――日本上空

 二機の巨大な機体が空を舞っていた。

 一機は白を基調にし、やや細いラインでともすれば女性を思わせる

 デザインのOF。

 もう一機は無骨なデザインの重厚な機体。
 
 デストロイヤー。

  グルンガストシリーズをメインに霧島研究所で開発された新型。

 二機ともパイロットは女性である。

 「あ、基地が見えてきましたよ真理奈さん」

 「本当、思ったよりも早くついたね栞ちゃん」

 デストロイヤーのパイロット、美坂栞の質問に答えたのは

 OFのパイロット佐伯真理奈。

 彼女は長いロングの髪を手で後ろにやるとモニターを見て答えた。

 この時、真理奈にとって嬉しい誤算があったことを彼女はまだ知らない。

 「あれ? ノア・シップが帰還してますね」

 栞が基地を見てつぶやいた。

 「カノン・バンガードもいるわ。久しぶりにみんな集まってるのかな?」

 確かにいないメンバーもいるが、全員が集まっている。

 そう、彼女も予期していない人物が。








 エクシードブレイブス 第9話

 再会











 ――アンリミテッド本部 ロビー

 「お疲れ様です、真理奈ちゃん、栞ちゃん」

 格納庫から出てロビーで二人を出迎えたのは秋子だった。

 「秋子艦長、予定通り霧島研究所から新型の機体を受け取ってきました」

 二人は敬礼をして報告した。

 秋子は頬に片手をやるポーズで

 「ええ、ご苦労様。しばらく指令はありませんから

  ロビーでみんなと話してきなさい」

 「わかりました」

 二人は仲間たちが談笑しているテーブルに向かって歩いていく。

 そこへ月詠が秋子に近づいていく。

 「OFのアルテミス…そして特機のデストロイヤー…。

  まだ未完成とはいえかなりの可能性を秘めていますね」

 「ええ、さすがは聖博士といったところでしょうか」

 二人はうなずきあってそう言った。

 「それにしてもここ数年…まるで示し合わせたように

  多数の勢力が行動を起こしたのはどういうわけでしょう?

  個人とのかかわりから、地球全体…。

  全部あわせればかなりの数になっています」

 秋子は黙ったまま答えない。

 思案しているのか、それとも口にしたくないのか

 その表情からは思考を読み取れない月詠。

 だが秋子は次の瞬間には笑顔になっていた。

 「そうですね…ですが今はできる限りのことをしましょう。

  あのような子供たちを戦わせるのはつらいですが」

 そういって喧騒を起こしている少年達を見守る秋子の表情は

 母の表情だった。







 ――ロビー

 「よっ、浩平! どうだ? 新型ガンダムの調子は?」
 
 舞人が浩平の肩を叩きながら言った。

 「ああ、まだまだ扱いきれないがあれならいけそうだ。

  お前のほうこそセイクリッドの調子は?」

 「ふ、愚問だね。このダンディ舞人にかかれば

  あのような機体の一つや二つ…」

 「機体操縦にダンディは関係ないでしょ。

  それにこの間、格納庫に入れるときに失敗して

  シャッター破壊したのは誰?」

 ほう、と浩平の顔がにやにやと変わる。

 「ひ、ひひ人の失敗をこのタイミングでばらしやがるかな!?
  
  というかここは黙って俺の顔を立ててくれてもいいだろう!?

  つーかいつの間に人の背後にきてんだよ! ひかり姐さん!」

 「あーら人聞きの悪い。あんたの経歴に傷がつかないよう

  あたしがわざわざ弁護してあげたのに」

 舞人の背後からほほほと、わざとらしく笑うひかり。

 「弁護!? 今のが弁護!? はっはっは。ひかり姐さん

  あなた、顔だけでなく頭までついに悪くなりましたか?
 
