――アザゼル本部 海上 「月詠艦長! 見えました、アザゼルの人工島です!」 「多数のメタルギアを確認! 施設を囲むように配置されています!」 「こちらのカタパルトの準備は完了! いつでも行けますよ!」 ノアシップは海上スレスレを高速で移動、人工島へと接近している。 「人工島の機関部の動作は?」 「移動系統、出力系統ともに反応ありません。どうやら 完全に移動を停止している模様」 「でしたら問題はありませんわね。全機出撃! これよりアザゼルへの総攻撃を開始します!」 「了解!」 オペレーターたちは通信を開きこう告げた。 「ブリッジより各機へ! これより戦闘行動に入る! 順次出撃せよ!」 ビービービー! 出撃の合図のためのサイレンが鳴り響く、 月詠は通信を開いた。 その相手は決まっている。 「月詠か、何事だ?」 「冥夜様、今よりお伝えするのはアンリミテッドの艦長としての 仕事ではなく、冥夜様に使える侍女としての言葉と思ってください」 「…わかった、申してみよ」 「必ず、生きてお戻りください。冥夜様はここで死ぬにはまだ 若すぎます」 それは傍で常に見守り、その成長を見てきた月詠だからこそ 伝えるべき言葉だった。 「無論だ、私は死なぬ。頼りになる友がいる、帰るべき場所で待つものがいる。 背負わねばならぬ物もある、私に死は許されない」 冥夜は迷うことなく答えた。 そう、彼女は知っている。ここに自分がこうしていることすらも 自分ひとりの力ではないことを。 全ては人がいてこそ、自分以外の誰かがいるからここにこうして いることを彼女はもう知っている。 「ええ、冥夜様はお一人ではありません、それをお忘れなきよう」 「うむ、では月詠。行って来る」 「はい、いってらっしゃいませ」 エクシードブレイブス 第70話 終焉へと向かう世界 ――人工島周辺の沿岸 付近に到達したノアシップより次から次へと出撃するエクシードブレイブス。 陸地に、空に、それぞれの領域へと己の機体を躍らせて 眼前の敵に挑む。 すでに島の大部分はメタルギアレックス、レイに埋め尽くされ 互いが互いに援護を行うというシンプルにして完璧な布陣。 すでに機体の影で敵の本拠地が見えない状況は、 数の上で圧倒的不利な状況を見せていた。 が、それは彼らにとってなんら絶望を抱くことにはならない。 今までもそうだった、たとえどれほど状況が絶望であっても 彼らはそれを乗り越えてきたのだから。 「敵に臆して勝利無し! 眼前に立ちふさがるならば ただ斬り捨てるのみ!」 石橋が吼え、グルンガスト・クロガネは果敢にレックスへと 向かっていく。その手に巨大な軍神剣を構え。 バギャアアア! ズギャア! その重厚さと切れ味を持ってレックスの足を寸断するクロガネ。 支えを失いその本体を地に投げ出すレックスだったが、背負った レールガンは決して止まることなく目標を探し出し、 ズドオオオオ!! 必然であるがごとくその銃口から火を噴いた。 その威力、戦艦の装甲を貫くかと思われるほどの威力だった。 「くっ!」 反射的に回避運動に移るものの、グルンガストシリーズは総じて 機動性は低い。 距離があったため、直撃は避けたが肩部分のパーツをあっさりと持っていかれた。 「各機へ! レックスのレールガンは想像以上の威力だ。 決して直撃させるな! レールガンの軌道を常に補足しておけ!」 石橋は通信を開いた。 とにかく、周囲を敵に囲まれている状況では話にならない。 まずは数を減らすこと。 そう思った石橋は足を失ってもなお、反撃を試みるレックスの残骸へと 再び剣を突き立てるべく接近する。 だが足を失ったことでがむしゃらな攻撃に移行したのか、 背中からはミサイルが撃ちだされ、正面の機関砲は おそらく弾丸が切れるまで撃ち続けるのだろう。 ミサイルはグルンガストの位置を常に補足し、 立ち止まれば雨のごとく降り注ぐだろう。 弾丸に余裕があるのか、間を置いて撃ち出しを続け 付け入る隙を作らない。 「くっ…! 完全に破壊するまでは止まらんというのか…!」 攻めあぐねていた石橋は何とかミサイルが弾切れを起こすまで 回避運動に徹する覚悟を決めた。 だが、周りは同じようにレックスがひしめき合っている。 無駄に時間をかけるのは得策ではない…。 (この状況下…やはり単機突破は無理のようだな) ズゴオアアアア! それでも一時止んだ攻撃の隙をつき、グルンガストは レックスの残骸と呼べる上半身を完全に破壊した。 すぐさま方向を変えると石橋は他の仲間の援護に向かうべく その場から離脱した。 一方、浩平は敵の装甲の固さに思いのほか苦戦していた。 大火力を持たないMS系の機体では、 メタルギアなどの敵とは相性が悪い。 加えて、一撃必殺を狙おうにも相手は無人機の上 要となるAIは破壊しづらいときている。 だが、そんな状況下で香里のキュベレイは一見無謀とも取れる特攻を見せていた。 「おい、美坂! そんなに接近したらヤバイだろ!」 「心配しないで、折原君。