「あああああっ!!」

 ドガアア!

 信哉の掛け声と共に、アガートラームから繰り出される

 ブレードの一撃。

 横を駆け抜けるように払った斬撃。

 そのままアガートラームはシュヴェルツァーを通り抜け

 急上昇していく。

 シュヴェルツァーはその勢いに若干バランスを崩したものの、

 すぐに体勢を整える。

 だが、そこへ新たなパーツをつけたグラムナートが突進してくる。

 ゲシュペンストに、大型のブースター、ジェネレーターを取り付け

 あまつさえテスラドライブによる空戦仕様。

 両脇、両肩に担がれた細くしなやかな砲。

 グラムナート・メテオーア。

 グラムナートの換装パーツの中でも、重力下における戦闘においては

 このパーツを上回るものは無い。

 前二戦の戦闘データから詩子の手に収まると考えた

 研究班が特別に下ろしたパーツである。

 長距離用攻撃パーツを背に、高出力ブースターによる高機動。

 加えて、両手に近接戦闘用の武器を装備するこの機体は

 オールレンジでの戦闘を得意とする。

 「このチャンスは逃さないよっ! いっけぇ!」

 ガコンガコン!

 両肩、両脇の砲門がそれぞれシュベルツァーに向く。

 そして右手にはグラムザンバー、左手には高出力のレーザーエッジ。

 高火力と機動力を持って相手を殲滅する、それがメテオーアの特徴だ。

 まずは砲門がそれぞれメガ粒子砲を放った。

 ズドオオオオ!!

 両肩、両脇、四つの砲門から放たれるそれは、それだけでも

 並の機体を破壊できるほどの威力を持つが、メテオーアは

 それに留まらず、砲撃しながらの移動を可能にしている。

 相手が逃げても、粒子砲の軌道上に持ち込むという反則気味な方法。

 ズガガガガガ!

 シュヴェルツアーは身動きが取れず、その場に止められる。

 そこへ、距離を詰めたグラムナートが一気に突進してくる。

 右手のグラムザンバー、左手のレーザーエッジ。

 その二本が、エックスを描くように交差する。

 ザシュアアアア!!

 「ぐおおおおっ!」

 シュヴェルツァーはその特性上、装甲はさほど丈夫な作りではない。

 機体を維持するための耐久力はあるが、それを守るための防御は低い。

 再生能力があったから、耐久力が減る事を気にする必要がなかった。

 守りに徹する必要などなかったのだ。

 先ほどまでは。

 今は、その力を失い他の機体と変わらぬマシンだ。

 装甲が削られ、中の機械が露出し始め、その中のコックピットに

 伝わる振動は、パイロットに伝わる敗北への警鐘。

 アグマイヤの顔に先ほどの余裕は無い。

 今は周囲を取り囲む、エクシードブレイブスのメンバーの機体が

 とても巨大な壁に見えた。

 グラムナートが距離を取り、シュヴェルツァーから横に移動すると

 正面には、

 「まだまだ終わりじゃないぜ! ジジイ!」

 すでにしっかりと砲と化した腕を構える天照が陣取っていた。









 エクシードブレイブス 第73話

 降臨











 装填するエネルギーパックをガトリングモードに切り替える。

 100%までエネルギーを注ぐことで六発連続で撃ち出す事が可能な

 天照最強の武器。

 一発一発の威力は落ちるが、連続で撃つことにより相手の回避を困難にさせ

 結果的に一発を撃つより威力の高い攻撃力を生み出すことが出来る。

 下手な鉄砲数撃てば当たる、という奴である。

 「逃げ場は無いぜ…潔く地獄に行きなっ! ガトリングフォトンバスタァァァァ!!」

 ドドドドドドン!!

 その反動はやはり抑えきれず、地面にめり込む形で後ろに下がる天照。

 放たれた六つの光球は、高密度のエネルギー体であり

 物理衝撃によってそのエネルギーを開放する。

 ゆえに撃ち落すことは可能だが、体勢を崩しているシュヴェルツアーに

 そんな行動は取れるはずも無く。

 ドガガガガガガガ!!

