基地のロビーに大部分のパイロットが集められる。
集合をかけたのは舞人だった。
全員を前に大きなモニターを背にして立つ。
「おい、何の用で全員をここに集めたんだ?」
人ごみの嫌いな往人はさっさと用件を片付けて帰りたかった。
「まあまあ落ち着きたまえ、国崎君」
イラつく往人を軽くなだめながら舞人は、大統領演説でもするかのように拳をぐっと握って顔の前に突き出した。
「諸君! ここに集まってもらったのは他でもない」
「私は諸君に、今度の作戦についてあるゲームを提示する!」
(ああ、俺輝いてるよ、輝いてるよ)
全員の熱い視線が(一部白眼視)自分に注がれるのを感じて舞人はエクスタシーを感じていた。
「あはは〜、椅子取りゲームですね〜?」
ズドドドッ!
しかし、その直後のあるお嬢様の発言に全員がこけた。
ただ一人、親友の舞を残して……
「はえ?」
全員をずっこけさせた張本人は、何故全員がこけているのかさっぱり見当がつかないようだ。
「佐祐理」
「何、舞?」
全員の気持ちを代弁するためだろうか?
舞が真剣な面持ちで佐祐理を見つめる。
やはり、親友ともなると相方の天然ボケにも耐性がつくものなのか?
と、全員は思った。
「私はフルーツバスケットがいい」
ズドドドドドドドドドッ!!
と、思ったら親友は更に輪をかけた天然ボケだったようだ。
「?」
「はえ?」
周りに広がる死屍累々の山を前にしても、二人はそれが自分たちのせいだとは思ってないようだ。
「ぷじゃけるな!! 誰がこんなところに人集めてゲームなぞするか!」
こけていた、舞人が復活して叫ぶ。
「俺は今度の作戦で、部隊が二つに分けられるって話を聞いて隊分けの相談をしようと皆を呼んだんだよ!」
もはや大統領の威厳も欠片もなかった。
所詮はチンケな族、桜坂連合の頭である。
「そんなの俺たちが相談しても無駄だろうが。決めるのは司令官だぞ」
往人が至極もっともな意見を述べる。
「ふ、国崎のオッサンも甘いな」
(お、オッサン!?)
往人はその発言にショックを受けてその場で凍ってしまった。
パイロットの中では彼はかなりの年長とはいえ、まだまだ十分若者である。
「確かに、普通はこういうのは司令官の仕事だ。だが、俺達の司令官は他ならぬあの人だぞ?」
「…………」
全員が一瞬で沈黙する。
あの人が誰だかはわざわざ言うまでもないだろう。
「お母さんなら自由に選びなさい…って言いそう」
「あうー、真琴もそう思う」
思い当たる節の多すぎる娘二人がそう言うのを見て、舞人は頷く。
「しかしだ、全員がそこで好き勝手言い出したのでは艦長も困るはずだ」
舞人には珍しくまともな意見だった。
次の発言さえなければ……
「そこでだ、このモニターを使ってアミダクジをしようと思う」
(何でアミダクジ?)
「グッパでいいじゃねーか」
全員の気持ちを代表するかのように武が提案する。
しかし……
「そんなあっさりしたのは俺がつまらん」
の一言であっさり切り返された。
本来この場で「馬鹿らしい…帰ろう」と言い出しそうな往人はまだショックでまだ停止中である。
つまる、つまらない以前にアミダやグッパで決めようという不真面目さにツッコミ入れる人間がいないのがある意味異常だが。
「というわけで、全員の枠を用意した。好きな欄に書いていってくれ」
「よし、全員書いたな。では、結果を発表するぞ」
そう言って舞人はモニターのスイッチを押す。
モニターに表示されたのは……
「おお〜っ」っと全員から歓声が上る。
どうやら一人ずつランダムに結果を表示していくシステムらしい。
確かにこれなら幾分緊張感があって面白い……
と、思ったのは浩平をはじめとした一部の馬鹿騒ぎ大好きメンバーだけだった。
「あっ…」
「ふむ、分かれたか…」
続けざまに純夏と冥夜が表示された。
「純夏、武がどちらに行っても恨みっこはなしだぞ」
「う、うん」
愛する者とライバルが二人っきり、これは二人にとっては重大問題だった。
「って、俺も場合によったら真理奈とお別れかよ」
その様子を眺めていた信哉はようやくこのアミダの恐ろしさに気付いたのだった。
「宇宙になりますように…宇宙になりますように…」
「何のつもりよ、折原」
「オレはただ平和な日々を過ごしたいだけなんだ」
ドゴッォ!!
