時は宇宙からの信哉との通信のときに戻る…。 「死ぬなよ」 『お前もな』 そういい残して祐一は通信を切った。 「クラウ・ソラスに使われているメタトロンをそのまま武器にね…。 相変わらずぶっ飛んだ発想をする奴だ」 もっとも人のことは言えないか、と祐一は自嘲した。 刻まれた「四つの神」の四番目。 それを意味する自分の力、念動力。 「…もっとも俺が存在する意味はもうないんだろうけどな…」 祐一は窓から外の景色を見た。 格子のついた窓から幾度と無く外へ帰ることを望んだ日々。 一足早く、そこへ飛び出して行ったかつての同類たち。 今は彼らが自分達に牙を向く。 「…あいつらが何を考えているのかは知らないが負けるわけにはいかない」 そう決意を固め祐一は誰もいない冷たい廊下を歩く。 向かう先は、聖のラボ。 エクシードブレイブス 第51話 何かを求めて ――聖のラボ 「君の設計には問題は無い。あるとすればそれは君自身の能力の問題だ」 ざっと設計書に目を通して聖はそう言った。 「俺の?」 「元々フラムベルクには機体性能の補助としてT−LINKシステムがすでに 導入されている。そこへ…こいつをつけるとなると…計算では 君にかかる負担が3倍近くに増えるはずだ」 「なるほど、パワーアップにはつきものの数字ですね」 「茶化すんじゃない。君自身わかっているはずだ、君は…」 「ええ、だからこそギリギリまで力の活用が可能な物を設計したんですよ」 その言葉にふう、とため息をついた聖。 どうやら何を言っても無駄と悟ったようだ。 「わかった、構想もまとまっているからそれほど作業に時間はかかるまい。 多少時間をもらえばすぐに出来るだろう」 「わかりました、お願いします」 そういい残し、祐一は聖のラボを出た。 その背中を見ながら聖は呟いた。 「四つの神…か。だが人が神を名乗るなど許されると言うのだろうか…」 もしくは、あまりに優れた人を「神」とそう呼ぶのだろうか。 聖の自問に答えを投げかける者は誰もいなかった。 ――倉田研究所 リビング 「あ、祐一〜」 リビングに戻った祐一を出迎えたのは名雪たちと他の休憩を取っている メンバーだった。 「どこに行ってたの、祐一君」 「ああ霧島先生に相談があって」 あゆの問いかけに祐一は無難な受け答えをした。 「何だよ、また機体の調整か?」 そこに浩平が口を挟む。 「ああ、決定的な攻撃力が欲しくてな、信哉と前から相談してた 案を渡してきた」 「へえ、何なんだそれは?」 「ステークだよ」 「ステーク…?」 その話を聞いていたほかのメンバーも首を捻っている。 そこへ、石橋が、 「杭打ち機のことだ。相沢の機体、間違っていなければ元となった機体だが、 アルトアイゼンではないか?」 「ええそうですよ教官」 「あるとあいぜん…?」 そこで黙って聞いていた真琴が疑問の声を上げた。 説明を買って出たのは雪見だった。 「パーソナルトルーパーの元祖、ゲシュンペストのMARKVの名を 本当はもらうはずだった試験機のコードネームよ。 パイロットに依存しすぎる操縦性と、あまりに極端なコンセプトの機体で 量産は打ち切られたってデータがあるの」 「アザゼルでは、逆にそういうのに目をつけてたんだよ。 パイロットに依存するなら、見合うだけのパイロットを用意すればいい…ってね」 祐一はやれやれと言いたげに首を振って席に着いた。 さらに浩平が続ける。 「で、お前の機体にもその杭打ち機を取り付けるのか?」 「いや、リボルビングステークそのものを取り付けると機動性が落ちるんだ。 何しろMSを軽く貫けるくらい巨大だからな。 原型のアルトアイゼンほど出力が無いからそれだと本末転倒だ」 「じゃ、どうするんだよ」 「念動フィールドを応用した『T−LINKステーク』それが俺の考えた案だ」 「ぶっ!」 