――ディフェンダー本部 多目的ホール アンリミテッドメンバーはおろか、数百人は余裕では入れる多目的ホールに 所狭しと並べられる料理、テーブルの数々。 事後処理も終わり、バフラムの残党の捕縛も済んだアンリミテッドメンバーは ディフェンダーのメンバーと共にささやかな戦勝パーティを開くことになったのである。 多大な犠牲もあり、不謹慎なとも思うかもしれなかったのだが 「舞の為にも…この勝利を祝ってあげるべきだと思うんですよー」 という、佐祐理の一言でこのパーティは開かれることになった。 一番の悲しみを抱えているであろう佐祐理にそういいきられては誰も反論は 出来ず、ならばせめて楽しむかという方向に落ち着いた。 佐祐理を含め、何人かの女性メンバーたちは厨房で和気藹々と 料理にいそしんでいる。 そんな佐祐理を見ていると必要以上に悲観的になることは かえって佐祐理を苦しめるだけなのでは、という想いが他の皆も思い始め 今ではあちこちで積極的にパーティの準備が進められていた。 祭りは準備の時間が楽しい、という言葉通り皆が皆笑顔で準備を進めていくうちに いつの間にか開催時間が迫っていた。 一人、また一人とホールに姿を現し、壇上には月詠とデニスが 開催の挨拶をするために待機していた。 全員が揃い、飲み物が全員にいきわたったことを確認すると デニスはマイクを掴み 「多大な犠牲を重ねながらも、ディフェンダーとアンリミテッド 二つの組織の協力により火星から脅威を退けることが出来た」 皆黙って壇上のデニスを見上げている。 想うところのあるものもいるだろう。 「まだ戦いはお互いに残っているが今は、このひと時だけでもそのことを 忘れ大いに楽しんで欲しい。…乾杯!」 「「「「「「乾杯!!」」」」」 こうして宴は始まった。 エクシードブレイブス 第49話 宴の合間に… 「お、これは美味いな〜」 男性陣は早くも料理の方に手をつけていた。 あちこちに寄りながら様々な料理を食べている。 往人にいたっては一心不乱に次から次へと食べ物へとフォークを 突き立てている。 「ゆ、往人さん少し落ち着いて食べようよ…」 「今の俺にそんな余裕は無い!」 観鈴がたしなめるが意に介さず。 旅で鍛えられたハングリー精神は衰えずと言うことらしい。 「にしても、皆揃いも揃って料理上手ねえ…」 ひかりが感心したように並べられた料理を眺めた。 「あははーっ、佐祐理はしょっちゅうお弁当を作ってましたからー」 「私は…普通かな?」 佐祐理と純夏が少し照れ笑いを浮かべる。 しかし、彼女達の言葉を否定できるだけの豪勢な料理が立ち並んでいる。 「よし! ここは一つカラオケ大会としゃれ込むぞ!!」 「ちょっと! 白銀さん、お、俺は歌は…」 武は牧島の首を掴んで壇上へと上がる。 その手にはすでにマイクが握られやる気十分である。 「よ、いいぞ! マックス、一曲歌え〜」 よせばいいのにつばさが煽ったため、牧島は引くにひけなくなった。 「よしこれで行くぞ、牧島お前も選んどけよ」 「やっぱり俺も歌うんですか…?」 武は静かに首を振った。 どうやら腹をくくるしかないようである。 ――長官室 「すみません、デニス長官。パーティの最中に」 「いや構わんよ、何か頼みごとがあるという話だったね」 ええ、と信哉は一呼吸置いて 「俺を…火星へ移民させてくれませんか?」 「…それはまた随分と突然だね」 デニスはさほど驚きもせずに答えた。 机をはさんだ向こう側に広がる火星移民の町を眼下に見据えて。 「君もこの町の明かりの一つになりたい、と言う意味だね」 「ええ、俺は地球には居場所がありませんから。死亡扱いですからね…。 それにOFの訓練の方が長かったんで…こっちのほうが仕事があるかなと」 「ふむ私としては、君のような人材がありがたいんだよ。何しろ バフラム以外にも度々、トラブルが起こるのでね」 しかし…とデニスは付け加えてトーンを変えた。 「君の…周りの者には何と伝えるつもりだね?」 「…あいつには…選択してもらいます。俺が決めてはいけないんです。 あいつが自分で選んで、そうじゃないといつか後悔しますから」 「ふむわかっているようなら私からは何も反対することは無いな」 そう言ってデニスは信哉に握手を求めた。 