――アーマーン突入口

 圧縮空間によって入り口を封印されている突入口。

 すでに部隊は配置についており、後は突入を待つだけだった。

 「では倉田さん、ベクターキャノンをお願いします」

 「了解です」

 佐祐理は返事をすると、コックピットにあるスイッチを押した。

 サラマンダーがメタトロン粒子に包まれ一部が変形していく。

 レーザーの射出口になっている部分に六つの球体が等間隔で現れ

 リングを作り出す。

 「ベクターキャノンモードへ移行、エネルギーライン全段直結」

 先端にエネルギーが収束していき、徐々にリングが回転を始める。

 「アイゼン、ロック、チャンバー内正常加圧中」

 そして勢いよくリングが回転を始めた。

 「ライフリング回転開始」

 そしてモニターにチャージ100%の表示が現れる。

 「ベクターキャノン、撃ちます!!」

 ズゴガアアアアアアアアアア!!

 圧縮された空間エネルギーが収束されたレーザーとなって放たれる。

 その圧倒的火力は、戦艦に搭載されている対艦砲をも遥かに凌駕する。

 やがて突入口は、ようこそお越しくださいましたとばかりに

 ぽっかりとその口を開けていた。

 「ノアシップと、ディフェンダーの部隊は後続部隊をここで

  足止めします。…後は貴方達に任せます」

 月詠はそう全員に告げた。

 「わかった。それじゃ行って来るぜ月詠さん」

 武の一言を合図にそれぞれが突入口へと飛び込んでいく。

 最後の一人を見送った後。

 「皆さん…どうか無事に」

 月詠はそう一言そう言った。









 エクシードブレイブス 第42話

 地下深く眠る真実











 突入口はどんどん地下へと続いていた。

 元々、機材の搬入路として使われていたせいだろう高さがあり、

 仮に戦闘が起こっても問題なく戦えるほどの広さがある。

 「妙ね…」

 「榊、そなたもそう思うか?」

 千鶴の一言に冥夜が同意を促した。

 二人は、いやおそらく他のメンバーもここでの戦闘を想定していたであろう。

 何しろここは敵の本拠地なのだから。

 だが、そんな様子はなく進軍は思いのほか順調だった。

 「おかしいのはそれだけじゃない」

 往人が二人の通信に割り込んだ。

 「…生命反応がない。いくらなんでもおかしいとは思わないか」

 「確かにね。元々無人機が主力だったみたいだから人が少なくても

  違和感はないけど…0というのは正直気になるわ」

 ひかりは無難に答えを返した。

 なんにしろ現在では憶測の域を出ないからだ。

 不安ではあるが彼らには進路しかない。

 一本道をすいすい進んでいくと、やがて開けた場所に彼らは飛び出した。

 そこはだだっ広い空間に等間隔に柱が立てられている場所だった。

 目に見える範囲では果てが見えない。

 「なんて広さだ…火星全部に広がっているのか?」

 武の疑問に答えたのはマークだった。

 「いや…半分って所だな。それでも常識外の代物ではあるが」

 「ここが…アーマーン?」

 真理奈の問いにマークは頷いた。

 「…二つの反応を見つけた。一つは…往人の機体との信号に似ているな。

  おそらく橘ってのは…」

 「そこに間違いないな、マーク、座標データをくれ」

 マークは往人の言うとおりデータを送信した。

 「ああ、後は…OFか! オシリスが来るぞ、構えろ!」

 各員が戦闘態勢に入るのと、オシリスがその姿を現すのはほぼ同時だった。

 「やあ…アンリミテッドの皆さん…ようこそアーマーンへ」

 「貴方を…倒しに来ました」

 佐祐理は穏やかにそう言ったが声には怒気が含まれている。

 「ふふ…まさか君たちのような甘ちゃんぞろいに

  あの状況下における最善の策を取れる人がいるとは思わなかった。

  おかげで、こっちはすっかり劣勢だよ」

 とてもそうは思えないイサイルの軽口に、佐祐理はふつふつと怒りを高めていく。

 「さて、そうなるとここから先に進んでもらうわけには行かない。

  橘との取引もあるしね」

 オシリスがその長いロッドを取り出す。

 OFの武器としては最長の間合いを誇る、強力な武器だ。

 「佐伯! 倉田! お前らは俺と一緒にこいつの相手だ!

  残りのメンバーはその橘って奴を止めろ!」
 
 マークは叫ぶや否や、機体を急発進させてオシリスに正面から突っかかる。

 その動きに一瞬、皆の動きは固まるが、
 
 「…武! ついて来い!」

 「お、おう! お前ら行くぞ! 佐伯! 倉田! 任せたぜ!!」

 すぐさま動き出した神奈式の後に天照が続く。

 「はいっ!」

 「任せてください!!」

 そんな皆の背中に威勢のいい返事を返す二人。

 やがて他のメンバーはアーマーンの中心部へと向かって見えなくなった。

 「うおおおおおおらぁ!!」

 フォースレーザーを連発しながらオシリスとの間合いを縮めていくR−911S。

 しかしオシリスのガードはレーザーを湾曲させてしまう。

 そして得意のゼロシフトでオシリスはその特攻をあっさり避ける。
 
 「ふ、いかに高性能の機体といえど、所詮は戦闘機。

  OFに立ち向かうには荷が…」

 ズゴオオオン!!

