R・Gとデュランダルの戦いから二週間が過ぎた。

 地球をそしてコロニーを震撼させたのはまずは連邦の崩壊の

 ニュースである。

 それを告げたのは当然、アザゼルの総帥アグマイヤである。

 彼は今後、地球およびそれに属するコロニーを統治するのは

 アザゼルであると発表、そして反乱分子には容赦のない報復と制裁を持って

 返答とする、と大々的に発表した。

 現在は、極東支部を中心に地球での戦力をかき集めての抵抗作戦が

 開始されているが、物量に押され、また決定的な攻め手がないことで

 苦戦していた。

 アンリミテッドと合流し、再び一つとなったエクシードブレイブスが

 手をこまねいている間、後に「堕天使の粛清」と呼ばれる

 アザゼルによる不要実験者達の処分が行われていた…。








 エクシードブレイブス 第67話

 光、呼ばれ出でてここへ











 ――アザゼル研究施設

 それはまさしく鋼鉄の悪魔だった。

 二本足で歩き、武装をした機械の兵士。

 否、二足歩行の戦車と呼ぶべきか?

 やや異形な出で立ちだが、

 そこまではなんらMSや他の機体と変わらない。

 だが、この機体には人は乗っていない。

 プログラムに従い、その鋼の体を動かし、機関砲を撃ち、ミサイルを撃ち、

 ただただ敵を殲滅するだけの鋼鉄の悪魔。

 メタルギアシリーズ。
 
 血の匂い、瓦礫にうずもれた機体、あちこちから上がる火の手。

 炎の照り返しを受け、赤く輝く鋼鉄の体。

 「うわあああああっ!」

 少年の一人は夢中で引き金を引いていた。

 施設に残っていたわずかな機体を使い、何とか逃げ出そうと画策した。

 だが、一人また一人と仲間たちは死に、最早逃げることもままならない。
 
 メタルギアはマシンガン程度の銃弾など意にも介さず、

 敵と認識した機体をロックした。

 後は、プログラムが攻撃を実行するだけで彼の機体は
 
 破壊されるだろう。

 ギィィィ…

 耳障りな金属音、それと同時に放たれるミサイル。

 直立姿勢の背中から尾を引いて天へと向かっていく。

 少年はそれにも目もくれず、

 「来るなぁぁぁぁっ!」

 ただ眼前の悪魔に向けて銃を撃ち続けることしか出来なかった。

 そしてミサイルは降り注ぐ。

 少年の乗る機体を貫かんと。
 
 一発

 二発

 三発

 無情なまでに同じ場所に当たるミサイルは次々と炸裂する。

 最後まで少年の思考が真正面の敵にだけ向けられていたのは

 ある意味、それ以上の恐怖を味わわずに済んだのは幸せだったのかもしれない…。




 ――極東支部 会議室

 「…以上が現在のアザゼルの行動の全てです」

 「想像以上に劣勢だな。何か手はないのかね?」

 月詠の報告に珠瀬長官は尋ねた。

 「先刻合流した、沢渡氏の話によればシュベルツァーに対抗できる

  グレンツェンの唯一のパイロットが見つかったとのことです」

 「何! それは本当かね」
 
 「はい、火星から来た技術者のユユ・ミナサキさんです。

  彼女ならあれを乗りこなせると…ただそれでも
 
  シュヴェルツァーに勝てるかどうかは五分五分です」

 「だが、勝機が見えた以上、これ以上引き下がっているわけにもいかん」

 「おっしゃるとおりです長官。そこでエクシードブレイブスによる

  アザゼルの本拠地への総攻撃を行います」

 月詠に変わって、秋子が作戦の概要を説明する。

 「アザゼルはすでに元連邦の跡地に本拠を構えています。

  そして支配する、という明確な目的があるため

  街への武力行動は一切行っていません。そこを突きます」
 
 「戦力の一点集中による拠点制圧か…」

 「はい、まずはシュヴェルツァーが出るまでの間

  先発隊がアザゼル本拠を攻撃、アグマイヤが出てきたところで

  グレンツェンの出番となります」
 
 「アグマイヤさえ叩けばこの戦いは終わる。そういうことだね?」

 「はい、そしてエクシードブレイブスならそれが出来ると確信しています」

 「……」

 珠瀬長官はしばらく考え込んだ。

 だが、悟ったように笑うと、

 「今更悩むようなことではないな。各員に作戦を通達せよ、開始時間は

  明朝9時! 準備を怠らないよう伝えろ!」

 「了解!」

 こうして、地球の運命を決める作戦は始まった。



