〜楽園は何処にある〜
赤い滴と蒼い空
第一話 出会いと再会



季節は梅雨時。
毎日のように雨は降り、外に出る人は嫌になる季節。また、家から出なくても主婦などは洗濯物が干
せないと愚痴を言っているに違いない。
現に俺の目先にいる母、相沢 晴美がそうだ。
この辺の地域は、四季の変化がはっきりしていて夏は暑く、冬は寒いと気温の上下が激しい。四季がない国があるなら、それは羨ましいことなのかもしれない。だが、実際にあるのも大変だ。
自然現象のことなので暑いかったり、寒かったりと不満をぶつける矛先はないため我慢するしかない。それはまだいい。
俺の母は、不機嫌になると愚痴の先が俺や親父に向けられる。愚痴だけではない。
その日の夕食は、ご飯と生卵だけとサバイバル的に量の少ない晩飯になってしまう。まだまだ育ち盛りの俺からしてみれば、苦痛以外のなんでもない。
「ねぇ祐一・・・」
ほら、早速愚痴がくるぞ。
きっと理不尽な言い回しで言ってくるんだろう。あんたちょっと天候変えなさいよとか、こう雨が降り続けるのは政府の行いが悪いのよとわけのわからないこと言うに違いない。
「今日、引っ越すわよ・・・・!」
「へ・・・・?」
それは突然の出来事だった。
天災の如く、前触れもなかったことだ。ここを引っ越すという話題はなかったと思う。
恐らく、今思いついたことなんだろう。引っ越す理由は、この雨から逃れたいために決まっている。
今起きて顔を出した父、相沢 宏はボサボサ頭で何事?と表情で訴えてくる。
あとでわかったことだが、どうやら引っ越す話題は両親の間であったらしい。俺を加えなかったのは、どうせめんどくさいとかで参加しないと見抜かれていたからだ。
引っ越す先は、7年前にも訪れたことがある街。
いろんな想いを残してきた所だ。
懐かしいともいえるその街に、俺は足を運ぶこととなった。
思い出となってしまった少女達は元気だろうか・・・。

何が悲しくて天然のシャワーを浴びなければならないんだろう・・・。
先ほどまでは傘をさしていたのに、何かにつまずいて傘が折れてしまい使い物にならない。それに、こけてしまった原因のものはあたりにない。私は何もない所でつまずいてしまったという、他人が見たら思わず笑ってしまうことをしてしまった。
「う〜なんでこんな目に会わなきゃいけないの・・・・」
幸い、服はそれほど汚れていない。
だが、結構濡れてしまった。だけど下着は透けていないのでとりあえず安心。
「う〜水瀬さんの家はどこなの・・・・」
私がこの街に来たのは、軍からの指令がきたからだ。
指令者は軍に入れば必ず聞く強者の一人、水瀬 秋子さんからだった。なんでも、近頃この地域の魔物の出現数が急激に増えているらしい。
この街は一つの国となっている。一応「華音」という国の一つであり、街なんだけどこの街の軍力は莫大なもので一つの国と見なされている。名前は「最右翼」と呼ばれている。
「う〜わからないよ・・・・」
しかもこの街は大きい。
地図を渡されてもわからないほど、大きく家並みも様々でどの道にいるかわからない。
17歳にもなってこれでは、将来どうなってしまうのかと自分でも不安になってしまう。
私はどこに行けばいいのかわからず、勘に任せて歩くことにした。
「う〜大丈夫かなぁ・・・・」

変な少女を見つけた。
先ほどからう〜う〜と唸りながら歩いている。しかも涙目で、不安なんですというオーラが出まくりだ。
なんだか、見ているこっちが不安になってくる。それに降り具合は弱いが、雨にうたれているので何かすごく悲しいことがあったのではと思える。
「祐一っ!哀れな美少女に手を差し伸べるのよ!」
いきなり何を言い出すんだ?俺の母は。
今の台詞を言い換えれば、「可愛い子なんだから、ナンパしなさい」と似たようなもんだぞ。
親からナンパしろなんて聞いたことない。俺はふと親父を見ると、苦笑いを浮かべていて行け行けと小さく言っている。
ここで断ったりしたら、恐らく俺もあの子のようにされる。親にはむかったお仕置きよと言われ、傘を奪わて置き去りにされるに違いない。
俺は仕方なく少女に声をかける。
「どうしたんだ?」
「う〜?誰ですか・・・・?」
俺よりも少し年下だろうか。
背は女の子にすれば、やや高いほどである。160くらいかな?
髪は腰までまっすぐ下ろしている。もし短ければよりいっそ幼く見えるだろう。
身長からしてさほど年の差はないと思えるけど、不安な目つきは子供のようだ。大きな声を上げたりしたら、腰を抜かして泣いてしまうかもしれない。
「あ〜、通りすがりの者だけど道にでも迷ったか?」
「う〜そうなんです・・・・。水瀬 秋子さんというお方が住む家を探しているんです」
これは偶然なのか。それとも何かの因縁だろうか。
俺たちが向かっている先も、いとこである秋子さんの家に向かっている。
変わった口癖をもつ少女との出会い。
これからいろいろと関わることとなるとは、今は微塵も考えられなかった。
だってそうだろ?もし数分でも遅れたり早くこの場所に来てたら、この少女と出会うことはなかったんだ。母さんならきっと、運命の出会いよと言うに違いない。
運命の人。
それは、言わば俺の恋人となる人という事になる。だけど俺はいまいちピンとこない。
失礼だが、こんな幼く見える変わった少女が俺の恋人になるなんて思えない。
運命やら恋人やらについては、今はどうでもいい。
雨に濡れ、道に迷っている哀れな少女と俺たち一家は共に秋子さんの家に向かった。