  今のは暴露といって人を陥れる卑怯なほう…ぐぼはっ!!」

 ひかりの綺麗な右ストレートが舞人の顔面に炸裂する。

 その場にいたもの全員が

 見事な右だ…と感嘆をもらしたそうな。

 それはともかく、舞人は椅子から転げ落ち激しく床をもんどりうった。

 その様はまさに芸人顔負けだったといえよう。

 「誰が顔だけじゃなくよ!!」

 「す、すいません…性格が壊死しているのを言うのを忘れ…はぶぉっ!?」

 その顔面に椅子が直撃する。

 今度こそ死んだか…? と誰もが思ったという。

 桜井舞人、完全沈黙。

 一瞬場の空気が固まったが、気を取り直してといった感じに

 皆、会話を再会する。

 「…そういえば祐一の奴はどうしたんだ?」

 往人が思い出したようにたずねた。

 「祐一なら名雪たちに捕まってたぞ」

 浩平が答える。

 そう、カノン・バンガードのほうが先に到着していたので

 昇降口で三人娘は待ち構えていたのだった。

 祐一が降りるなり確保といわんばかりの勢いで祐一は

 捕まってしまったのだった。

 今も三人を交互に相手しているのだろう。

 「…そうか」

 往人は少しばかり同情しながらまた別の会話を始めた。

 「そういえばこだまさん。純夏たちはどうしてます?」

 武は談笑していたこだまを捕まえて聞いた。

 「純夏ちゃんたちは戦術機のバージョンアップのために

  霧島研究所で待機しているよ」

 「戦術機のバージョンアップ?」

 武が聞き返すと、

 「今の戦術機じゃね、今後激化する戦闘を勝ち抜くのは無理だって。

  だから現存戦力で戦える、白銀君と御剣さんは一番後になるけど

  戦術機を順番にバージョンアップする計画が持ち上がったんだよ」

 「そっか…」

 確かに火星の相手をするだけでも手一杯だった上に、

 今は多数の勢力を同時に相手をしている状況だ。

 今後を考えるなら当然の計画だといえるな。

 「まあ無事ならいいか…」

 武は少しばかり胸に去来した寂しさをごまかすようにコーヒーをすすった。






 ――廊下

 「あー…そのなんだ…」
 
 祐一は途方にくれていた。

 とてつもなく困っていた。

 すれ違う人全員の視線が痛い。

 それは新顔だからとかそういうレベルではなく。

 「あゆ、真琴、いい加減離れろお前ら」

 「うぐぅ…いやだよ。離したら逃げるもん祐一君」

 「あうー、あゆに賛成」

 読まれている。

 つーかこいつら読心術でも使ってるんかい。

 切実に祐一は思った。

 ああ…誰か助けてくれ、と。

 「うー…あゆちゃん、真琴。祐一困ってるから…いい加減離してあげよう?

  ね?」

 「うぐ…名雪さんが言うなら…」
 
 「なゆ姉が言うなら…仕方ない…かな」

 おずおずと二人は掴んでいた(というよりはひっついていた)祐一の

 右腕と左腕を離した。

 祐一はぐるぐると両腕を回して

 「ふー、ようやく無罪放免か」

 「ボク達は警察官じゃないよ」

 そんな二人のいい合いを見ながらくすくすと名雪は笑い

 「よかった、祐一が変わってなくて」

 「そうか? これでも結構変わったと思うんだけど…」

 んー、と名雪はうなったが

 「うん、変わってるよ。でも私達の知っている部分は

  一緒だってことだよ。雰囲気とかそういうのが」

 「そんなもんかね…」
 
 祐一はじろじろと自分の腕を眺めたりした。

 しばらく歩いていると前方に秋子を発見した祐一。

 「秋子さん、いや艦長か?」

 「あらあら、役職で呼ぶのは作戦行動中だけでいいんですよ。

  昔のように気軽に接してください、祐一さん」

 「わかりました」

 祐一は素直にうなずいた。

 どんな場所にいても自分の知っている姿だった叔母は祐一をいたく安心させた。

 (ああ、名雪たちも同じだってことか)

 今更だったが祐一には名雪たちの気持ちが理解できた。

 「すみません、ご心配をおかけして」

 「何を言ってるんですか、祐一さんのせいじゃありませんよ」

 そういってふわりと優しく頭を撫でてくれる。

 普段なら照れくさくて逃げてしまいそうだが

 今の祐一には、ぬくもりをしばらく忘れていた祐一にはとても心地よかった。








 ――ロビー

 「あれ? そういえばもう一人新しい人が入ったんじゃなかったっけ?」

 希望が思い出したようにきょろきょろとあたりを見回した。

 だがこの場にいるのは皆顔見知りだけだった。

 「ああ、緋神なら月詠と共に一度司令室に向かった。

  一応手続きを踏んでおかないといけないそうなのでな」

 その質問に答えたのは冥夜だった。

 ガチャン!

 金属製のテーブルにガラスのコップが音を立てて置かれる。

 何事かと視線を走らせる面々。

 驚いたようにコップを取り落としたのは真理奈だった。

 「緋神…?」

 「ど、どうかしたのか? 佐伯?」

 真理奈はその質問に答えず冥夜に問い返した。

 「ね、ねえ! 冥夜さん! 今緋神って言ったの? 間違いない!?」

 「あ、ああ。緋神信哉。彼は確かにそう名乗ったが…」

 冥夜は普段は見せない真理奈の剣幕に少しばかり押されぎみだった。

 ちょうどそこへロビーのドアが開いて入ってきたのは…。

 「悪い、みんな手続きが長引いて…」

 「え?」

 忘れなかった。
 
 忘れられなかった。

 この2年。

 突然、自分の前から理不尽に消えて。

 戦う決意そのもの。

 「し…ん…や?」

 「え…? あ…真理奈? 真理奈なのか?」

 信哉の方もまた脳裏によみがえる姿に目の前の彼女の姿が重なる。

 いつも泣いていて。

 小さい頃は後ろばかりついてきて。

 少年時代独特の感情からそれがうとおしくもあって、

 けんかもして、それでも最後には必ず守りたくて。

 何もかもを失った研究所での生活での心の支え。

 「信哉!」

 真理奈はわき目も振らずに信哉に飛びついた。

 そんな彼女を優しく抱きとめる信哉。

 「信哉…しんやぁ…」

 胸の中で自分の名を呼ぶ小柄な少女。

 信哉は胸の中に何か熱いものがこみあげるのを感じた。

 だがそれ以上に

 「はは…何から説明したもんかな」

 周りの視線が痛かった。

 これ以上というほどでもなく。

 大半が面白がっている。

 こんな退屈しないネタはない、と。

                                  続く
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