――宇宙 カノン・バンガード周辺

 「まずいわね、もう始まってるわ」

 言いながら雪見は愛機のディープスノーの出力を上げた。

 現存戦力では数の上で不利になることは想像に難くない。

 そんな彼女の機体のレーダーに一機の反応があった。
 
 識別信号には見覚えがあった。

  「そう…彼女も間に合ったのね」

 雪見はふっと表情を和ませると再び愛機のスピードを上げた。

 いつからだったろう? 当たり前のようにパイロットになったのは

 力を得て、すでに数え切れないほどの敵を撃墜しそれでも

 変わらない現実に嫌気がさしたこともある。

 パイロットとしてPTに乗るのがいやになったことも。

 だがそんなとき、親友の一言が深く胸に突き刺さったのだ。

 『雪ちゃんは…誰かを守ることができるんだよ

  私みたいに助けるだけじゃなくて…守ることが』

 そのとき雪見は本当の意味で戦う決意をした。

 そうだ、誰もがこの場に立てるわけではない。

 好き好んで戦場に出るわけではないという意味ではなく。

 それを望んでもかなえる力を持たないものがいるのだと。

 だから自分にできる精一杯で頑張っている親友に恥じないために

 「みんな待ってて、すぐに行くから!」

 彼女は今日も果敢に戦場に向かう。

 己が果たすべき責務のために。








 エクシードブレイブス 第6話

 出撃! E・ガンダム!!











 カノン・バンガードの周りを飛ぶように配置されたMS部隊。

 敵は層の薄い部分を中心に狙いを定め一点突破を狙っている。

 ところが敵の勢力はそれほど優勢でもなかった。

 何故なら、カノン・バンガードが的確に味方の間を縫って砲撃をしてくるからである。

 目の前の敵だけに集中していると突然視界が砲撃によって奪われ動きが止まる。
 
 そこを確固撃破されR・Gの部隊の侵攻は思いのほか進まなかった。

 その様子を見ていた指揮官らしき人物は唇を噛んだ。

 「ちっ…たかがあの程度の少数部隊も落とせねえのかよ…」

 次々と名雪たちに撃墜されるギラ・ドーガを見て彼はあきらかに

 苛立ちを感じていた。

 「折原はいないようだな…ふん…まあいい出てくるまで
 
  少し暇つぶしでもするか!」

 そしてその機体は動きだす。ただ不可思議なのは

 どちらの手にも妙な装備がつけられていた点である。

 強いて言うならば手甲のようなおよそMSには不釣合いなものが…。







 その性能を生かして、真琴の機体である改良型ガンダムF91は

 スピードと一見無謀とも思える接近戦で敵のパイロットを圧倒していた。

 本来、ガンダムはあまり近接戦闘を想定してはいない。

 通常はビームライフルの打ち合いと機動力による戦闘が基本だ。

 ところが真琴はその銃弾の雨を無傷でかいくぐり、相手との距離を一気につめ

 ビームサーベルや、左手の装甲破壊用の爪で攻撃しているのだから

 敵はおろか味方もびっくりだった。

 ただ二人、真琴のシュミレーターの相手だった名雪と秋子を除いては。

 「さあ、次は誰!?」

 とても初陣とは思えない戦いっぷりを見せる真琴。

 だが、そんな彼女を両側から同時に敵は仕掛けてきた。

 「あうっ、左右同時!?」

 真琴は一瞬照準をどちらに合わせるか迷ったが、

 「真琴! 右に行って!」

 そこへ後方から名雪のガンダム・ステイメンが援護射撃を入れる。

 真琴は迷いもせず右のギラ・ドーガにビームサーベルの一撃を入れた。

 その攻撃はモロに機体を貫きギラ・ドーガは爆発を始めた。

 「し、しまった、脱出を!!」

 敵パイロットが慌てて脱出装置を起動させ離脱する。

 宇宙にまた一つ機体が散った。

 そして左から真琴を狙っていた機体はというと

 こちらもまたすでに名雪によって撃墜されていた。

 「危なかったね〜真琴」

 戦闘中とは思えないのんきさで名雪は言った。

 まるで真琴に犬か猫が近づいてきたので追い払った後で言うかのように。

 「ありがとうなゆ姉。ごめん真琴、ちょっと調子に乗っちゃった」
 
 「いいよ、でも次は私から離れちゃダメだよ」

 「あう、うん!」
 
 なんというか重ね重ね言うがやはり戦場とは思えない。

 と、そこへ一機のPTが接近してきた。

 雪見のディープスノーである。

 「あら、慌ててきたけど大丈夫そうね」

 「深山さん」

 後方からは希望の乗ったメタスもついてきた。

 「あれ? なゆちゃん、もう終わったの?」

 「うん、真琴が頑張ってくれたおかげだよ〜」

 そんな会話を希望と名雪がしていたときに、

 「うぐぅ、みんな! 気をつけてこっちに接近してくる機体がたくさんあるよ!」

 あゆの悲鳴が通信で聞こえた。

 「識別信号パターン…ドーガ系…でもこれは明らかに武装が変ね…」
 
 秋子のつぶやきも聞こえる。

 そこへ多数のドーガ系の機体が現れる。

 おそらく先ほどの部隊は様子見の先発部隊、あるいは捨て駒だったのだろう。
 
 中央に同型だがカラーリングの違う機体が見えた。

 あの機体の主が隊長機であろうか?
 
