マコトサクカナ
俺には夢があった。
だが、小学校の時『将来の夢』という作文にそれを書いたら大人達に笑われた。
俺は子供心に二度とそんなことを口にするかと思い、その夢を自分の胸のうちにしまっていた。
だが……
本気で思う夢なら、必ず叶うから
どこかで聴いた歌のとおり、今の俺は遠からずその夢を叶えようとしている。
春が来て…ずっと春だったらいいのに
真琴はそう言った。
そして、その言葉どおり真琴は帰ってきた。
春……
それは新たな命の営みが始まる季節。
真琴とぴろが帰ってきて、水瀬家は賑やかになった。
構って欲しいのか、真琴は昼夜問わず悪戯を仕掛けてくるようになった。
復讐と称していた頃に比べて危険(煙幕・花火)なものは減ったのは助かったが……
こっちの事情も考えずちょっかいをかけてくるものだから、厄介さは以前と変わらない。
ギシッ
宿題を終えて寝ようとしたところで、妙な物音がする。
祐一「今日は夜襲か」
ちなみに昨日は商店街で買った肉まんを物陰からかっぱらうという悪戯だった。
今日は何をしてくるのやら。
とりあえず相手の出方を見ようと決心して、ベッドに入った。
カチャリ
扉が開いて真琴が入ってくる。
?
おかしいな?
真琴の夜襲の合図とも言える笑い声がない。
そう思っていると、真琴はおぼつかない足取りで俺のベッドに歩み寄ると……
俺に向かってフライングボディプレスを放ってきた!
祐一「ぐえっ!!」
お、重い。なんて一撃だ。
真琴の奴いつから肉弾派になったんだ?
真琴「くー」
…………
毎朝さんざん苦労させられる嫌な音が聞こえてくる。
俺は闇に慣れてきた目で、上に乗っている奴の顔をじっと見る。
もうわかってはいたが、名雪だった。
祐一「こいつはベッドに入るときはいつもフライングボディプレスをしているのか?」
俺はけろぴーに同情した。
ベッドから這いずりだし、名雪を引き摺り下ろそうとするが、
祐一「ダメだ……。びくともしない」
どこにそんな力があるのか、名雪をベッドから持ち上げることは出来なかった。
仕方ないので床に寝ることにする。
完全にベッドを占拠されているのも腹立たしいので、布団は奪った。
春だし、名雪だから風邪は引くまい。
と、酷いことを考えながら床に寝る。
ギシッ
また物音がした。
今度こそ本物だろう。
音から考えてぴろや秋子さんというオチはない。
どうでもいいが、秋子さんは常に足音を立てないので不気味だ。
カチャ
しかし、またしても合図の笑い声は無い。
真琴なのは間違いないのだが……
真琴「あぅ〜」
なんだか切ない声が聞こえてくる。
様子が変だ。
冬、真琴が消える前に聞いた声によく似ている。
俺は飛び起きると、急いで電気をつけた。
すると……
そこには熱っぽい顔をした真琴がいた。
祐一「真琴!?」
俺は慌てて、真琴の手を掴んだ。
祐一「……熱は大してないな」
真琴「……あぅ、ゆういち」
熱は無いことはなかったが、微熱程度だった。
ということはいなくなる心配はなさそうだな。
祐一「風邪か?」
真琴「あぅ」
真琴は放心状態という言葉がぴったりな顔をしている。
祐一「ったく、ほら部屋に戻るぞ」
何故か名雪に捕まって、耳をかじられているぴろを敢えて無視して真琴の手をとる。
あいつ寝ているときはアレルギーが出ないのか?