 炸裂し、爆発と爆音を上げるシュヴェルツァー。

 立て続けに襲う光球は容赦なくその身を焼き、滅ぼしていく。

 もうもうと上がる煙にシュヴェルツァーの位置が見えなくなる。

 今がチャンスとばかりにアガートラームは、アルトアイゼンの横に並ぶ。

 その時、視界で動かなくなっているグレンツェンとR−TYPEを見て、

 「真理奈! 二人の機体を安全な場所に!

  柚木も手伝ってやってくれ!」

 通信を開いて二人に告げた。

 「わかったわ!」

 「おっけー!」

 二人の機体がグレンツェンに駆け寄っていくのを見届け、

 「マコトさん、煙が晴れたら…仕掛けるぜ」
 
 「ええ、これで決めるわよ」

 ガコン

 その言葉と同時にアルトアイゼンのステークがセットアップされる。

 かつて、研究所にまだいた頃。

 何度か相手をしてもらった時に見たあの荒業。

 マコトの駆るアルトアイゼンが心底恐ろしい、そう思えたあの技術。

 あれを再びこの目で見ることがあるとは、人生とはわからない

 信哉はそう思った。

 やがて強い風が吹き、煙が大分晴れる。

 シュヴェルツァーはその間に何処かへ行くことなく

 その場にたたずんでいた。

 否、すでに動くことが出来なかったのだろうか?

 何にせよ、そんな隙を見逃すマコトではなかった。
 
 アルトアイゼンは、マコトの手により

 あらゆる敵を撃ち貫く鋼鉄の狼と化す。

 「……無駄に火薬ばかり多くてね。威力は…ご自分の身でどうぞ…!」

 ヒートホーンに熱が集まり、ブースターが加速を始める。

 地を蹴ると同時に、アルトアイゼンは果敢に突進した。

 文字通り頭から突っ込む突進である。

 バギャア!

 振り下ろすように頭部の角をぶつけ、そのまま頭をかがめた体勢で

 その右手のステークを渾身の力でシュヴェルツァーの胸に叩きこむ。

 ドガァッ!

 「ぬおおっ!?」
 
 アグマイヤが驚いたのはその体勢だ。

 ステークを突き刺したまま、アルトアイゼンの右手は

 シュヴェルツアーを大きく持ち上げたのだ。

 いや、それは枝に串刺しにされた鳥のような格好で

 「これが私の『切り札』よ…!」

 ドガァ! ドガァ! ドガァ! ドガァ! ドガァ!

 残りの五発のステークを全てシュヴェルツァーのボディに叩き込む。

 最後の一発はステークもろともシュヴェルツァーを上空に高く飛ばしていく。

 「ジョーカー…切らせてもらった!」

 カランカラカラ……

 ステークからは薬莢が音を立てて地面に落ち、

 ズドオオオ!

 そういい残しアルトアイゼンはその場から離れる。

 本来ならば、シュヴェルツァーは重力に逆らわず

 地面にその身を叩きつけるのみであったが、

 その上空、シュヴェルツァーの上昇点に待ち構えるのは

 


 「懺悔の時間だ。とはいってもあんたを許す神はいないと思うけどな」





 不敗の剣を構える、白銀の騎士。

 何も必要は無い。

 絶え間なく続けた攻撃で彼の機体はすでに臨界点を越えつつある。

 ただの一撃、

 本当にただの一撃でいい。

 レバーを引き、バーストエネルギーを収束する。

 そしてブレードを構え、後は斬撃を繰り出すのみ。

 そしてその瞬間、様々な映像が信哉にフラッシュバックする。

 さらわれた日の事。

 研究所で出会った仲間。

 目の前で死に、息絶えていく仲間。

 ゴッドフォースプロジェクト。

 脱出と、それからの日々。

 そしてその後いくつも得て、いくつも失った。

 そんな映像がいくつも流れ消えていく。

 その間もまるでブレードはスローモーションの様に

 ゆっくり流れているように感じた。

 だがこの剣は止まらない。

 全てを終わらせるための一撃だから。

 目の前の元凶を斬る、そのための剣。

 「アグマイヤァァァァァァァ!」

 ズシャアアアア!!

