「君達にこの僕が落とせるものか!」 声高々に叫んだ橘は翼の夢を上空へと上昇させる。 一瞬の間に頭上を取られたアンリミテッドのメンバー達は 「しまった、上だ!」 いち早く武が反応するが間に合わない。 「死ねぇ!!」 骨のような両手を振り下ろすような動作をする翼の夢。 すると無数の黒いレーザーが雨のように降り注いだ。 「回避…!」 「…くっ!」 「きゃああああっ!」 皆が皆、それぞれ回避運動を取るが、レーザーとレーザーの間隔が極めて 短い、文字通り雨のような攻撃を回避することはできない。 一瞬にして、機体は次々と撃ち抜かれあっという間に形勢は逆転する。 「ちっ…フォースが上手く作用したか…」 そういうマークの機体もそれなりにダメージを負っている。 「くっ…やはり古代の兵器と言うのは伊達ではないのだな…」 冥夜は苦々しげに上空の翼の夢を睨んだ。 相変わらず悪趣味な骨とオーラだけで構成されたような機体。 「…負けられない」 彩峰はポツリと、だがはっきりと強い口調でそう言って 金剛を立ち上がらせた。 「当然です! ここまで来て負けられません!」 千鶴もまた彩峰に続くように草薙を起こして、立ち上がる。 「ふっ…あがけばあがくほど苦しむだけだというのに…」 それを理解できない、といわんばかりに見下ろす橘。 だが彼は気づいていなかった。彼らの目に宿る不屈の闘志を。 そしてその先には一つの未来が見据えられていたことを。 エクシードブレイブス 第48話 決戦 lastact 〜限界を超えた魂〜 「突破口を開くぞ! 信哉! 佐伯! 奴らを落とすのはお前らに任せる!!」 「ああ! 真理奈、打ち合わせどおり行くぞ!」 「はいっ!」 マーク機が飛び上がり、アガートラームとアルテミスはさらに翼の夢の 頭上を取ろうと急上昇する。 「ふははは! その程度の動きで!」 しかし、それを察し、翼の夢はどこからか長い刀を取り出し アガートラームとアルテミスを一刀の元に切り伏せようとした! ガガガガガガ!! しかし、いつの間にか回り込んでいた草薙が翼の夢の腕をマシンガンで 正射する。 そして下から突き上げるように金剛のアッパーが翼の夢頭部に炸裂する。 「…亡霊は大人しくしている」 「ぐっ…! 貴様ら…」 さすがにこの体勢に攻撃を受けては姿勢を制御できず大きく翼の夢は後方に 傾いた。 「へっ…それじゃお膳立てと行きますか!!」 マークは波動砲のトリガーを引こうとしてふとコンソールに目をやった。 ループ4。 波動砲はすでに限界レベルまでのチャージを終了している。 機体の破損率からするとこちらもただではすまないだろうが…。 「…どのみちこれが俺の最後の攻撃だ…。伸るか反るか、こういう博打も 悪くは無い…!」 不敵に笑ってマークはトリガーを引いた。 ギュオオオオオオ!! 発射口からは、次々と波動砲が分裂しついには5本以上のビームが照射された。 それらが一点に翼の夢を狙い、あっという間に翼の夢全体を覆う。 「今だ! 奴を叩き落せ!!」 「真理奈、行くぞ!」 「うん!」 アガートラームとアルテミスは翼の夢の真上に陣取り見下ろす。 「真理奈、合わせろ!」 「うん!」 二人の掛け声と共にアガートラームの右手とアルテミスの左手からチャージされる バーストエネルギーが交じり合う。 OF同士のバーストエネルギーを混じり合わせて行う、それが 「私たちの一撃…喰らいなさい!!」 「エクステンド・バーストレーザー!!」 ドゴオオオオオオオ!! 横からの波動砲の攻撃が止むのと同時に次は上空から叩きつけるような レーザー。 「くっ…ぐあああああ!」 これにはさしもの翼の夢といえど耐え切れず、そのまま浮力を失い 墜落するようにアーマーンの底に落ちた。 だが、それと同時にマーク機の機体の砲門が、 ドン! と、音を立てて砕けた。 「砲門だけで済んだか…ま、賭けは俺の勝ちだな…」 自嘲気味にマークは呟いた。 そして底のほうでは、落ちてくる翼の夢を待ち構えていたメンバーが 早速と仕掛けていた。 「…これで終わらせます」 ガシンガシン! 美凪のヴァルシオンが右手と左手を同時に前に突き出す。 「…ツインクロスマッシャー…!」 ギュオオオオオオ!! 赤と青のツイスト状のエネルギー弾が二発同時に放たれる。 それ一発でも並みのモビルスーツを撃退できる威力が今、二つ 翼の夢に着弾する。 「よし! これで決めるぞ、国崎さん!」 「任せろ…観鈴…行けるな?」 「大丈夫だよ…往人さんが一緒だからね」 神奈は、急上昇しその場を離れ、武の天照は真正面から翼の夢に向かっていく。 