 その場にいた4人はすぐさまフォーメーションを取る。

 「折原はいないんだな…ちょうどいい、この試作機の実力

  お前らで確かめさえてもらおうか!!」

 その台詞を合図にドーガたちは次々と襲い掛かってきた。

 だが奇妙なのは両手がほとんどがら空きなことだった。

 「何、素手…っていうのかしら? 何も武器を持ってないの?」

 雪見は少し疑問に思ったがカウンターを入れようとロシュセイバーを手に

 相手の機体との間合いを計る。
 
 だがその一瞬で相手の両手に見たこともないビームサーベルが現れた。

 「えっ!?」

 咄嗟のことで機体をそらすが、両手の攻撃はかわせない。

 右手の攻撃を右に移動することで避けたが、左手のサーベルは

 ディープスノーの腹部を見事に掠めた。

 「きゃあっ!!」

 見た目よりあった威力にディープスノーはかなり弾き飛ばされた。

 「はっはっは! どうだ! かつてのネオ・ジオンのMSのデータから作り出した

  このレイ・ドーガの力は!!」

 敵パイロットはここぞとばかりに叫ぶ。

 雪見は機体のダメージを確認して通信を開いた。

 「みんな気をつけて! 相手にはサーベル…いいえビームカタールって

  いったほうがいいかしらね。とにかく厄介な武器を持っているわ!」

 カタール…暗殺者ご用達の武器で両手に手甲のようにはめることで使用する。

 突き刺すことをメインに作られているが、斬ることも可能。

 両手で一対のものが多く、その殺傷力はきわめて高い。

 それをビーム上で構成したのはおそらくR・Gが初めてではないだろうか?

 接近戦を主体に置くならば、おそらくビームサーベルよりも攻撃力は上であろう。

 「わかったよ!」
 
 「あうっ、接近戦なら負けないから!」

 名雪と真琴の返事は勇ましかったが、相手の機体は当然のことながら

 機動性は高い。

 真琴はともかく遠距離主体の名雪では懐に飛びこまれると危うい。

 雪見は名雪のフォローに回ろうとした。

 だが、その動きは2体のレイ・ドーガに阻まれた。

 「行かせんぞ!」

 「邪魔よ! どきなさい!!」

 そういって雪見が再びロシュセイバーを振りかざしたとき、

 ズドオオオン!!

 突然、レイ・ドーガは後方から射撃を受けて吹っ飛んでいった。

 「な、何奴!?」

 見ればかなりの速度だがかすかに見える白い機体。

 メインの砲身からツインレーザーを相手の射程外から撃ちまくり

 すぐさま相手の視界から消えるそんな闇を切り裂くような白い機体。

 「あはは〜ここは佐祐理と舞にお任せください」

 「…任せて」

 倉田佐祐理。そしてパートナーの川澄舞が乗るビックバイパー・OFだった。

 バフラム戦役でLEVというOFより劣る性能の機体でありながら、
 
 その技術と操縦者の実力によってOFと同等の戦果を上げた機体をOF化した機体だった。

 機動性にさらに磨きがかかっている機体でそれをとらえるのは並大抵のことではできない。

 「それに援軍は佐祐理たちだけではありませんよ」

 カノン・バンガードのほうから猛スピードでこちらに向かってくる白い機体。

 ガンダムだった。

 「悪い、みんな待たせたな」

 「折原君!」
 
 希望が声を上げた。

 そう、そのガンダムに乗っているのは浩平である。

 「折原…折原だなあ!!」

 浩平を確認するとその隊長は声を荒げた。

 「その声…南? 南か?」

 「ようやく会えたなあ…お前がこの軍に所属してることを知ってから

  探したんだぜえ…」

 南の声にはやたら狂気じみたものが混じっている。

 「俺を探していたのか…? …茜のことか」

 「そうだ! 俺はお前を倒し、里村さんを手に入れる!」

 南の発言とは裏腹にあきれるように浩平は言った。

 「お前…ただそれだけのために戦場に立ってんのかよ…」

 「俺に…俺にとってはお前を殺す大義名分があればどこだっていいんだよ!!」
 
 「ふざけんな!! こんな時にそんなちっぽけな理由で戦場にいるんじゃねえ!!」

 浩平は珍しく怒声を上げた。

 だがそんな言葉も南には届かない。

 彼にはもう浩平を殺すということしかないから。

 「何で…何でお前ばかりが…一年も消えてたのに…誰も思い出さなかったのに…

  帰ってきたら…お前ばかりが…お前が…」

 南のレイ・ドーガがビームカタールを起動する。

 その両手に握られたのは彼の狂気の象徴。

 「お前を殺す! お前がいる限り俺は…!!」

 「自分が一歩を踏み出せないのを他人のせいにするなあ!!」

 浩平はビームライフルをレイ・ドーガに向けて放った!!

 ビームはまっすぐにレイ・ドーガに向かう。

 「ふんそんな攻撃…!?」

 だが南には予想外のことが起きた。

 さっきまで見えたはずのビームが消えたのだ。

 真正面にいたのに瞬きの間に消えてしまった。

 だがビームは消えていなかった、何故なら

 ドウン!!

 「ぐあっ!! な、何だとぉ!?」

 レイ・ドーガを直撃したからだ。

 防御すらできなかったのでダメージは結構大きい。

 「折原…お前…」

 「まだ上手く使いこなせないが…見せてやるよ俺のE・ガンダムの力をな!!」

 
                                   続く
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