――カノン・バンガード ブリッジ 「艦長! 見えました堕ちた聖域です!」 早紀が声高に告げる。秋子はモニターの表示を見た。 聖域と呼ばれた基地、天高くそびえるアンテナを中央に 要塞とも呼べる小さな島。 モニターに映る小さな光点が断続的に現れていることは 戦闘が継続している証拠だ。 「総員、第一級戦闘配備! 陸戦型はカタパルトにて待機、 空戦型は即座に出撃!」 さらに秋子は別の回線も開いた。 「主砲のスタンバイも開始してください、射程距離内に入り次第 あのアンテナを直接狙います!」 「了解!」 オペレーターたちは即座に動きカタカタとコンソールをいじり 変化する状況を伝えていく。 「主砲エネルギーチャージ済み! 射程距離内における敵の攻撃の 範囲をモニターに表示します!」 「敵攻撃に対するシールド効率のシミュレートを開始。 攻撃対象への効果シミュレートも同時に開始します」 「隕石郡、臨界点突破までの時間出ました! 残り三時間です!」 「敵残存戦力、計測不可! 基地の周りの熱源反応及び機体反応を探ることが 出来ません!」 次々と入る情報を正確に素早く整理していく秋子。 (ここで失敗することは出来ませんからね…) それは地球の滅亡を意味するからである。 エクシードブレイブス 第61話 星、降り注ぐ時、迫る カノン・バンガードの船体はもう堕ちた聖域を目視で捕らえられるほどの 距離にまで到達していた。 「主砲射程内に入りました!」 「敵基地より砲撃を確認! 三発来ます!」 秋子は咄嗟に判断して叫んだ。 「発射姿勢を維持しながら回避行動! ポイント103、224へ!」 「了解!」 号令と共にカノン・バンガードは進路を大きく右斜め前へと変更する。 先ほどまで船があった場所に三連のビーム砲が突き抜けていく。 「敵攻撃回避成功!」 「では…メガ粒子砲、発射!」 勢いよく手を振った秋子の合図と共にカノン・バンガードに取り付けられた 主砲が基地のアンテナへと向けられる。 そして、耳をつんざく轟音と共に粒子砲が放たれた。 ズドオオオオオ!! バババババババ!! だが、アンテナまで到達するかに見えたビームは、 その周辺の空域で障壁のようなものに遮られ霧散した。 「アンテナ健在! 敵基地への被害無しです!」 「先ほど着弾点にIフィールドと同質と思われるエネルギー反応を確認! 解析急ぎます!」 オペレーターたちはこのような状況でもてきぱきと動く。 それこそが彼らの仕事だから。 とはいえ、第一撃を見事に外した秋子としてはこのまま引き下がるわけには いかない。 (どうやら基地とアンテナは別の回路で障壁をコントロールしているようですね) ただ黙って秋子は解析される情報が映し出されるモニターを眺めていた。 ――堕ちた聖域 司令部 「やはりアンテナを狙ってきたか。さすがは水瀬艦長。 黄昏色の悪夢の二つ名はやはり伊達ではないね」 まるでゲームのやり取りのように久瀬は愉快そうに微笑んだ。 モニターに光点で表示されている自軍がややアンテナの周囲に固まりだしたのを 見ると、久瀬はマイクを掴み、 「アンテナの周囲を固める必要はない。それよりも敵母艦より現れる 増援に対処しろ。散開し、敵主砲の的にならないよう各個撃破するんだ」 『了解しました!』 状況を的確に見極め指示を飛ばす久瀬。 彼自身は未だその席から動こうとはしない。 さも自分の出番はまだだ、と言わんばかりに。 ――カノン・バンガード ブリッジ 「水瀬艦長、すでに上陸可能地点に到達しましたが…」 秋子はまだ考えていた。 ここでの戦闘はアンテナが全てだ。 あれを臨界点突破の時間までR・Gが守りきるか? それよりも前にこちらがあれを破壊するか? 全てはその一点に集中している。 考えに考えた末、秋子はマイクを掴んだ。 「住井さん、七瀬さん、そして石橋少佐。