と思いつつ真琴を扉まで引っ張ってきたとき、
突然乱暴真琴が乱暴に手を振りほどいた。
祐一「な、なんだ?」
真琴「祐一! 誰に断ってあたしの手を掴んでるのよ」
そこにいたのはいつものトラブルメーカー真琴だった。
祐一「いや、お前が熱っぽい顔をして俺の部屋にやってきたから……」
俺の部屋と聞いたところで真琴はあたりを見回す。
真琴「祐一、悪戯目的で寝ているあたしを連れ出したのね!」
悪戯目的でやってきたのはお前だろう。
というか悪戯の意味が違う。
ぴろ「ぎにゃああああ!」
わめきまくる真琴の声にピロの悲鳴が混ざる。
名雪に鼻の頭をかじられたらしい。
怒ったぴろにひっかかれて名雪も目を覚ます。
ぴろは名雪の手から逃げ出すと俺の机の下で丸くなっていた。
秋子「何事よ」
これだけ騒げば当たり前と言うかなんというか、秋子さんが登場する。
秋子さんの目に入ったのは……
真琴「祐一が悪戯目的であたしを連れ出したのよ!」
と誤解も甚だしいことを言上する真琴と……
名雪「うー」
俺のベッドの上で泣いている名雪だった。(もちろんアレルギーで)
どうみても俺が悪いような状況だった。
秋子「祐一さん……」
秋子さんの顔は真剣だった。
いつ平手打ちが飛んできてもおかしくないと覚悟したとき……
秋子「3Pよりも4Pの方が楽しいですよ♪」
祐一「ブッ」
笑顔でとんでもないことを言ってくれた。
祐一「ななな、何言ってるんですか!?」
秋子「年上は入れてもらえませんか?」
と秋子さんは残念そうに言う。
祐一「い、いえ、そんなことはないです。むしろ大歓ゲイです、はい」
混乱して声が裏返ったのだろう。一部怪しげな発音になっている。
真琴「祐一、4Pって何?」
さっきまでの剣幕はどこにいったのやら、真琴は俺に質問してくる。
名雪「イイコト!」
に対して、再び夢の世界に片足を突っ込んだ名雪がそれに答える。
イイコトかもしれないが、公序良俗からするといいことじゃない。
秋子「あら、ぴろちゃんもいたのね。せっかくですし……」
祐一「秋子さん、誤解です!」
おぞましいことを言い出しかける秋子さんの言葉を遮る。
秋子「冗談です」
秋子「祐一さん、真琴、名雪、それにぴろちゃん」
秋子さんは頬に手を置きながら俺たちの名前を呼ぶ。
秋子「わたしという前例がいるんだから、性は真面目に考えなさい」
真琴「ごめんなさい、秋子さん」
名雪「わかったお〜」
ぴろ「にょ」
何故納得するのかよくわからないが真琴は納得していた。こいつはやっぱり秋子さんに弱い。
しかし、寝ぼけなまこで返事する名雪はともかく、ぴろまで何で返事をしているんだ?
聞いてはいけないような鳴き声をあげていた気もする。
それに、前例ってなんなんですか秋子さん?
謎は多かったが、とにかくこの騒ぎが収まっただけでもよしとしよう。
……………
ガサッ
祐一「あゆ、ネタ的にやばいし、ストーリー的にもおかしいから帰れ」
俺は窓の外に向かって言った。
あゆ「う、うぐぅ、祐一君を強姦しにきたのに……」
すると窓の外の木が揺れて、あゆが帰っていくのがわかった。
まったく……あいつ強姦の意味分かっているのか?
次の日
やっぱり真琴の様子が気になったので、天野に尋ねてみることにした。
祐一「天野、そういうわけなんだが…何かわからないか?」
美汐「分かりません」
即答だった。
祐一「あのなあ、分からないのはいいけど、少しは考えてくれよ」
美汐「だいたいあの子が戻ってきたということすら理解できないのに、それ以上のことなんてわかりません」
まあそれもそうか。
実際、俺もいつもあいつが消えやしないかと怯えている毎日だ。
美汐「でも、真琴が消えることはないと思いますよ」
祐一「何でそう思うんだ?」
美汐「勘です」
天野は少し笑って言った。
しかし、天野の勘はよくあたる方なので、それを聞いて少し安心した。
美汐「ただ真琴が風邪を引くとは思えませんね」
祐一「それも勘か?」
美汐「いいえ」
祐一「何か根拠があるのか?」
美汐「真琴に風邪をひくほどの知能があると思いますか?」
祐一「…………」
冗談のつもりなんだろうが…
理知的に言われると凄い暴言のような気がする。
美汐「冗談です」
祐一「いや…わかってる」
分からなかったのではなくて、怖かっただけだ。
美汐「桜、綺麗ですね」
祐一「そうだな」
天野はしばらく何かを考えていたかと思うと……
美汐「桜…もしかして……」
と、意味ありげなことを呟いた。
祐一「なんだ、なにかあるのか?」
美汐「いえ、なんでもないです」
祐一「シラを切るなよ。真琴のことなんだろう? 教えてくれよ」
すると天野は悲しそうな顔をする。
美汐「そんなことを言葉に出して言えと言うんですか?」
美汐「そんな酷なことはないでしょう」
俺は何か酷いことを訊いたか?
