「これで最後だっ!!」 ズドオオ!! 叫びと共に放たれたヒュッケバインの最後の一撃が、 最後のメタルギアを破壊した。 一言で言うならば慢心創痍。 皆、エネルギーを使い果たし、機体はボロボロ。 ノアシップまで戻るのも正直ギリギリなほどだった。 「……行かないと」 そう言って彩峰の金剛は起き上がる。 「まだ…戦いは終わってないですものね」 秋子のガンダムもそれに続く。 「せめて、この身ある限り見届けねばな」 石橋もそう言ってグルンガストをゆっくりと発進させる。 皆、それに続くように中央の戦場へと歩を進める。 それが当たり前であるように。 エクシードブレイブス 第77話 終幕 「たああああっ!!」 ガンダムセラフは女神の機体の正面にたどり着くと その翼で女神のフィールドを覆った。 「何だと…!」 「うううっ…!」 フィールドとフィールドを直接ぶつけ合う。 サイコドライバー同士では有効な手だ。 だが、彼女とあゆの念は、強さこそ違えど同質のもの。 ゆえに、彼女のフィールドの強さがあゆと同レベルにまで 落ち込まなければこの手は使う事が出来なかった。 「馬鹿な…この私のフィールドを破るなど…!」 「出来るよ…! 皆が協力し合ったから… 出来ない事なんてないんだよっ…!!」 バチバチバチ… 翼は徐々にフィールドを侵食し消えていく。 他の皆はその戦いを見守るしかない。 パアン… 羽が飛び散るような軌跡を残して一枚の翼が消える。 残りの五枚は辛抱強くそのフィールドを覆っている。 もう攻撃に回す余力がないのか、女神の機体も 辛抱強くフィールドに全力を尽くしている。 「何故だ…何故だ!? 何故貴様の力に これほど嫌悪感を感じるのだ!」 「それはねユーア、キミがボク、ボクはキミだから」 「黙れ! 下等な人間ごときが神と同じだなどとのたまうな! 身の程を知れ!」 「可哀想なユーア、キミは…キミは神様なんかじゃないんだ。 もう、わかっているはずだよ?」 「黙れ…黙れ!」 感情を表にして否定するその姿に自身が神であったと信じていた時の 自信はもうない。 ユーアは心の中で認めてしまった。 いや、あゆの念がそれを認めさせてしまったと言うべきか。 アザゼルがユーアとあゆの接触をもっとも恐れた訳。 『特別であるはずの存在と同じ物が他にあってはならない』 サイコドライバー同士というのは影響しやすいものだと言うのは すでに明らかになっていた。 ゆえに神と教え込ませた自分と同じ存在を目の当たりにして 神でい続ける事は出来るだろうか。 答えは限りなくノーに近い。 だから、アザゼルはあゆを遠ざけたのであった。 そして彼らの危惧していた事は正しかった。 あゆを目の前にし、神だという自身の存在が薄れかけた今、 ユーアに力を維持する術はない。 パアンパアン!! 翼が四枚砕ける。 もうユーアのフィールドもわずかだ。 だがあゆの精神力も限界に近い。 「わ…私は…」 「さよならだね、ユーア。そしてゴメンね…」 パアアン…! 「あああああっ!!」 それはどんな意味を込めた謝罪だったのか。 答えはなく、ただ砕けた最後の翼は 神の衣を剥ぎ取ったのである。 「これまでだ、ユーア。お前は…老人の妄想が生み出した 可哀想な命。俺が…全てを終わらせる。 プロジェクトの生き残りとして!」 アガートラームはアルテミスとその手を合せる。 そして掲げた二機の両手に集まる凄まじいまでのエネルギー。 「行くよ、信哉」 「ああ、これで…決めてやるっ!」 「「エクステンド・バーストレーザー!!」」 ズドオオオオオオ!! その女神の機体は動く事はなく。 ただ天から落ちるその光の柱に身を任せた。 ドガガガガ…! エネルギーが装甲を削り、女神の翼を折り、腕をもぎ取っていく。 彼女はまだ抵抗の兆しを見せていた。 だから信哉も真理奈も機体のエネルギーを根こそぎレーザーに注いでいく。 「くっ…このっ…!」 「まだ…まだ!」 だがここまで長い照射に果たして機体が持つのだろうか。 アルテミスのコンソールにはすでにオーバーヒートを警告する ランプが点灯し、機体が悲鳴を上げている事もわかっている。 だがこれが最後の詰めなのだ。 ここで女神を完全に沈黙させねばもう打つ手がない。 「いやああああっ!!」 先に悲鳴を上げたのはユーアだった。 