施設を取り囲むようにメタルギアを配置していたアザゼルだったが ノアシップの上陸点を確認すると、その一点目掛けて 全メタルギアを移動させた。 そのためエクシードブレイブスの進行ルートを塞ぐように メタルギアの壁が作られ、彼らの進軍は予想以上に阻まれることになった。 「ちっ…ぷじゃけるなよ!」 ガガガ… そう叫びながらも舞人の旗色は悪い。 三体のレックスに接近戦で抑えられ、そこにレイが絶えずミサイルを 撃ち込んでくる。 剣でレックスに斬りかかろうにも、機関砲によるけん制、その巨体を生かした 体当たりでそう簡単に距離を詰めることを許さない。 首尾よく一体の懐に潜り込んでもすぐさま他の機体がそれを感知し援護する。 一度は強引に接近を試みた舞人だったが、間髪いれずどこからか 他のレックスが放ったレールガンが脇を通り過ぎていった。 「どけっての!」 ドガアッ! ダンバリバーの渾身の一撃で、正面のレックスを二体同時に蹴散らした。 すぐさま距離を取ろうとするダンバリバーの頭上を何かがよぎる。 「……え?」 ヒュオオオオ…。 空より何かの落ちる音。 そして頭上をよぎる、大きな影。 空戦仕様メタルギア・エア。 レイを空戦用に改良したタイプで、脚部を取っただけのシンプルな デザインになっている。 ただ、尻尾の様子とボディデザインから空飛ぶエイのようだと称されている。 そしてその開いたボディから何かが卵のように降り注ぐ。 空中で炸裂しさらに数の増えるそれは、クラスター爆弾。 無数の子爆弾を搭載し、空中でばら撒くことによって 面の爆撃を行う広域破壊兵器。 それらがダンバリバーに降り注ぐ。 「くっそお! 数だけ集めりゃいいってもんじゃないだろ!」 シールドを頭上にかざしながら、ダンバリバーはエアからの 距離を取る。 小型の爆弾とはいえ、数が多ければダメージは当然蓄積される。 それにシールドはダンバリバーの全域を覆うほどの面積は無い。 防ぎそこなった爆弾は機体に損傷を与え、確実にダメージを奪う。 舞人の機体だけではない、他の機体やパイロット達にも同様に ダメージや疲労が見え始めている。 対してメタルギアは無人機にして量産機。 無限のごとく現れ、疲れを知らない。 舞人の言うとおりだが、結果として数に押されることになっている。 エクシードブレイブスの戦況は極めて悪く、戦況は悪化への道を辿っていた。 エクシードブレイブス 第71話 巡ってきたチャンス 「おいっ、桜井が囲まれてるぞ!」 住井はヒュッケバインのレーダーからそれを知った。 「あ、それじゃ私が援護に行く!」 そう言って飛び出したのは留美のネロだ。 「私も行って来る!」 それに希望のメタスも続く。 「住井先輩、横にエアが!」 「何ッ!?」 牧島の忠告で住井は、周囲に目を走らせる。 確かに高速で突進してくるエアの姿が確認できた。 どうやらブースターに加速装置が仕込まれているらしい、速度が尋常ではない。 これがもう一つのエアの武器ということだろうか。 ヒュッケバインが避けるには若干近い。直撃は免れない位置だった。 「くっ、何とか直撃は…!」 それでも何とか避けようと住井が思いっきりレバーを倒そうとした時、 ドガアアアッ! より大きな翼によってエアの突進は阻まれた。 その比類なき翼を空に拡げるのは、天空の長。 空を翔ける者。 「よう、無事か住井」 「国崎さんか、悪い、助かったぜ」 住井は体勢を立て直し、素直に例を言った。 「往人さん、私たちはこの空飛ぶエイさんを相手にしようか」 「エイさんって…まあいいか。そういうわけだ住井。 俺たちはこのエアを削っていく。みかけよりこいつらは 脆いからな」 「了解、俺は空から援護射撃に回る」 そう言うと、ヒュッケバインと神奈はそれぞれの場所に散る。 空も地上も未だ、メタルギアによって埋め尽くされている。 それでもまだ、少年達は絶望していなかった。 ――アザゼル本部 施設周辺 すでにメタルギアの出払ったこの周辺には誰もいない。 