さっきから攻め手に欠けているみたいだけど 見ていると少なくともレイの方はあたしたちMSの使い手の出番のようよ」 「は? マジで?」 「見てなさい…!」 香里はそう言うとファンネルを射出した。 いまや栞の姦計(?)で真っ白になったキュベレイの両肩から無数の ファンネルが飛び出しレイの周辺を旋回する。 するとどうしたことか、レイはファンネルの軌道を一機一機読もうとしているのか 索敵が乱雑になる。 当たりもしないのに口部からレーザーを空に向けて撃ちだしている。 ガシャガシャと音を立てて足踏みをするようにくるくる回る様は はっきり言って滑稽である。 香里はその無様な行動の隙をついてメタルギア・レイの頭部、 AIのある部分目掛けて飛び掛る。 途中、さすがにその接近に気がついたレイは無数の誘導ミサイルを放つが、 「こざかしい!」 それらを一瞬にて左手のビームサーベルで切り捨てるキュベレイ。 その香里の叫びもさることながら、反応についてくるキュベレイも また凄い物である。 ガシャ! そして抵抗なくしたレイの頭部を、香里はキュベレイに掴ませた。 掴んでいる手は右手。そしてキュベレイには両の手に ビームガンの射出口が付いている。 当然、ビームサーベルの射出も同じ箇所で行われる。 香里は口元に笑みを浮かべると、ビームサーベルの出力を最大に上げた。 ビームガン射出口より最大出力のビームサーベルが レイの頭部に直接撃ちだされる。 ズドオオオオオ!! 至近距離で高エネルギーを炸裂させると、頭部からは爆発が起こり キュベレイは素早くその場を離れた。 レイはレックスと違い、早い段階でAIが固定であることを見抜いていた 香里の見事な作戦勝ちと言えるだろう。 「おっそろしいくらい力技だな…」 「精度が良すぎるAIも考え物よ。ましてあれだけ攻撃速度が 速いんじゃね」 「でもまあ、それなら行けそうだ」 「とりあえずレイはあたしたちで片付けましょう。レックスは それでなくても厄介みたいだから」 「そうだな」 そういうと二人は再びレイに向かってファンネルを撃ちだした。 ――アザゼル本部 アグマイヤは格納庫へと向かっていた。 シュヴェルツァーで出撃するためだ。 しかしそれを聞いた一人の所員がそれを止めるため先ほどから アグマイヤを静止しようとしているが、アグマイヤは 耳を貸すことなく足を進める。 「しょ、所長! 本気ですか出撃するなど…」 「何か問題があるのかね?」 「敵などメタルギアだけで片付きます! それに所長の御身に何か あっては…」 「もうワシがここでするべき事は無い。あるとすれば外の五月蝿い 蝿どもをワシの手で落とすくらいじゃろう?」 フォフォフォと愉快そうに笑うアグマイヤ。 もはやこの老人には愉悦しか見えていない。 だが所員は尚も食い下がる。 「しかし…今後のことは…!」 「今後? ああそうか君は知らなかったのじゃな。 では教えておこう…」 そしてアグマイヤは着ていた白衣の胸元から 無骨な一丁の拳銃を取り出した。 小型の片手でも扱える携帯用の銃だ。 バン! 乾いた銃声。 詰め寄る研究員の胸に突き刺さる鉄の弾丸。 アグマイヤは躊躇することなく引き金を引いたのだ。 邪悪な笑みを浮かべ、拳銃を構えるアグマイヤ その姿をまるでありえないものを見たような表情で呆然と見つめる所員。 やがてようやく自身の状態を理解したのかがっくりと膝を付いた。 そして力を振り絞りアグマイヤを見上げる。 その視界は今にも歪み、アグマイヤの声もどこか遠くから 聞こえているように錯覚した。 「ユーアが覚醒した時、人類に居場所なぞありはせんよ。 遅かれ速かれ皆死ぬのじゃ、神の手によってのう…」 「しょ…しょ…ちょう…」 何を言いたかったのか。 この無情か、この仕打ちについてか。 どちらにせよ死が目前に迫った今、この所員にまともな思考が 出来る余裕は無い。 「他の所員もそろそろ皆いっせいにくたばりはじめたんじゃないかの。 この研究に関わった者には先に死んでもらう予定じゃったからな」 所員は震える手を突き出して、だが何も掴むことも出来ずに 廊下にその身を投げ出した。 すでに倒れた背中は上下していない、呼吸は止まっている。 その伸ばした手は何をしようとしたのか。 アグマイヤへの制止か、それとも恨み言か。 そしてアグマイヤの言葉を裏付けるように施設の中から 次々と所員の命は消えていく。 作業の途中で一人また一人とと倒れたのだろう、廊下に無造作に転がっている 作業員達を追い越して、アグマイヤはシュヴェルツァーの前に立つ。 「この世を、地球を統べるのはワシの作品だけじゃ。 ワシが生み出した神だけがこの地に生きるべきなのじゃ」 呪いの様に呟き、アグマイヤは老体に似合わぬ軽やかさで コックピットに座る。 外の光を少しずつ中に入れながらハッチが開く。 漆黒が、黒い機体が、狂人を乗せて飛び立とうとしていた。 続く もしよろしければクリックしてください〜。 SSのTOPに戻る