 R−911Sの背後から語っていたイサイルの台詞が止まる。

 そのオシリスの背に弾丸を打ち込んだのはアルテミスである。
 
 イサイルの視界に、弓状の武器を構えたアルテミスの姿が映る。
 
 「ゼロシフトは常に機体の背後に回る修正がある…。

  一対一なら最強の武器ですけど…」

 真理奈がそう呟いた。

 ヒュオオオ…
 
 辺りの空気が変わる、イサイルが気がついた時

 サラマンダーがオシリスの死角から襲い掛かろうとしていた。

 「くっ!!」

 オシリスはR−911Sへの攻撃を中断しその空域から離脱した。

 その動きには一瞬焦りが見える。

 イサイルは顔をしかめた。

 その様子をみてマークは、

 「はっ、どうやら読めた見てえだな俺の狙いが…」

 そう、マークが声をかけたのは、この中でももっとも機動力の高い機体のみだ。

 こうなると、オシリスは必然的にゼロシフトで避けることを多用せざるを得ない。

 だが、ゼロシフトは空間を圧縮し、それが元に戻ろうとする反動を利用しての
  
 高速移動であり空間跳躍ではない。

 つまり、空間を圧縮するまでのタイムラグがあり連続使用が出来ないのだ。

 とはいえその時間は2秒にも満たないが、味方の三機がお互いの背中に

 注意を払っていれば…オシリスの背後攻撃は防げる。

 仮に誰の背にも現れなかったとしてもそれは、マークたちには

 不利にはならない。

 「さて…いつまでその余裕づらを保ってられるかな?」

 形勢はこちらに向いた、マークはそう思った。

 「ふ…ふふふ…全く楽しませてくれる。その程度で優位に立ったつもりか?」

 「何?」

 その台詞と同時にオシリスが、右腕を振り上げた。

 そこから無数のレーザーが放たれた。

 紅いそのレーザーはくねくねと不規則に曲がりつつも

 確実に味方機を狙っていた。

 「ちっ! ホーミングレーザーか!」

 マークはフォースを張りつつ急速旋回でその場から回避。

 サラマンダーやアルテミスも同じようにシールドでそのレーザーをしのぐ。

 だが、その瞬間にオシリスは、

 「しまった!」

 マークが叫ぶが遅かった。

 オシリスはアルテミスの背後に回りこんだ。

 サラマンダーもR−911Sも援護が間に合わない。

 ガン! ガガン! ガン!!

 「きゃあああっ!!」

 オシリスの最初の一撃はロッドの振り下ろしでアルテミスの背部を強打した。

 そしてその勢いで下に落ちそうになるアルテミスに返すロッドで打ち上げる。

 完全に無防備状態で浮いたアルテミスにとどめの突きを放ったのだ。

 「ううっ…」
 
 真理奈は背後からの衝撃にたまらずうめいた。

 「ふふふ…このオシリスはもほやただのオシリスじゃない…。

  マイナーチェンジを済ませて、僕用にカスタマイズされているのでね。

  残念だったな、戦闘機のパイロット。せめてランナーが僕でなければ

  君の作戦は十分に通じただろうがな…」

 「へっ…随分と自分を過大評価するじゃねえか」

 「自信と言ってくれ。自分の力に対する絶対の信用。

  それが僕の強さだ」

 フォンフォン!

 ロッドを回転させてオシリスは腰の辺りに構えた。

 「さて…あとどのくらい君達が保つか楽しみだよ」

 その言葉には弱者をいたぶる下卑た楽しみが含まれていた。

 (信哉…頑張ってみるけど…お願い…お願い…助けて…!)

 真理奈は、今は眠りについている少年を思った。

 今を必死に生きている限り、諦めない限り彼が必ず来ると。

 そう信じて。





 ――ノアシップ

 (助けて…)

 それはどこから聞こえてきたのか。

 か細く、小さく、けれど心の奥底まで呼びかけてくる切実な思い。

 その声に導かれてなのか、

 「……真理奈…」

 毛布をどけて少年は立ち上がった。

 体に違和感はない。

 状況はわからない、だが真理奈の声が全てを物語っている気がした。

 「行かなきゃ、皆が戦っている。そして真理奈が…」

 信哉は戦闘服に着替えた。

 まるで何年も寝ていたような気さえする。

 「真理奈が呼んでいる」

 そして信哉は力強い足取りで医務室を出たのだった。

                            続く


後書き 局長    「信哉復活!」 千鶴    「随分引っ張ったわね」 慧     「…こういう話好きだから」 局長    「いいじゃないか、ヒロインの呼びかけで起きる主人公」 千鶴    「王道すぎるけどね」 SSのTOPに戻る