遠くから最前線の激戦の音が聞こえてくる意外は特に音も無い。 そこにシュヴェルツァーは静かに現れた。 「さあて、どう遊んでやるかのう…」 すでに自身の勝利を確信し、遊び半分で出撃するアグマイヤ。 確かに、現時点でシュヴェルツァーに対抗する手段などは 無いと思われていた、だからこのように緊張感にいささか欠けていても 無理は無い。 だが、後の歴史家はこう語る。 『このうかつな出撃が後の運命を決定付けた』、と。 シュベルツァーが動き出したまさにその瞬間。 ドバアアアアアアア! すぐそこに見える海から巨大な水柱が吹き上がる。 「な、何じゃ!」 アグマイヤはその水柱の上がった方向へと目を向ける。 エクシードブレイブスの奇襲かと思っていたアグマイヤは その水煙の向こうに見える機体を見て驚愕した。 シュベルツァーとは対照的に、全体的にスマートなフォルム 白を基調にした輝く機体。 そして何より闇を振り払う光を纏う、絶対であったシュベルツァーを 唯一否定できる存在。 グレンツェンの姿を見てアグマイヤは目を疑った。 機体があるのはまだいい。 だが、あれを操縦できるのはこの世に一人だけなのをアグマイヤは知っていた。 「ま…まさか、そんな」 ピピピ シュベルツァーに外部通信が入る。 アグマイヤはその通信を開いた。 『お久しぶりね、五年…かしら』 モニターに映った顔を見てアグマイヤは驚愕した。 年月の月日によって多少変わって入るもののいまもなお失われぬ面影に。 「お、お前は…ミナサキ…!」 『まさかチャンスが来るとは思わなかったわ…。 貴方を殺すチャンスが、ね』 「貴様…! どこでその機体を…!」 『貴方らしいわね、足元の虫に気づかない辺りが』 「なんじゃと!」 しかし、アグマイヤはさらにここへ接近する機体を確認した。 数機。 メタルギアとの戦闘を出来るだけ回避しつつ、この施設目掛けて 進軍した特攻部隊。 彼らにも通信の内容は届いていた。 「ユユ、いくらなんでも虫はないんじゃない?」 マコトは笑ってそう返した。 「あら、昔から言うでしょ。獅子身中の虫って」 「そういう変なことは知っているのよね、あなたは」 アグマイヤはその声を聞いてはっとした。 「そうか…沢渡! 貴様がグレンツェンを…!」 アグマイヤは激昂して怒鳴りつけるが、マコトは 「あら、今頃気づいたの? 少しボケが始まったんじゃないかしら?」 まるで煽るように軽口で返した。 「貴様ら…揃いも揃ってワシに刃向かいおって…!」 「その虚勢いつまで持つかしらね。忘れてないわよね、 グレンツェンとシュヴェルツァーの関係は…?」 ユユは挑発するように言った。 そこに乗っているのは普段は少しおとぼけでつかみ所の無い 研究者ではない。 戦う決意をした一人の戦士だった。 だが、先ほどの狼狽振りとはうって変わり、落ち着きを取り戻した アグマイヤは小刻みに笑う。 「ふ、フフフ…。グレンツェンでシュベルツァーのコアを封じるつもりじゃろ? そう上手く行くかのう?」 「何ですって…?」 「全くみっともなく取り乱したもんじゃ。ワシも年を取ったワイ、 ミナサキ、沢渡。忠告しておいてやろう、貴様らはワシには勝てん」 「言ってくれるじゃない…、だったら遠慮なく行かせて貰うわよっ!」 ズドオオオ! ブースターを利かせて突進するグレンツェン。 その右手を伸ばし、コアのあるシュベルツァーの左胸。 人間でいう心臓部に向かって手を伸ばした。 シュベルツァーはその間身じろぎすらしなかった。 ガシン! 右手は確かにシュベルツァーに接触した、だが。 「……!」 「聡明なお前さんは気づいたようじゃの」 ユユが一言も発さなかっただけで表情を察したアグマイヤ。 「ユユっ! どうしたの?」 「……コアに接触するはずの経路が無い」 「ええっ!?」 コアからのエネルギーを伝達する経路はシュベルツァーの再生機構上 必ずボディの表面に流出しているはず。 