1月22日(金曜日) PARALLEL


(あゆちゃんはかわいいですね)
(そうだ、こうなったら水瀬家の家族になってもらいましょう)
 秋子さんはそう言って台所からオレンジ色の瓶を出す。
(これを食べればあゆちゃんも水瀬家の家族です♪)
 秋子さんはトーストを用意して、他のジャムを食卓に並べていく。
(これでよし。あとはあゆちゃんがジャムに興味を持ってくれさえすれば成功ですね)
 そこにあゆがやってくる。
 少し遅れて祐一君もやってきたようだ。
「わあ、綺麗…」
 あゆは並べられたジャムの瓶に興味を持ったらしい。
 目を輝かせて、左右に首を振ってジャムを見回す。
「これってジャムだよね?」
「ええ、そうよ」
(まずは成功ですね。興味を持ってくれました)
「いっぱいあるんだね…」
 あゆは感心したようにジャムに魅入っている。
 そしてあゆはたくさんのジャムを代わる代わる塗って食べ始めた。
 あゆは大好きなマダム・アキコお手製のジャムを楽しめて満足のようだ。
(頃合ですね)
「…あゆちゃん、実はもうひとつだけジャムがあるんですけど」
 秋子さんは台所に用意してあったオレンジ色のジャムを取り出して、食卓に置く。
「これなんですけど…」
(ついでです。今日こそ祐一さんも正式に水瀬家の家族になってもらいましょう)
「祐一さんもいかがですか?」
「ジャムですか?」
「一口で構いませんから、試して貰えますか?」
(このジャムを試食してはじめて、祐一さんもあゆちゃんも企業秘密を共有する水瀬家の家族です♪)
「ボク、いっぱい食べるよ」
 あゆは嬉しそうに名乗りをあげて、そのオレンジ色のジャムをトーストに塗りたくった。
「分かりました、一口くらいなら…」
 祐一君もそのジャムを少しだけトーストにつける。
「いただきます」
 そしてふたり同時にかじる。
(名雪が食べた頃からは随分改良を加えたけれど、どうかしら?)
「……」
「……」
 一口かじったところで、二人の動きが止まった。








「あゆーーーーっ!!」

 僕の手が虚空を掴む。
 あゆの病室だった。
「夢……か」
 よく覚えてはいないが……
 あゆの身にとんでもない災難がふりかかったような気がする。
 それも秋子さんの策謀によって……
「まさかな…秋子さんがあゆをひどい目にあわせるわけがないな」



 とは思ったが、この日一日中この疑惑は晴れなかった。
 そして、どういうわけかこの日秋子さんからの電話はなかった。
 何かあったのだろうか?




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