美汐「相沢さんは……本当に、つらい目に遭うのですよ。これから」
いつかの台詞を天野が言う。
が、顔が笑っている。
祐一「おい、何で笑うんだ」
美汐「相沢さんはどうか強くあって下さいね」
笑ったまま天野がそう言う。
知ってて黙っているのは明らかだった。
美汐「相沢さん、真琴とそのうちお花見にでも行きましょうね」
祐一「あ、ああ」
あくまで喋らないつもりのようだったのでもうあきらめた。
その夜
ギシッ
真琴が夜襲をかけに来たようだ。
カチャ
が、今日も合図の笑い声がない。
真琴「あぅ」
そしてまたあの切ない声。
俺はとりあえず電気をつけた。
真琴はまた熱っぽい顔をして立っていた。
真琴「あぅ」
とまた切なそうに呟く。
俺は心配になって真琴の手をとった。
すると……
真琴「あぅ、オトコ……」
と、真琴が呟くと同時に俺はベッドに押し倒された。
と同時に自分の服を全て脱ぎ捨て、俺の服を全て剥ぎ取った。
その時間僅かに10秒。
怪人40面相(旧名20面相)もびっくりの早さだ。
真琴「あうーっ!!」
真琴が俺を荒い息で見つめる。
祐一「もうガマンできないってか!! 真琴!!」
そうか、ものみの丘から随分ご無沙汰だったもんな。
真琴も溜まっていたのだろう。
いくら真琴があまのじゃくだからといって、
女の方に押し倒させるまで我慢させるなんて俺はだめな奴だ。
今度からは男として俺から攻めよう。
幸い時間は二時。誰も起きてくるまい。
祐一「よし、今日は寝かさないぜ真琴」
俺は格好良く決めて、真琴を抱いた。
真琴「あうー♪」
久々に抱く真琴の体に、俺は甘美な悦びを感じていた。
しかし、俺は気付くべきだった。
真琴が俺を押し倒したとき、『祐一』ではなく『オトコ』と言ったことに。
悪夢の始まりは1時間後だった。
俺は満足してベッドに倒れた。
当然そこで終わりだと思っていた。
だがっ
真琴「あうー」
真琴がそんな俺に怪しい笑みを浮かべながら寄ってくる。
祐一「お、おい、待て真琴」
真琴はそんな言葉などお構いなしに俺に襲いかかった。
祐一「うわあーーーーっ!」
何で気付かなかったのだろう?
春……
それは新たな命の営みが始まる季節。
当然ものみの丘の狐達も発情期を迎える。
それは真琴だって例外ではないのだろう。
交尾、動物達にとってそれは命がけの行為。
文明の生物、人間の俺が野生の交尾に耐えられるわけがない。
俺は翌朝、半死半生の状態で発見された。
天野、それは言えないよな……
一晩中犯されていた(人間視点)なんて……
そして、俺は交尾の意味を見落としていた。
発情中の交尾、それはすなわち妊娠率100%ということである。
それから間もなく真琴は身ごもり……
数ヵ月後に3児を出産した。
数ヵ月後というのがまた曲者で……
生まれてきた子供には狐耳と尻尾が生えていた。
名雪と秋子さんはこの状況を平然と受け入れていたが……俺の生活から平穏という言葉は消え去った。
この子供たちの未来……学校とか入れるのだろうか?
そしてまた巡ってくる春……後何年耐えられるだろうか?
しかし、こんな形で小学校のときに書いた夢が現実味を帯びてくるとは思いもしなかった。
俺の夢は……
30歳までに腹上死することだ
北川、俺の亡き後はお前に任せるぜ。
(言い訳)
編集作業しながら読み直して頭痛が止まりません。
よくこんなの感想掲示板に出したなと約二年後の現在では心から思います。
ちなみにこれもブレハ公開の約束で晒した品。
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