 それが完全にシュヴェルツァーを断った瞬間だった。

 今までかろうじて原型をとどめていた支えは全て失われ、

 空中で四肢はバラけ、コックピットのある本体だけが
 
 地上へと落ちていく。

 ズドオオオ!

 轟音を立て、地上に激突したシュヴェルツァーのなれの果て。

 爆発することは無かったが、彼に出来ることはもう何も無い。

 誰もがこの瞬間に戦いは終わった、そう思った。

 だが、信哉は本体に近づき

 「アグマイヤ、ユーアは? ユーアはどうした!?」

 「ふふ…気づいたのか。鈍いおぬしの頭でも」

 「当たり前だ、お前が捨てたイサイルから全てを聞いたんだ。

  ゴッドフォースプロジェクト、その真相を!」

 「そうか…あの失敗作から全てをな…。

  ならばこう答えよう。もう手遅れだとな」

 「何だと…!」
 
 ゴゴゴゴゴゴ…!

 アグマイヤの発言を裏付けるがごとく、震えだす地面。

 ここは人工島だ、だから動くと言うことはこの施設自体が

 何かを起動しているということ。

 それが何であるか、すぐに信哉たちは知ることになる。

 ズガアアアア!

 傍にあった施設が爆発に包まれる。

 「何だ! 自爆か!?」

 武がそう叫ぶが自爆ではない。

 すでに施設の大半は影も形も無く、そこにたたずむのは
 
 女神、二枚の翼に女性の人型の機体。

 大きさはMSより一回り大きいくらい。
 
 だが、その大きさとは裏腹に感じられる威圧感は

 戦艦が迫る時よりも大きく感じる。

 「フォフォフォ…目覚めたようじゃな…ワシの生涯をかけた

  人造の神、究極のサイコドライバー、ユーアよ…」

 すでにその身は何も出来ようはずも無いのに

 勝ち誇ったように叫ぶアグマイヤ。

 「ユーアよ! 神としての力を振るえ!

  ワシにお前の力を見せてみろ!」

 動けないコックピットからそう命令するアグマイヤ。

 だが、彼は肝心なことを見落としていた。

 アグマイヤはユーアを完全なる『神』として
 
 作り上げたのだ。
 
 そしてユーアも純然たる『神』であると思っている。

 いや思っている、とは語弊だ。彼女は神、神として

 作られた人格でしかない。

 ゆえに次にユーアの取った行動は極めて当然と言えた。

 グシャアアッ!

 女神が振り下ろした手からは一筋の閃光が走り

 コックピット部分を無残に貫通した。

 「ユー…ア…?」

 それはどうやらアグマイヤ本人も貫いたらしい。

 聞こえてきた声は死にかけの老人そのものだった。

 「我は神である、その神に命令をするとは何様のつもりだ。

  人よ、その分際をわきまえよ」

 その声はその場にいる誰もが知っている声で。

 だが似ても似つかぬ口調で。

 残酷な言葉を吐き捨てた。

 この異様な光景に誰もが声を出すことが出来なかった。

 だが、

 「ふ…フハハハハア! 見よ! これがワシの作り出した神だ!

  完璧なる神じゃ! ワシはこの手で…この手で神を…

  ヒャーハハハハハ!」
 
 その笑いは心底喜びに打ち震えていた。

 一体何が彼に喜びを与えているのか、誰も理解できない。

 いや、理解できるのはただ一人でいいのかもしれない。
 
 その見返りが死であったとしても、アグマイヤは笑うのだろう。

 自身の研究を身をもって証明したのだから。

 「耳障りな声だ。死ね、穢れし者よ」

 今度は女神の手が振り上げられた。

 その手のひらから再び閃光が雨のように降り注ぐ。

 それは当然、転がっているシュヴェルツァーの本体に降り注ぐ。

 「アーヒャヒャ! フォーフォフォフォ!」

 降り注ぐ爆音にも負けないほどの声量で、

 アグマイヤは消滅する最後の最後まで笑い続けていた…。

                             続く


もしよろしければクリックしてください〜。



SSのTOPに戻る