――日本近郊の海 それは誰にも見つかることは無く、異様に発達した植物が覆う無人島。 その奥深くに、彼はいた。 「機は熟した…そろそろ仕掛けようか」 朝陽はその表情を変えずにそう呟いた。 「…同じ種族同士で延々と争いを続け、大地を傷つけ水を汚し大気を犯す。 人間などにもはや存在意義は無い。守人としての責務を果たす時が来た」 空を見上げて、彼は思ったまぶしい、と。 気がつけば夜が明けて朝日の差す時間になっていた。 自分がもっとも好きな時間であった。 「いつもいつも人間は最後に裏切るんだ、何年も何百年もその繰り返しだった。 偽善と建前だけを口にし、決して実らない行為を繰り返す。 何度、裏切られたことか」 彼の胸に去来する一人の少年。 坂を下り、人としての生を望んだかつての同類。 「教えてやるさ、いかにあがこうとも所詮ヒトなどという存在が どれだけ無力で愚かな生き物だということをな」 彼は気づいていない。 その胸を焦がす怒りという想いですら、ヒトが抱く感情であり、 常に一歩引いた傍観者であった彼が行動を起こしていると言うことが どれだけ大きな変化だったのか。 彼は今は気づかない エクシードブレイブス 第52話 開戦! R・G!! ――倉田研究所 カノンバンガード それは突然の警報から始まった。 ビーッビーッ! 「あらあら、随分突然ですね」 秋子はさほど動じた風も無い。 大物なのかのんきなのか…彼女を知る人物なら まず間違いなく前者と答えるだろう。 「水瀬艦長、数機の機動兵器の地球への降下を確認しました」 女性の妙齢のオペレーター、有馬早紀が振り返りざまにそう言った。 水瀬秋子の右腕、とまで言わしめたベテランのオペレーターで 作戦指揮、情報管理、現状把握能力など頭脳面に関しては 秋子も一目置くほどである。 ロングのストレートヘアによく通る声に、少々きつめの視線だが美人である。 ちなみに年齢は23。 「随分いきなりですね、連邦のレーダーには…引っかからないでしょうね。 宇宙の通信関係はすでにR・Gに掌握されているでしょうから」 大部分の通信関係の主要衛星はほぼ宇宙にある。 R・Gはそれら通信手段、情報掌握効果も考えていち早く 宇宙を制したのである。 それを考えたR・G総帥がまた祐一達と歳の変わらない少年だというのだから 驚きである。 「識別コードは不明です。但し質量、反応からMSとPTであることが 判明しました」 「ということはお客さんはR・Gの方のようですね。数は?」 「PTが二機、MSが数機といった所ですね。偵察にしては数が多すぎますし 大気圏突入時の反応を隠しておきながら、着陸時の振動で引っかかるなんて…」 あらあら、と秋子は頬を手にやって早紀を見た。 「さすが有馬さんですね。私もそれを考えていました」 「陽動かそれとも別の目的か…いずれにせよ動かないわけにはいきませんが…」 「着陸点はどの辺でしょうか?」 「太平洋沖の小島のようです、あそこは無人島で特に重要な機関もありませんが…」 秋子は地図を見ながらなにやら考え出した。 (仮に罠や陽動だとしても陸戦機を主体に編成を行えば後手に回る 可能性を防げますね…) やがて考えがまとまったらしくマイクを掴んで館内放送を始めた。 「全クルーに連絡、全クルーに連絡これより本館は太平洋沖に向かいます。 至急発進準備、繰り返す…」 こうしてカノンバンガードははるか海の沖へと出発することになったのである。 ――太平洋沖小島 周囲をすぐに見渡せばそれほど広くは無い小島である。 特に周囲を遮るほどの深い森林と呼べるようなものも無くまばらに 樹木と草地が広がる何も無い島。 上陸したのは、北川たちR・Gである。 顔ぶれは北川のクロムビルガーを筆頭に、重装備のMSが数機整った陣形を 組んでいる。 「随分と多彩なMSを抱えるようになったな…ますますネオ・ジオンぽい」 「北川さん、不穏当な発言は慎んだほうがよろしいですよ」 北川をたしなめたのは隣に控えるPTに乗った少女である。 クロムビルガーと対を成すテスラドライブを4機積んだ高速射撃型 クロムファルケンである。 「とは言うが、さすがにあのドーベンウルフの部隊はさすがにな… 他に表現のしようがない」 北川は後ろに控えるドーベンウルフをモニターに映した。 さほど運動性は高くないが、対艦ミサイルを筆頭にメガランチャーや インコムなど高火力のMSである。 市街戦などの乱戦には向かないが、数をそろえて迎撃戦という待ち伏せには かなり相手をするのが面倒だ、懐に入りにくいのだから。 「確かに、理想の元に殉じたという意味ではR・Gもネオジオンも 変わらないでしょうが…」 「理想ねえ…そんな高尚なもんか?」 「北川さん」 「わかったよそう睨むなよ天野」 天野美汐、北川のパートナーの少女の名だ。 生真面目で少々おばさんくさいとは北川の弁。 「はあ…ここに来て結構経ちますが北川さんだけはよくわかりません…」 「謎の多い男だからな俺は」 「…あまりふざけているとまた反感を買いますよ」 「それは美坂のことか? ほっとけほっとけ、あいつは本当連邦に対する 不満だらけだからな。俺がのんきに事を進めるのが気に入らないんだろ」 北川は首を振ってやれやれといわんばかりのポーズを取った。 その様子に美汐は、 「…どうして北川さんはR・Gにいるのですか?」 「成り行きだ。…わかった睨むな本当の事を言うから」 ようやく美汐からただならぬプレッシャーを感じたか北川は 真面目に返答した。 