――信哉の部屋

 いつの間に夜があけたのか。

 もっとも宇宙空間に昼夜の概念は無いが。

 信哉は起き上がり隣に眠る愛しき少女の寝顔を眺めていた。

 そんな無防備な寝顔を見ていると朝からいかがわしい

 欲望がむらむらと上がりそうなので彼女を起こさないようにそっと

 ベッドから出て衣服を身にまとう。

 そして、

 「真理奈…そろそろ起きろ、時間だぞ」

 「…んー…信哉ぁ…」

 普段、それも自分にしか見せない表情で甘える真理奈に

 信哉は少しクラクラしたが、それでも少し揺さぶるようにして

 「起きろって、そろそろ朝食だ、それにお前の部屋に誰か行ったらどうする」

 「んー、それは困る…」

 そう言って何とか体を起こす真理奈。

 その途端に纏っていた毛布がするっと落ちて信哉は慌てて目をそむける。

 いや、別に昨夜、堪能したわけだが本人が意識していない分

 (昨日とはまた別なんだよ!)

 などと自分自身に言い聞かせた。

 ゴソゴソと絹擦れの音がして真理奈が服を着たのを確認すると

 「じゃ行こうか」

 「うん」
 
 そう言って真理奈が先に部屋を出た。

 パリン

 続いて出ようとした信哉は腕時計のパネルが割れたことに気がついた。

 「縁起悪いな…」

 そう言いつつ信哉は腕時計を外してベッドのそばのテーブルに置いた。

 今日は火星を出発する日だった。

 そして……











 エクシードブレイブス 第50話

 sudden lose











 ――ノア・シップ
 
 すっかり整備の整った機体の搬入も済み、もう準備はほとんどなくなっていた。

 入り口には月詠やマークたちが最後の挨拶を交わしていた。

 「デニス長官、本当によろしいのですか?」

 月詠は念を押すように尋ねたがデニスの答えは一緒だった。

 「理由はどうあれ、本人達の希望ですからな。それに少しは

  恩返しをさせてください」

 「足手まといにはならんさ、あいつらの戦いを見届けないと

  後味が悪くてな…」

 「それに私自身、地球に気になることがあるんです。どうか
 
  気にしないでください」

 マークとユユは懇願するように月詠に答えた。
 
 二人は月詠に地球での戦いに助力させて欲しいと願い出たのだ。

 事情はあったが善意の協力者に犠牲を出してしまったのでその穴埋めを

 というのが建前であったが、本音は二人がアンリミテッドのメンバーを放っておけない

 という理由の方が大きかった。

 「わかりました、それではデニス長官、マーク・フォークナー、

  ユユ・ミナサキの申し出をありがたく受け取ることにします」

 「うむ、二人ともしっかりな」

 そう言って月詠とデニスは敬礼を交わした。





 ――ノア・シップ リビング

 「何事も無く地球に戻れればいいのだけど…」

 「おいおい、委員長。心配しても疲れるだけだぜ」

 不安そうにそう言った千鶴に武はやんわりというが

 「あのねえ、地球の状況がわからないんだから警戒しておくのは

  必要でしょう?」

 「まあそれについては同感ね。えいえんと、精霊とかはともかく

  R・Gが何故私たちを火星に行かせたか、ってところは疑問だもの」

 千鶴の意見にひかりも乗ってきた。

 「でもひかり、その理由はわかるの?」

 「それがわかれば苦労しないわよ」

 こだまがもっともな意見をぶつけるが一蹴された。

 「ま、何にせよ敵陣に戻るって以上警戒しておく必要はあるだろうな」

 マークにもそう言われ武は返す言葉がなくなってしまった。

 「あ、雪村さん、コーヒーをもらえるかな」

 信哉はカウンターにいた小町にそう言ってコップを差し出す。

 「あ、はーい、ちょっと待ってくださいね」
 
 備え付けのコーヒーメーカーからコーヒーを注ぐ小町。
 
 「はい、どうぞ熱いですから気をつけてくださいね」

 「ああ、ありが…」

 お礼の言葉を言いかけた信哉の頭に



















 『後は…任せたぜ信哉』



















 ガシャン!

 信哉の手はカップを掴むことなく止まってしまった。

 「ご、ごめんなさい緋神さん!」

 小町は自分が私損ねたのだと思い慌てて謝ったが

 「いや、悪い俺の手元が狂ったんだ…」

 そういいつつも信哉はどこか上の空だった。

 「ちょっと緋神、大丈夫なの? 顔真っ青だよ」

 信哉の状態に、つばさもさすがに心配になったかそう聞くが

 「あ、ああ。大丈夫だ」

 そういいつつ信哉は慌ててブリッジへと走った。

 「おい、緋神!?」

 誰かの声が背中から聞こえた気がしたが止まらなかった。

 だが、その途中艦内に緊急連絡が響き渡った。

 「緊急連絡! 緊急連絡! 地上にて交戦中と思われるカノン・バンガードからの

  連絡が途絶えた!」

 それだけでもただ事ではないのに、
 
 「直前の連絡の内容は、連邦内部での何らかのトラブルと…」

 その言葉は、

 皆に恐ろしい動揺を走らせたのだった。










 「相沢祐一の死亡…確認」











 地球で何が起こったのか。

 祐一の死亡。

 連邦内で起きた戦い。

 そして地球での戦いの行方はどうなったのか?

 さまざまな疑問が浮かんだが、それに答えてくれるはずの

 カノン・バンガードには連絡が取れない。

 不安を抱えながらも、アンリミテッドのメンバーは

 地球へと急ぐのだった。
 
 デュランダルが必死で健闘を続けているはずの蒼き星へ…

                          第2部 火星編 完


後書き 局長   「終わった…」 信哉   「まだ終わってないだろ…第2部だ終わったのは」 純夏   「すごいとこで切ってるね…」 冥夜   「うむ、作者の命知らず振りが目に取るようにわかるな」 局長   「ま、これで怒涛の地球編が盛り上がるでしょ?」 往人   「盛り上がるだろうが…」 観鈴   「いいのかなあ…」 局長   「激動の第3部! 地球編!」 全員   「ご期待ください!!」    SSのTOPに戻る