よく聞いてください 貴方方にアンテナのバリアの解除の任務を与えます」 ガガ… すぐに住井からの通信がブリッジに入った。 『…内部から、ですね?』 「その通りです。敵基地内のコントロールセンターを占拠、 のちにバリアを解除…基地内のデータは天野さんから預かっています。 転送しますので受け取ってください』 『水瀬艦長、自分は殿ということですね?』 石橋からの通信に秋子は、 「ええ、すみませんが二人のサポートは少佐にお願いしたいのです」 『承知した。七瀬、後ろのことは気にするなお前はお前のやれることを やってこい』 『はいっ! 先生!』 七瀬の元気のいい返事に、心なしか秋子の表情が緩む。 「障壁の消失を確認すると同時にもう一度主砲による 攻撃を行います。貴方達は目標達成後に母艦に戻ってください」 『了解!』 ピシュン 通信が切れ、秋子は再びモニターに目を向けた。 「各機出撃!」 その一声と同時にいっせいにカノン・バンガードから 多数のスーパーロボットたちが出撃した。 ――堕ちた聖域 先陣を切ったのは浩平のHi−E・ガンダムだった。 深山のディープスノーがそれに続く。 そしてその後ろから六枚羽のガンダム、ガンダムセラフがついてくる。 が、その両肩にはロングレンジキャノンなどが取り付けられ 以前の姿よりも重装備である。 にも関わらず機動力が高いのはやはり念動フィールドで形成された 翼による推進力が高いからだろうか? 「おい、月宮。随分ごつい装備だな」 「う、うん。ちょっと扱いにくいけどアサルトバスターパーツって 言うんだって」 「遠距離主体に追加武装、ついでに実弾とビーム系の両方か。 頼りにしてよさそうね」 「うん、ボク頑張るよ!」 「そうだな、とりあえず敵陣の真っ只中まで切り込むか。 地上からは茜や桜井が基地の対空砲を破壊して回ってるはずだ」 三機は編隊を組んだまま、激戦の起こっている中央へと飛んでいく。 一方地上からは、舞人を先頭に陸戦タイプの機体が基地内部の 対空砲を破壊しつつ基地の中央へと進軍している。 「っと、やっぱ地上のほうが数が多いな!」 ズガアア! ランスでドーベンウルフを一撃で沈め舞人はぼやく。 「まあまあ、桜井君ぼやかないぼやかない。 とりあえず私たちがやっとかないと空の人たちが危険でしょ?」 ザガアアア! 砲台を一撃で切り裂く詩子の機体。 陸戦タイプグラムナート・ファイター。 グラムザンバーと言う実体剣系の武器を使う近接専用の陸戦タイプの パーツを取り付けたグラムナート。 「へいへい、ま、出来るだけ早めにやっといたほうがお互いに 被害が少なくても済むかもな」 「おっ、いいこと言うね。そうそうその調子」 「ふん、俺は紳士でジェントルメンだからな。 桜坂のダンディ舞人の名は伊達じゃない」 「希望さん〜、彼氏が大嘘ついてるよー」 「ぷじゃけるなよ貴様」 敵地だというのに相変わらずマイペースな二人についに 「舞人君! 敵だらけなんだから真面目にやる!」 「…詩子、ふざけないで下さい」 「「はい…」」 相方の二人の厳しいツッコミが入った。 さてこんな状況下においてもとりあえずはデュランダル側が優勢に事を 進めていた。 原因は、戦力差と言うより作戦の質の違いである。 守りに入らねばならないR・Gにとって敵の基地内の侵入というのは 大きな痛手である。 対してデュランダル側は基地内においてとりあえず破壊行動を行えば ダメージにつながる。 これらの作戦の自由度においてデュランダル側は大きく有利であるといえよう。 そして、 「さて、こっからが本番だ。行くぜ七瀬」 「オッケー、任せなさいって。それじゃ先生行ってきます」 「うむ、ここは任せておけ」 降下部隊にまぎれて住井たちはすでに基地内に潜入していた。 乗ってきたPTやMSの護衛は石橋に頼み、二人は基地の奥 コントロールセンターを目指す。 そこに久瀬の仕掛けた恐るべき罠があることも知らずに…。 続く SSのTOPに戻る