「全てが終わったら君を歓迎しよう。だから死ぬんじゃないぞ」 信哉はその手を取ってこう答えた。 「ええ、わかりました」 ――本部廊下 「あ、信哉。何処に行ってたの?」 ホールに戻る途中の長い廊下。 誰もいない廊下に真理奈がぽつんと立っていた。 「長官の部屋さ、地球での戦いが終わった後について話をね」 「終わった後のこと…?」 真理奈が首を傾げて尋ねた。 信哉は見てみろよと言わんばかりに窓を差した。 窓の向こうには少し角度が違うが、長官が見下ろしていた 町が見える。 一つ一つの住居に明かりが点り、一つの町を形成する姿。 無重力化、ということもあり地球のそれとは全く姿は違うが 形成する人たちの生活は一緒。 「俺は全ての戦いが終わったら火星へと移民することに決めたんだ」 「え!?」 真理奈は驚いた。 「地球では死亡扱いだし、それにこっちのほうが何かと俺の力を生かせるだろうと 思ってさ。長官に話したら歓迎するよって」 「そ、そうなんだ…」 真理奈は動揺しながら答えた。 戦いが終われば…信哉が自分の側からいなくなる、そう感じて。 「でも一つ、やるべきことがあるんだ」 「…何?」 信哉は真理奈を真っ直ぐ見つめて、 「選んでほしい、俺と来るか地球に残るか。俺は…お前に強制しない。 お前が後悔しないよう自分自身の気持ちで選んで欲しいんだ」 「信哉…」 「これは…簡単なことじゃないから。やっぱり止めたいって言っても 完全にやり直せることじゃない。俺は一から始めるだけだけど 真理奈は違う。だから」 「そう…だね。ねえ信哉、昔のこと覚えてる?」 真理奈は、信哉の問いに答えず逆に質問で返した。 「え?」 「あの孤児院にあった大きな木あったでしょ。あの下で 信哉私に何て言ったっけ?」 「……お前なあ」 それは幼かった自分達の淡い思い出。 その情景を思い出して信哉は少し呆れてしまった。 「私の思いはあの頃から変わっていないの。貴方の側にいて 貴方ともにある。それだけが私の幸せなんだって、今でも思うの。 これは…一時だけの想いじゃないって」 「後でやり直しは出来ないぞ」 「わかってるよ」 「…じゃああの日と一緒の言葉を言うか」 「うん」 信哉は少し落ち着かない自分の動悸を抑えるように 一つ一つの言葉をかみ締めるように思い出して言った。 「…俺の…側にいろよ、お前の場所は俺が作ってやるから」 「それじゃ…私をお嫁さんにしてくれる?」 「俺でよければ喜んで」 信哉は言ってから大した事を言ったもんだと幼い自分に思った。 そして、真理奈をそっと抱きしめる。 信哉の腕の中にすっぽりと収まり、そして見上げる真理奈は信哉を少し 上目遣いに見上げる。 引き寄せられるように、どちらからともなく二人の唇が近づきそして、 「ん…」 甘えるような真理奈の声だけが信哉の耳にわずかに聞こえた。 ――ホール 「姉さん」 「あれ? 一弥?」 佐祐理はいつの間にか持っていたロケットの写真を眺めながら シャウエッセンを差したフォークを持っている。 「舞がね、佐祐理と一緒に出たパーティのときにこのシャウエッセンを たくさん食べてたの」 くすくすと思い出し笑いをする佐祐理。 「姉さん…」 「大丈夫ですよ一弥。佐祐理はもう負けませんから。 それに…」 ホールを見渡す佐祐理。 「きっと舞はこの光景を見て喜んでるはずですから、自分の戦いが こうして実を結んだんですから」 「そうか、そうだね」 一弥は頷いて姉と同じ方向を同じような優しい目で見つめた。 ホールでは武が、バカ騒ぎに火をつけますます大騒ぎになっている。 誰もが、今は戦いの事を忘れられている。 それでいい、舞が望んだのは悲しみではなく、喜び。 誰かの笑顔、舞はそのためにいつも戦っていたのだから。 それは最初は孤独で、そして佐祐理と出会い、そして彼女は 変わって行った。 (佐祐理…私は誰かのために剣を取りたい) そう言った彼女と共に佐祐理は戦う決意をし そしていつしか親友となったのだから。 そんな彼女だからわかる。 ロケットの中の写真と同じように、舞が どこからか不器用な笑顔で、それでも誰が見てもわかる 嬉しそうな表情でこの場を見ているであろうことが。 続く SSのTOPに戻る