バガガガガガアアア!! 派手な爆音と共にレーザーは完璧に女神を撃ち抜いた。 だが、わずかに彼女に自身の力があったのか 機体はまだその姿を残している。 彼女は犠牲者だ。 誰もがそれは知っている。 けれど、彼女はこの世界では生きていけない。 神である事を失った今、あゆが死ぬかユーアが死ぬか 同じ存在である二人は同時に生きては行けない。 アガートラームはそのボロボロの女神の機体の前に降り立つ。 『唯一、神を殺せる剣を持つ者』 一点に集中したフィールドの攻撃力は誰よりも高かった信哉。 ゆえに剣、たとえ総合能力ではあゆに劣ろうとも それだけは最強を自負する信哉の力。 その剣はずっと信哉と共にあり、 そして今殺戮の限りを尽くし、最後には自分が作り物だと 知らされた哀れな少女に向けられた。 「最後に一つだけ教えてやる」 「……」 ユーアは答えない。 応えることも出来ないのだろう。 「お前は、ただの作り物だ。 それだけは間違いない。 お前は最初から…神様なんかじゃなかった」 そういい残し、アガートラームはその剣を 真っ直ぐに振り下ろした。 ズガン!! バガアアアアアアアア! 真っ白い世界。 他に誰もいない世界。 信哉はそこで漂う一人の少女を見つけた。 直接の面識はない、いや正確にはあるが それは昔の面影だけだ。 「一つだけ教えて欲しい」 少女は言う、だから信哉は 「何を?」 そう言った。 「私は生まれてきてよい命だったのか」 それは自身の存在の是非を問う問いだった。 「目覚めた時はあまりに短く、汝らに討たれるだけの命に 意味はあったのだろうか」 「酷な言い方だが、なかったな」 信哉は歯に衣着せずそう言った。 「だが、それはお前が背負うべき業じゃない。 お前をそういう命に作り出した奴がいる。 元凶はそいつであってお前の責任じゃない。 大体その質問自体間違っている」 「何?」 「お前はまだ…生まれていないんだ。ユーアと言う名前の少女は生まれていない。 だからいつか、その答えはお前が本当にこの世に生を受けた時に もう一度俺じゃない誰かに聞いてみろ。 きっと望む答えをくれるはずだ」 信哉は微笑んでそう言った。 「そうか…では…その時を待つとしよう…」 そう言ってユーアの体は霧散し、白い世界へと消えていく。 信哉はその粒子が消えてなくなるまでそれを見続けていた。 そして視界がまぶしくなり、また信哉の意識が別のところへ…。 一際派手な爆音と炎が上がり、ユーアはその機体と共に この世から姿を消した。 そしてその代償として、アガートラームのブレードは 完全に折れていた。 度重なる激戦のダメージが今きたのか、それとも …曲がりなりにも神と呼ばれたものの命を奪った代償か。 どちらにせよ、信哉の剣は今ここに役目を終えた。 信哉は気がつくとコックピットの中にいた。 いや、そもそもあれは何だったのか。 だがそれを問う相手はもういない。 「終わったのか…?」 武がそう呟いた。 皆、ボロボロだ。 「ああ…終わったよ。俺たちの戦いが」 そう言ったのは信哉。 本当に、疲れた。その言葉にはそんな思いが込められていた。 「そうか…結局、ジジイのわがままに振り回されたようなもんだな」 「そうね、終わってみればそんな虚しい戦いだったのよね」 浩平と雪見が複雑な表情でそう言った。 結局この戦いでは失われたものは大きすぎたのだ。 多数の死者、破壊されつくした地球。 「でも嘆くばかりじゃいつまでもそのままです。 私たちは…これからまた頑張らなきゃいけないと思います」 真理奈はそう言った。 「そうだな、悔やむ事はいつでも出来よう。けれどそれだけでは いつまでたっても前に進む事は出来ぬ」 「冥夜の言うとおりだよ、わたし達これからまた頑張らないと!」 それに冥夜と純夏が賛同する。 そう、戦いの終わりが全ての終わりではない。 まだ彼らのなすべき事が終わったわけではない。 ただ、一つ言えることは、節目を迎えたただそれだけの事。 「おーい!」 同じくボロボロの機体を歩かせて、向こうから やってくる仲間たち。 「帰ろう、俺たちの世界へ」 信哉はそう言って走ってくる仲間たちの元へと ゆっくりと近づいていく。 そんな彼の後を皆、追いかけていくのだった。 続く もしよろしければクリックしてください〜。 SSのTOPに戻る