床で腹を押さえて痙攣している浩平を見て、「アホだ…」と全員が思った。
「はぇ〜」
「…分かれた」
寂しそうにモニターに連続して表示された結果を見て、親友二人が溜息をつく。
「こら、舞人! 二人乗り機体のパイロットを分離してどうするんだよ!」
二人に代わって祐一が当然のツッコミを入れる。
「あ、すまん。ついうっかり…そういやその二人だけは二人乗りだったな」
「仕方ないわね、私の宇宙枠を川澄さんに譲ってあげるわ」
なんでわざわざ二人ともバラバラに名前を書いたんだろう?
と心の中で首をかしげながらも雪見が交代を申し出た。
「あはは〜、すみません。助かりました」
「…助かった」
そして次に表示されたのは…
首謀者桜井舞人だった。
「って、ちょっと待て、ホワイ!?」
全員の思考が停止した中、叫んだのは表示されてる本人だった。
「何で俺だけ地域まで限定なんだよ、しかも漁船って何だ!?」
「さくっち自分で仕掛けたんじゃないの? ウケ狙いで」
「こんな場面でこんな洒落にならねえ冗談やるかぁ! ほとんど左遷じゃねえか!」
しかし、舞人を知る人物には、こんな馬鹿なことをやるのは舞人以外思いつかなかった。
「俺じゃないぞ」
「まだ何も言ってないけど…」
と、七瀬に横目で見られた住井は容疑を否認した。
といったところで、画面がまた変わる。
「……今度は死ねと?」
「さくっち的な遠まわしかつきつい冗談だね」
希望は笑顔で答えた。どうやら本気で舞人がボケたと思っているらしい
「ていうか、モニター弄ったの誰だよ! 出て来い」
自分のイベントを邪魔されて本気で顔を真っ赤にする舞人はどうやら本当に仕掛け人ではないらしい。
と、なると誰が?
と、全員が思ったところで、後ろの方から小さな手が上る。
「あはは、ちょっと冗談きつすぎましたね。ごめんなさい」
ストールを纏った少女、美坂栞だった。
「お前か…ガキの分際でよくも俺の邪魔を」
どこかのチンピラのような台詞を吐いてわなわなと震える舞人。
お前も十分ガキだろう…と全員が思ったが、栞の冗談も悪質なので何も言わない。
しかし……
「私が栞君に頼んだんだ、まったく」
栞の後ろから霧島研究所の長、聖博士が現れる。
(何故『通天閣』?)
はだけた白衣からのぞく『通天閣』柄のシャツに対して全員はまずそう思った。
「この馬鹿者が、アミダで部隊を分けるやつがあるか!」
当然といえば当然の叱咤に舞人は小さくなっていった。
「基本的に秋子艦長は自由に選ばせるつもりらしいが、一部は決定している」
そう言って、聖は祐一を指した。
「例えば相沢君。君は機体は万能型なのに宇宙戦が苦手らしいからな、訓練も兼ねて宇宙だ」
ふう……と息をついて聖は全員を見回す。
「詳しいことは後でミーティングがあるだろう。それまで各自待機しておくように」
「「「了解!」」」
一同は口をそろえて返事をした。
「あ、聖さん…」
立ち去ろうとした聖に栞が声をかける。
「どうした?」
「往人さんが、舞人さんに『おっさん』と呼ばれてあそこで真っ白になってます」
「ほう…国崎君がおっさんか」
聖の目に怪しい光が宿ったのを見て、危険を感じた舞人は逃げ出そうとした。
しかし、それよりも早く聖の手が彼の肩を掴む。
「ふふふ…桜井君、国崎君がおっさんなら私は何だと言うのかね? 医務室でしっかり聞かせてもらおうか」
言葉どおりの『事情を聞く』ということではないのは、聖がちらつかせているメスが物語っていた。
「い、いやあああああああ〜〜〜!!」
舞人が聖に引っ張られてロビーから姿を消す。
今回のドナドナの歌は二番だったそうな。
「ふう、『ガキ』は酷いですよね」
その姿をにこにこと笑顔で見送る栞の問いかけに……
ロビーに残っていた者達は、秋子艦長のアレを思わせるオーラを感じていた。
そして思った。「絶対にこの子だけは敵に回さないで置こう…と」。
おまけにこんなSSまでいただけるとは至極光栄の至り。
ちなみにこれは番外編ですのでこの通り部隊編成が行われるわけではありません(爆)
ただ…こんなメンバーが集まればこんなお遊びも簡単に行われそうな気がします
「了承」ってな感じで