 ――格納庫

 沢渡マコトがエクシードブレイブスに合流したのは

 つい先日のことである。

 アザゼルの施設の一つから隠された機体を運び出す準備に手間取ったため

 予想以上に合流が遅れたと彼女は述べた。

 グレンツェン、光り輝くという意味を込められたまさしく漆黒という意味の
 
 シュヴェルツアーの対となる機体である。

 外見上の違いは、禍々しさが目立つ黒の機体であるシュヴェルツァーと比べ

 こちらは神聖さを感じさせる人型の機体である。機体色は白だ。

 構造、原動力、性能はほぼ同格だが、作られた製作者の意図を映す鏡のように

 デザインは驚くほど対照的だった。

 ユユは忌まわしき記憶の眠る機体を前にそっとたたずんでいた。
 
 「ユユさん」

 そんなユユに声をかけたのは信哉だった。
 
 「あら信哉君、どうしたの?」

 「いえ…ちょっと姿を見かけたものですから」

 「そう…」

 ユユはそれ以上何も言わずまたグレンツェンを見上げた。

 「驚きましたよ、まさかユユさんもアザゼルにいたなんて…」

 「五年も前の話よ。それに逃げ出したせいでマコトに余計に

  迷惑をかけちゃったしね」

 ユユは当時のアザゼルでパイロット兼研究者だった。

 それまでアザゼルでも指折りの技術者だったユユが突然の脱走。

 それに起因したのはグレンツェンだった。

 「知っていたら…あんなもの…完成させたりなんかしなかったのに」

 「ユユさん…」

 そう言ってユユはグレンツェンを見た。

 自ら生み出した機体、それに罪はない。

 作られた道具に罪はない。あるのは、罰せられるのは自分。

 無知であったがゆえに、知ろうとしなかったがゆえに
 
 他人の不幸を生み出した、自分への罰。

 「まあ、その責任を取るチャンスが巡ってきたのは

  やっぱり地球に来たからよね。そのへんは感謝しないと」

 「無理してませんか? どことなく…そう見えますよ」
 
 「気遣ってくれるのはありがたいけど、これでも一応大人の女だからね。

  悲しみを抑える術は知っているつもり」

 「そうですか…」

 本人がそういうなら仕方がない。

 信哉はそれ以上声をかけるのをやめてその場を去ることにした。

 「信哉君」

 「はい?」

 「85点。もっと磨けば君はいい男になれるわよ」

 「あはは…じゃあ少し精進してみます」

 そう言って信哉を見送るユユの顔は笑顔だった。



 ――第二格納庫

 そこには祐一の機体によく似た機体が格納されていた。

 ロートスブルーメ、アルトアイゼンをマコトが自分用にカスタムした機体である。

 テスラドライブ搭載、小回りは利かないが突進時のブースターとスラスターを

 組み合わせての移動ならばMSにも負けない機動力を所持。

 加えて、実弾系の武装を多数搭載していることから

 「飛翔する重戦車」の二つ名を持っている。

 そしてその隣には薄いオレンジ色の変わったカラーリングのガンダムが

 搬入されている。

 ガンダムコンストレイン。

 「制約するガンダム」の名を持つ秋子が現役の頃に使っていた

 ガンダムである。

 驚異的な連射速度を可能にしたビームライフルで動きを封じ、
 
 一撃必殺のメガビームライフルで落とすという戦術からついた名が

 コンストレインである。

 機体性能は秋子のチューンもあってそれなりに高めだが、

 どちらかというとパイロットの秋子の力によるところが多い。

 秋子の戦列復帰は祐一の死に思うところがあったというのもあろうが

 これ以上目の届かないところで子供たちを死なせたくない、という

 秋子の考えもあってのことだろう。

 今後は、戦力のことも考えカノン・バンガードは極東支部に

 残すことになった。

 ノア・シップには全機を格納できるスペースは十分にある。

 円滑な作戦行動も考えると、今後は母艦をどちらかに絞ったほうがいい
 
 という案も出ていた矢先の出来事であった。

 静かにたたずむ機体はただ、己の出番を待つのみだった。




 ――ノア・シップ 船室

 「失礼するよ」

 聖はそう言ってとある人物の部屋を尋ねた。

 そこにはウェーブのかかった長い髪を後ろでにまとめて

 身支度を整えた美坂香里が立っていた。

 「聖先生、どうしました?」
 
 「いや、本当に戦うつもりなのか?」

