1月20日(水曜日) PARALLEL
「すみません……あゆが迷惑をかけたみたいで」
「いいですよ。あのあとあゆちゃんと一緒に家事をするのは楽しかったですから」
昨日の電話はあゆが水瀬家に泊まりに来たことを知らせる電話だった。
そして僕は今電話越しに平謝りしている。
それでどうして僕が謝る羽目になっているかというと……
料理も出来ないのに、張り切ったあゆが水瀬家の台所を破壊したからだ。
7年前にも同じことがあったような気がする……
「帰ってきたらちゃんと叱っておきます」
「帰ってきてくれたらいいですね」
「あ……はい」
子供を叱ることが出来るのはどんなに幸せなことか……失ってはじめてわかった。
「それでその後あゆちゃんと買い物に行きました」
「そこでもまた迷惑を?」
「月宮さん、あゆちゃんをもっと信頼してあげてもいいんじゃないですか?」
「…………」
この人にはかなわないな……
「そうですね」
「卵を3個割っただけですよ」
「…………」
徹底的に親の顔に泥を塗ってくれる娘だ。
その日、就寝に至るまであゆは失態を重ねてくれたようだ。
泊めてやってくれと頼んだ手前、穴があったら入りたい気分だった。
しかもそんな失敗ばかりのあゆに、秋子さんはお小遣いまであげたらしい。
「何もお小遣いまであげなくても」
「健気に手伝ってくれるものですから、つい。それにあゆちゃんはお金を持っていないでしょうから」
それに関しては少し怪しい。
この前から病室においてある小銭が相当な金額消えているのだ。
あゆが栞ちゃんとたい焼きを食べたという日は、特に減りがひどかった。
しかし……
説明もつかないし、言わないでもいいか。
「とにかく、迷惑かけてすみませんでした」
「いえいえ、名雪に妹が出来たみたいで楽しいですよ。あゆちゃんみたいな育てがいのある子が欲しかったです」
「……え?」
「冗談です」
だが、その声は少し残念そうだった。
電話を終えた後、僕はあゆと秋子さんの楽しそうな顔を頭に浮かべていた。
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