「冥夜! 純夏!! 俺に続けぇ!!」 「承知した!」 「任せてよタケルちゃん!」 真正面から攻撃を仕掛ける戦術機が三機。 そしてそれを阻もうと起き上がった翼の夢を封じるように仕掛けられる 弾丸の嵐。 「や、悪いけど大人しくしててもらおっか」 「これ以上長引かせるのもつらいからね」 つばさとひかりだった。彼女達は実に的確な射撃で翼の夢の行動を封じている。 「行くぞ! フォーメーションD! まずは俺だ!!」 ガキン! ズドオオオオオオ!! 移動状態から飛び込むような姿勢でフォトンバスターを放つ天照。 それが直撃し大きく翼の夢がぐらりと揺れる。 「次は私が!」 ズザアアアアアアアン!! そこから一心の元に振り下ろす雷神。 その一撃は翼の夢に大きなダメージを与えた。 一筋の縦線が刻み込まれたことがそれを物語っている。 「最後は私よ!! いっけぇ! どりるみるきぃ…」 ギュオオオオオ!! 最高速でスピードの乗った状態、相手は無防備。 これ以上ないコンディションで放たれる必殺の、 「ぱぁぁぁんち!」 ガゴオオオオオオ!! メキメキ… 何かがきしむような音が当たりに響き渡った。 どうやらいかに古代の兵器と言えど無敵ではなかったようだ。 その限界が、過去の終わりが近づいている。 「くっ…何故だ、この機体はいまの科学力ですら解明できないほどの 翼人たちの英知の結晶だぞ!」 「橘…たとえそうだとしても」 「後ろをみてばかりのお父さんじゃ…決してそれは無敵の力にはならないんだよ…」 悲しみか、哀れみか。二人の口調からはそれらの感情を読み取ることはできない。 ただ、過去の栄光を求めた男と、未来の希望を見据えた二人の差が 機体の姿となって現れた。 「せめて…俺たちの手で終わらせてやる…!」 「もう眠っていいんだよ皆。悲しい夢は終わったから…。 もう空に縛られること無く自由に羽ばたいて」 ズガン! ズガン!! 鋭い嘴を起点に螺旋を描きながら体当たりをする神奈。 そしてそれらを何回か繰り返した後、エネルギーで刃と化した 翼がさらに翼の夢を切り裂く。 そして、最後は、 「最後は…どうか」 観鈴の祈るような声が 「どうか…幸せな記憶を」 ズドオオオオオオオオオオ!! 羽から放たれた無数のレーザーが今度は翼の夢を蜂の巣にしていく。 次々と打ち抜かれていく機体の破片から少しずつ、何かが空に上っていく。 誰もがそれを見ていたが、それが何なのかを疑問に思うものはいなかった…。 やがてその光はコクピットにまで及び、 「何故だ…何故…うわああああああ!!」 その瞬間、往人は観鈴を胸に抱きその耳をふさいだ。 観鈴は何も言わなかった。 そして光が止むとそこにはもう何も無かった。 不快感をもよおす無数の触手のような物も、骨のような機体もなく ただ、壊れた施設の残骸だけがそこに残っていた。 「終わった…のか?」 武が自問するように呟いた。 「ああ、終わったんだ」 マークがすでに動くのがやっとと言う感じの機体からそう言った。 「やった! やったんだよ、私たち!」 「ええ!」 純夏と千鶴が声を上げて喜んだ。 他のパイロット達も口には出さないがほっと安心したのが空気でわかる。 「皆さん〜とりあえず喜ぶのはここを出てからにしましょう」 佐祐理の一言で、皆が次々と出口に向かっていく。 そして真理奈と佐祐理だけがそこに残った。 「佐伯さん、手伝っていただけませんか?」 「え? 何をですか?」 「ここの施設…まだおぼろげに生きているみたいなんです。 念のためベクターキャノンで破壊しておきたいんで…」 「わかりました、アルテミスの余剰エネルギーを使ってください」 アルテミスからエネルギーの供給を受けてサラマンダーは ベクターキャノン発射モードに移行した (舞…終わったよ) (今…みんなが) (全てを終わらせてくれたよ) (ううん、まだ地球での戦いが残ってましたね) (あははーっ 佐祐理はやっぱりダメですね) (でもね) (それでも支えてくれるみんながいるから) (佐祐理は…頑張って行こうと思います) (ありがとう…舞) そしてベクターキャノンが静かに火を噴いた。 ドゴオオオオン! アーマーンからの最後の爆音をその場にいた皆は見つめていた。 火星での戦いはこののろしと共に終わった。 「それではアンリミテッド任務完了。これよりディフェンダー本部へ帰還します」 月詠の凛とした声でノア・シップは発進した。 アーマーンを背に、本部へと帰るために…。 続く SSのTOPに戻る