そこまで黙って聞いてた住井がコーヒーを噴出した。 「ちょっと住井! きったないわね!」 正面に座っていた留美は慌ててその場から立った。 幸いコーヒーは留美にはかからなかったようである。 「お、おい相沢! リボルビングステーク並みのフィールド…っつーか 念動ステークってことか!?」 「ああ、質量、硬度、条件は俺の能力なら十分にこなせる。 念動なら重さは無い。ステークの発射機構自体はさほど重くも無いしな。 だが硬度とスピードだけで原型となったステークの威力は十分出せるはずだ」 「無茶苦茶だ…」 住井は頭を抱えた。 「次にあいつに会ったときに負けるわけにはいかないからな…それに」 「それに?」 浩平に尋ねられて少し困ったような表情で祐一は、 「その…俺にフラムベルクの操縦法を教えてくれた人がアルトアイゼンに乗ってたんだ。 研究所時代、俺と信哉が世話になった恩人でさ。実験動物を扱うような研究員の中で あの人だけは別だったな。ある意味二年もあそこで生活できたのはあの人のおかげだ」 「へえ、どんな人なの?」 雪見が興味を持ったのかさらに突っ込んで聞いてくる。 「普段は研究員だから知的な感じなんだけど、パイロットのときは 逆に積極的な姿勢を見せる人だったな、特に銃弾をかいくぐってステークを 叩きつけるあの技術はすごかった」 思い出すように祐一は答えた。 ふと、その時祐一は思い出した。 「そうそう、真琴と名前が一緒なんだ。すごい偶然だろ? 沢渡マコト、って言ってカタカナで名前を書くんだけどさ」 「あう、真琴と同じ…?」 「あれ? ってことはその人は女性なんですか?」 栞は疑問に思い祐一に尋ねた。 「ああ、そうだけど?」 「ふーん…そうですか」 栞はなにやらぶつぶつと言いながら考え出した。 祐一はその目になにやら不穏な雰囲気が合ったことに気がついていない。 「何にせよ早く完成するといいな」 「そうね、楽観できる状況でもないからね…」 その後はみな思い思いに雑談を交わし始めお開きとなった。 そんな中祐一はふと窓から懐かしい人の顔を思い浮かべていた。 (大丈夫かな…マコトさん) 空に問いかけても返ってくる答えはない。 いつか、アザゼルにたどり着いたとき、その答えを知ることが出来る。 そう信じるしか今の祐一にはなかった。 ――????? 「何、ノアシップが宇宙へと向かっただと」 「はい、先ほど」 暗闇の中、男は椅子に腰掛ける男にそう告げた。 「ふん行き先は火星か。構わん行かせてやれ。 どのみち奴らではバフラムを破ることなど出来ん」 「しかしあの船にはどうやら「剣」が乗っているらしいのですが…」 「ほう…第二の「剣」か…だが奴一人で戦局が傾くわけでもあるまい。 第四の「聖杯」も所詮出来損ない。我らの計画になんら支障はない」 「はっ…」 「それよりも第三の「愚者」の行方はどうなっておる?」 「どうやらR・Gについたようです」 「ふん、彼奴らか…よい今は一刻も早く「器」の育成を進めろ。 プロジェクト『ゴッドフォース』も第二段階に移れ」 「了解いたしました」 そういい残し男は部屋を出た。 「人は神の領域に到達することは出来ぬ、か。 笑わせる、ならば神を作り出したのが人だったならばどうだというのだ」 差し込んだ月の光が一瞬シルエットを浮かび上がらせる。 「ワシが証明して見せようではないか…この世に神などおらんことをな おるとすればそうそれは…」 初老の男はそう呟き低く笑い出した。 己に絶対の自信のある、見ただけで伝わる笑いを。 「このワシじゃ。神を手中に収め、神の意思を作り上げることの出来る ワシこそがこの宇宙で唯一の神と呼べるべき存在よ」 初老の男は高々と笑った。 その声は部屋中に響き渡るほどに大きく、強かった。 続く SSのTOPに戻る