「半分は久瀬の付き合いだ。半分は俺個人の問題だな」 「あまり説明になってないとお気づきですか」 「俺に深く関わるな、特にR・Gに信じるものがあるならな」 「…北川さん?」 「客観的に見て久瀬のやろうとしていることは間違いじゃない。 一つの答えではある。だがそれは久瀬の答えであって俺の答えではない。 だから天野。自分が信じる道があるならお前はそこを歩け。 俺に関わるんじゃない」 「北川さん貴方は…」 ビービー 二人のコンソールに同時に警報がなる。 レーダーは戦艦を捉えたらしい。 「おいでなすったな…天野、戦闘準備だ。今回は機動テストみたいなもんだ。 無理せず機体の限界が来たらポッドで脱出するよう命令しろ」 「了解です」 美汐は命令を反復しながら、先ほどの北川の意味深な発言を 心の中で復唱していた…。 ――カノンバンガード・ブリッジ 「やはりR・Gのようですね…」 秋子は小島に部隊を展開するのを見下ろしながらそう言った。 ところがその瞬間、 ドドン! 連続した衝撃がカノンバンガードを襲った。 「今の攻撃は!?」 「対艦ミサイルのようです! レーダーが補足していません! 他、いくつかの計器類にも異常が!」 どうやら自分たちは誘い出されたらしいと秋子は認識した。 「接近中断! 各機第一級戦闘配備!」 秋子の号令で、出撃準備を整えていた機体がバラバラと降下した。 (…これはどうやらR・Gの戦闘テストのようですね。 これでは思うように軍艦が接近できませんから…) ――小島 「全機、散開し乗り込んでくる機体を確固撃破しろ」 北川はカノン・バンガードへの攻撃を中止する命令を出した。 戦局を読むのが早いのも北川の強さの一つである。 「天野、お前は遊撃に回れ。出来るだけ動きの早い相手をけん制しろ」 「北川さんは?」 天野の問いに、北川はふっと笑って答えた。 「俺はある男を相手にするだけで手一杯だ」 祐一はモニターに映った一つの機体に目を留めた。 遠めにもわかる黒と白のカラーの機体。 それはまるで自分を誘っているようにすら祐一には思えた。 「悪い、皆! ちょっと借りのある相手を見つけた、他の奴は任せた!」 開口一番祐一はそう叫んだ。 「ちょ、ちょっと祐一さん!」 「何処行くの! 祐一!」 栞と名雪の静止も聞かず祐一のフラムベルクは真っ直ぐに 因縁のある機体に向かって飛んでいく。 すぐにオープンで通信を開いて祐一は怒鳴った。 「北川! この間の借りをこいつで返すぜ!」 「来たか、相沢…!」 フラムベルクとクロムビルガーの距離が詰まる。 お互いの武器、北川のビルガーにはクラッシャー、 そして祐一のフラムベルクはセイバーだと北川は思っていた。 だが、その時フラムベルクの右手に見慣れないリボルバーがついているのが 目に止まった。いや決して見覚えが無かったわけではない。 (…あれは…!? しかし肝心の弾が…) だがそう思った北川の目の前にはエネルギーの塊で作られた ステークが眼前に迫っていた。 北川は咄嗟に距離を取ろうとするが遅い。 一旦攻めの姿勢に入り、かつ速攻性の高いステークからは いかに機動重視のクロムビルガーといえど避けるのは容易ではない。 「どんな敵だろうと…撃ち貫くのみ!!」 「ちぃっ!!」 相殺しようとビルガーもクラッシャーを突き出すが若干遅い! 「T−リボルビングステーク! いけぇ!!」 だが、掠めたはさみの先が何とかステークの進行方向を捻じ曲げ、 ステークは虚しく地面に突き刺さった。 「…武器どころか台詞まで流用か…ひねりが無いぞ相沢」 「俺のあこがれだからな、マコトさんは」 「だが腕はどうかな? あの人にあやかれるのか?」 「それはこれから見せてやるよ」 フラムベルクは右腕を引くようにして体勢を整えた。 一方ビルガーはすでにウイングを展開し高速飛行モードに切り替わっている。 「おいおいサイコドライバーってあんな武器まで使えるのかよ…」 浩平が呆れたように呟いた。 「念動力でフィールドを形成できるくらいですからLINKシステムを 応用すれば理論上は可能なんでしょうけど…無茶ですよね」 栞も呆れたように賛同した。 「…浩平、それよりも敵の部隊も動いたようです」 「そうだな、茜、後方からファンネルで落とすぞ。 あいつら思ったより射程が長い」 「…はい」 E・ガンダムとライトニングガンダムは並んでファンネルを撃ち出した。 「シンクロは任せろ! いくぞ…!」 「浩平、チャンスです」 ファンネルの軌道上に、三機の敵影を捕らえた茜。 「逃げられると思うなよ! ダブル・E・ファンネル!!」 ズガガガガガガ!! 茜のファンネルも浩平の力のよってE・ファンネル化することを利用した 広範囲攻撃である。 まるで見えない空間からのメガ粒子砲の雨である。 それにより固まっていた部隊は散り散りに散開した。 「よし、折原の攻撃で敵機が散開した! こちらも各個撃破しろ!!」 石橋がすかさず号令を飛ばし、 「了解!」 誰とも言わず、返事をし近場の敵を追う形になった。 ドーベンウルフの部隊も一度は散開させられたものの、長距離砲を主体に持ち込むつもりらしい。 デュランダルチームはガードに優れた機体が一気に懐に飛び込む作戦と行った感じで 小島全体に戦闘区域が広がっていった。 しかし、彼らは気づいていなかった。 この小島に着々と悪意あるものが迫っていることを。 続く SSのTOPに戻る