「でかっ」
「う〜大きい・・・」
「秋子のやつ、いつの間にこんな立派な家を建てたのかしら」
「まるで寮だな」
俺たち一同は、ここまで歩いてきた目的のいとこの家を見たときに思わず言葉漏らした。
目に映るのは、普通の家の3倍か4倍はあるでかい家である。
一緒にいてもあまり発言することがない地味な親父が言ったように、このでかい家は寮のような感じだ。よくよく見ると、家の門の横に埋め込まれている木札には水瀬寮と書いてある。
「あら、姉さん」
都合よく家の扉が開き、出てきたのは先ほどの言葉からしていとこの秋子さんだろう。
いまいち確信がもてないのは、秋子さんはかなり美人で若く見える。とても母さんの2コ下には見えない。
「祐一、今あんた失礼なこと考えてたでしょ」
「へ・・・?」
「あんた晩飯抜き」
「ちょ、ちょっと待ってよ。俺には発言権はないのか?」
「秋子が私の妹に見えないとか思ってたんでしょ」
「あ、うん。・・・・・げっ!」
「・・・・・・」
どうして女っていうのは、こういう事には勘が働くのだろう。
しかも母さん、頬が引きつってるし。
隠し事が得意じゃない俺は、今のように思ったことを言ってしまう癖がある。この癖のせいで、何度晩飯を抜きにされたことやら・・・・。
「あらあら、祐一さんもお世辞がうまいわね」
「秋子、私にかける言葉はないの?」
「姉さんも十分に綺麗ですから、気にすることはないと思いますよ」
「なんかむかつくのは気のせいかしら」
「ところで、そこにいる女の子は美川 皐月ちゃんかしら?」
「う〜そうです・・・・」
「あ、流された」
そういえば名前を聞いてなかったな。
ここまで来るまで、母さんの一方的な質問をうけてて、俺はどうでもいいかと話しに耳を傾けていなかったから名前を知る機会を失っていた。
「お母さん、お客さんでも来たの?」
「ほら、今朝言ったでしょ。いとこの祐一さんのご家族と仕事を依頼した子が来るって」
「え、そうだったけ・・・?」
懐かしい口調が俺の耳に届く。
昔と同じで、どこかぬけているような少女。冬になれば、毎年ここに来て彼女と遊んだのを覚えている。
確か、俺は少女のことをいつもからかっていたと思う。
からかわれて、ちょっと困った顔をしながら俺のあとを追ってきた。
名前は水瀬 名雪。年は俺と同じ17歳。
「久しぶりだな、名雪」
「わ、祐一」
「名雪ちゃん美人になったわね〜」
本人は驚いているらしいが、全然驚いているようには見えない。
母さんは成長した名雪見ると、まるで動物好きで『よ〜しよしよし』といいながら撫で回す人のように名雪の頭や体を触りまくっている。
名雪は嫌な顔をせず、その行為を受け入れている。俺には考えられない。
「ふふ、名雪もそうされるのは7年ぶりね。さぁ雨の中ずっといるのもなんですし、上がってください」
俺たちは、名雪に抱きついている母を残し水瀬寮に入ることにした。
皐月という少女が俺に、あの二人を置いてっていいのかと無視していいことを律儀に聞いてきた。大丈夫だろ、と言ったが皐月はどこか不安げに母さんと名雪を見ながら家に入った。
なにはともあれ、これから住むことなった水瀬寮。
7年ぶりに訪れたここは、少しだけ変わっていた。
再会だけじゃなく、新しい出会いもまだありそうな予感がする。
俺は、期待と少しの不安を抱きながら家に入っていく。
一体これから何が起きるのだろう・・・・。






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