 「ええ、あたしにはまだ戦場にいる理由がありますから」

 その瞳は自暴自棄になったものもものではない。

 そして迷いの抱えたものでもない。

 れっきとした戦う意味を持つものの目だった。

 「ならば一応医者として忠告しておこう。君の場合、天性の才能が

  あった沢渡君…真琴君と違って体に少々拒絶反応が出ている。

  本来ならば戦場になど出るべきではない。しかるべき治療が必要だ」

 「ええそれもわかっています。ですが…」

 「そうだな、君はこの戦いが終われば戦うことは二度ないだろう。

  だから限界のギリギリまで戦いたい、とそういうことだろう」

 「ええ、あの子の隣で」

 ふう、と聖はため息をついた。

 「本来ならば是が非でも止めるんだが、妹をそこまで思う気持ちは

  わからんでもない。だが命の危険性が出た場合は妹さんに

  全てを告げた上で君を拘束する。それが条件だ」

 「それで構いません」

 香里は即答した。

 自分の尊敬していた人物は自らの理想に命を投げ出すこともいとわなかった。

 死ぬつもりはないが、せめてそれに恥じることのない覚悟が

 今の香里には必要だった。

 「わかった、君のキュベレイは修理されて格納庫にある。

  一応確認しておくといい」
 
 「先生、ありがとうございます」

 そう言って香里は部屋を出た。
 
 廊下のところで聖は、

 「どうにも同じ境遇の者には弱いな…」

 そう言ってまた少しため息をついた。

 自分自身に少し呆れながら。



 ――リビング

 「明日、いよいよ乗り込みか…」

 「メタルギアは二足歩行戦車の名前どおり固い。

  おまけに無人機だからAIを壊さない限り止らない、面倒なこった。

  まあ昔は核弾頭を搭載してたって言うからそれがないだけマシなんだけどな」

 武と往人はモニターを見ながらぼやいた。

 「けど、今までのデータからもメタルギア…地上型のレックスなんだけど

  効果的なのってとにかく威力のある攻撃だけなのよね」

 雪見はファイルを見ながらそう言った。

 過去、防衛戦で何度か戦闘をしたがメタルギア・レックスは

 とにかく硬い。

 加えて攻撃可能な武装がある限り、足がもげても

 ミサイルをその場から撃ち続けるといった行動を繰り返すため

 完全破壊か、各個ごとに場所の違うAIを破壊せねば止まらない。

 「レイとかいう奴は機敏な上に弱点部分が常にカバーされてるからな…。

  くそっ! アグマイヤとかいう爺さんもろくなもん作んないな!」

 武は激昂して拳を手のひらに叩き付けた。

 「アンティーク趣味なんだよ、あのじいさん」

 そこへ信哉が入ってくる。

 「アンティーク?」

 雪見が聞き返す。

 「何でわざわざメタルギアなんて旧世紀の兵器を持ち出したか?

  理由は簡単、あのじいさん古い物好きなんだよ」

 信哉は侮蔑するように答えた。

 「古いのが新しいのを凌駕するのがたまらなく快感らしい。

  何度かそんなのを呟いているのを見たことがあるよ」

 「ま、いかれた爺さんの思想なんてそんなもんか」

 武はそういい捨てたが、

 「俺も理解できないな。どうせなら角の生えたザクや赤ザクを量産すべきだ」

 そこへ突然口をはさむ舞人。

 「中途半端に古いな。アンティークとは呼ばないだろ、それは」

 「ふ、わかってないな信哉。古いものとは年代の流れじゃない。

  いかに時代から忘れ去れたかこそがその物の価値。

  作られてから何年経ったか? 何てのはただのステータスなんだ。
 
  お偉いさんにはそれがわからんのですよ」

 「何がお偉いさんだ…」

 その後も何か馬鹿みたいなことを追及しだした舞人を無視して

 武はまたメタルギアの戦闘データに見入った。

 その傍で考え込んでいた信哉の頭にはある疑惑があった。
 
 (そう懐古主義…前にアイツが調べてたデータ…

  それと火星でのイサイルの言葉。

  これが結びつくのはおそらく…)

 頼むから間違いであって欲しい。

 信哉は自身が行き着いた結論に、心からそう思わざるを得なかった。

 様々な思惑を抱え、決戦の時は迫る。

                               続く


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