だけだった。
 
 「何ぃ!?」

 「かかったな!!」

 その信哉の声は外部通信を通してカロンの背後から聞こえた。

 だがそれをカロンが確認することはなかった。

 クラウ・ソラスはグラオファングの背中に強烈なバーストショットを放ったからだ。

 青いエネルギーの球が、OFを包み込むほどの巨大さと猛スピードで

 襲い掛かる。

 ズガドオオオオオオン!!

 バーストショットが炸裂し、そのダメージと共に生まれたスピードで

 研究所内の床へと失墜していくグラオファング。

 そこから追い討ちをかけるようにホーミングミサイルが襲い掛かる。

 すでに制御を失っているグラオファングにそれらを避けるすべはなかった。

 (ふ…どうやらここまでか。どうやらあの少年の実力を見誤ったらしい…)

 カロンは最後にそんなことを思った。

 だが後悔の念はない。

 最後の最後まで戦場に生き、戦場で散ることが出来るのだ。

 守るべきものもなく、ただ生きるために戦う自分が生を終わらせるのに

 ふさわしい舞台だった。

 そして彼の意識は消えた。

 ドゴガアアアアアアン!

 研究所の壁に叩きつけられ、炸裂した機体と共に。





 ――研究所

 生き残った研究員が乗ったLEVが近づいてくる。

 どうやら全員無事らしく、アルテミスや他の機体の護衛されている。

 「おかげさまで助かりました」

 研究員の一人がそう言った。

 「いや、無事でよかったよ」

 信哉はそれだけを言うと本題に入った。

 「ベクターキャノンのほうは…」
 
 「ご心配なく、すでにデータとして確保済みです。

  後はこの研究所を爆破すれば、我々以外にベクターキャノンを使うことは出来ません」

 「それじゃ、急いで脱出しましょう。前線のことも気がかりだわ」

 ひかりの発言に、その場にいる全員が頷き並んで研究所を後にする。

 外へ出て、逃げ遅れた人物がいないことを確認すると

 ドゴオオオン!!

 研究所は轟音と共に爆発した。

 立ち上る煙は爆発の割りに少なかった。







 ――ディフェンダー本部。

 前線を押し上げ、ベクターキャノンを無事確保したアンリミテッドの舞台は

 本部にて合流した。

 すでにこの報告は各地で善戦するディフェンダーの部隊の士気を大いに上げる結果となった。

 「皆さん、本当にありがとうございます。ベクターキャノンの研究が少し進まないと

  次の作戦には移れませんのでしばらく休んでください」

 そういうデニスの言葉に疲れていた皆は素直に思い思いの場所で休息を取ることにした。

 ところが、

 「む〜」

 穏やかでない人物が一人いた。

 「何唸ってるんですか? ユユさん?」

 「ああ、純夏ちゃん。見てよマークの機体」

 そういわれて純夏は機体のあちこちを眺めるが、

 「うーんと綺麗じゃないですか?」

 そうマークの愛用のR9E−3はほぼ無傷で生還したのだ。
 
 あの激戦の中無事だったのは本人の操縦もあるが、味方の援護によるところが大きかった。

 「そう綺麗過ぎ。せっかくマークをねちねちいたぶろうと思ったのに…」

 どうやら出撃前の忠告をマークがしっかり守ったことが面白くないらしい。

 「あはは…」
 
 心底つまらなさそうなユユに純夏は苦笑いを返すしか出来なかった。

 「あーあ、そだ、純夏ちゃん食堂で何か食べない?」

 「え? でも機体の整備はいいんですか?」

 「いいのよ、これくらいなら後で自分でやらせるわ。それに今は

  甘いもの食べたい気分だし♪」

 「じゃあ、ご一緒します」

 「おっけー、じゃ他の子も誘っておきましょう。若い子と話すのなんて

  久しぶりだし〜」

 上機嫌で純夏を連れて行くユユ。

 なおこの後、マークが整備をやらされたのは語るまでもなかった。

                                 続く


後書き 往人    「なんだ? 随分短くないか?」 局長    「流れ的にこれ以上だと長くなり過ぎそうだから分けた」 美凪    「…ご利用は計画的に」 純夏    「なんだかご機嫌だね、遠野さん」 往人    「機体のインパクトもあって初登場からすぐに票を得たのが嬉しいだろう…」 美凪    「…ぶい、です」 SSのTOPに戻る