そこからグレンツェンのコアエネルギーを流すことで共振反応を 起こすつもりだったユユは驚いた。 「お前さんが出てってからちょいとこの問題に気づいての。 経路はボディラインの裏側に存在する。コアへの接触は ボディを剥がさぬ限り無理と言うわけじゃ」 「けど…それじゃ伝達効率が…!」 「そう、再生に少々のタイムラグが生じるのは事実じゃ。 だが実戦レベルにおいて、それはなんら問題ないことを この間証明したのでのう…」 アグマイヤはユユを嘲笑うように笑みを浮かべた。 実際、先の戦闘でシュベルツァーは危なげなく勝利を収めている。 その事を知るユユは、悔しそうに唇を噛んだ。 だが、生来の強気からすぐに立ち直ると、 「だったら、コアを引きずり出すまでよ!」 「やってみるがいい! そうやすやすとワシがそんな 醜態を晒すと思うなよ?」 「皆! コアを破壊するまで手出し無用よ! エネルギーの無駄遣いになるわ!」 グレンツェンは一旦距離を取り、その右手を天に掲げた。 凄まじい光のエネルギーが収束し、グレンツェンの頭上に 輝ける光の球を生み出した。 「煌く流星! 落ちてっ!」 ズガガガガガガガガ! まるで霧散するように、球は弾けて無数の弾丸となって シュヴェルツァーに突き刺さる。 「甘いわっ!」 背中のポッドを開くと、シュヴェルツァーの背に黒い翼が 生まれ、全身を包むように翼が閉じる。 光の弾丸は全てその黒き翼に阻まれシュヴェルツァーに届くことは無い。 「なら、これでどう!?」 ガキン! グレンツェンの両手が合わさり、そこから一筋の光が天に向かって 伸びたかと思うとそれは見る見る収束し、巨大な大剣となった。 「光輝く大剣! てぇっ!」 そのまま大振りで剣を垂直に振り下ろすグレンツェン。 「漆黒の剛剣よ、来るがよい!」 ズオオオオ! シュヴェルツァーの右手に黒い闇が集まり、その手には 真っ黒い剣が握られている。 それを素早く掲げ、グレンツェンの剣を受け止めた。 バチバチバチ! エネルギー体同士の接触音を立てて、両者は激しくぶつかり合う。 ガキン! バン! グレンツェンが一旦距離を取り、突きを繰り出すが シュヴェルツァーは横なぎでそれを受け流し、後ろからさらに切りつけると グレンツェンは空へと飛ぶ。 そこからさらに急降下でシュヴェルツァーに襲い掛かるグレンツェンだったが シュヴェルツァーの翼に阻まれ、吹き飛ばされる。 背中から倒れこむものの、素早く体を起こしたグレンツェンは そこから空いた左手から光の弾丸をマシンガンのように撃ちだす。 ドドドドドド! 左右に蛇行しながらそれを避けつつグレンツェンとの距離を再び 詰めるシュヴェルツァー。 そして間合いに入った瞬間、右薙ぎの斬撃が放たれた。 それを難なく受け止め、再びつばぜり合いになる二機。 「フォフォフォ、さすがはかつてアザゼルのナンバー1だった 女じゃ。未だに機体の操作のキレが段違いじゃ」 「あんたみたいなジジイに褒めてもらったって嬉しくないわよ」 ドガァッ! その意思の表れか、グレンツェンはシュヴェルツァーのボディ部に 蹴りを入れた。 体勢を崩し、バランスを失ったシュヴェルツァーに絶好のポジションで立つ グレンツェン。 「たあっ!」 ザシュ! 掛け声と共に放たれた光の剣は、闇で作られたシュヴェルツァーのボディを 深くえぐった。当然狙いは左胸部分のボディを削ること。 すぐさま削れた胸に左手を突き出すが、 バチィン! 後一歩のところで再生したボディに阻まれた。 「惜しかったのう、ミナサキよ」 まるでそうなるのがわかっていたかのように笑うアグマイヤ。 「くっ…」 対照的に悔しそうなユユ。 そして、そんな状況を見守るしか出来ない特攻組のメンバー。 「さあて、次はどんな手で来るのかのう?」 ただ一人、アグマイヤだけが余裕の姿勢を崩さず 笑みをこぼしていた。 続く もしよろしければクリックしてください〜。 SSのTOPに戻る