爆弾三勇士vs北川
祐一「ふああああ……つ、疲れた」

今日の最後の授業は担任の石橋だった。

だからそのままホームルームでさっさと帰れるはず……だった。

ところが、たまたま石橋が数日前に見た映画と今日の授業が被ってしまったために、興に乗った石橋が30分超過で話し続けたのだった。

映画のタイトルは『爆弾三勇士』。

どうせ話をしてくれるなら、『戦艦武蔵の最後』の方がよかった。

俺は上海事変(1次)にはそれほど興味がない。

祐一「名雪も部活だしさっさと帰るか……」

石橋の長話のせいで時間をとられた名雪は、授業が終わるやいなや部室にすっ飛んでいった。

俺は鞄を持って教室を出ようとした。

そのとき

北川「待て、相沢」

北川に呼び止められた。

祐一「なんだ北川、一緒に帰ろうって言うのか?」

北川「いいや、お前に言っておくことがある」

北川が俺を指差しながらのたまった。

祐一「手短にしてくれ。長話の後で疲れてるんだ」

北川「ああ」

北川「相沢! いまから俺が主人公だ!」

ピシッ!(左ジャブ)

ドスッ!(右ストレート)

バキッ!(後ろ回し蹴り)スネークコンボ3HIT!

祐一「いきなりなんだ! 殴るぞ」

北川「蹴りまで入れておいてよく言うな……」

祐一「細かいぞ」

北川「ふむ、それも一理あるな」

一理どころか、理不尽以外の何物でもない。

やはりこいつは馬鹿だ。

北川「まあ、そういきり立つな。何もお前のように複数の女の子とウハウハになりたいわけじゃない」

バキッ

カシャーンッ!

北川「ぎゃあああああああ!! 痴態はどこだあああああ!!」

俺のパンチを受けた北川は窓を突き破って、落下していった。

香里「10メートルパンチね」

祐一「香里の100メートルパンチにはまだまだ及ばないな」

ドタッ!

香里「大丈夫かしら?」

祐一「まあ所詮北川だしどっちでもいいんじゃないか」

香里「それもそうね」

肯定するのかよ……。

しかし、マジで死なれたらまずいな。

落とすつもりはなかったため、俺は少しびくついていた。

下には植え込みもあるし、死ぬことはないとは思うが。

斎藤「おいっ、頭から地面に刺さってるぞ!」

スライムA「血だらけよ」

くさいにおいの会会長「ぴくりとも動かんな」

カトー「カルタゴは滅ぼさねばならない」

教室のざわめきに混じって、聞きたくないような北川の惨状が聞こえてくる。

ところで、うちのクラスには斎藤以外まともな人間はいないのか?

(注)香里→大悪党、名雪→雪ん子(『名雪覚醒』をよろしく)

北川→馬鹿

ぴろ→かわいい・抱きしめたい・ぬいぐるみ欲しい

最後に意味不明なものが混じっていた気がするが、とりあえず不問に処す。

秋子「大丈夫ですよ」

祐一「あ、秋子さんっ!?」

秋子「事故だし、祐一さんはまだ未成年ですから」

祐一「それもそうですね」

祐一「ところで……」

秋子「買い物途中に寄ってみただけですよ」

祐一「…………」

心を読まれたようだ。

秋子「わたしは『八甲田山死の彷徨』のお話のほうが良かったです」

それだけ言うと秋子さんは帰っていった。

廊下側の窓から飛び降りたような気もするが、きっと錯覚だ。

祐一「一体いつからいたんだ?」

相変わらず謎な人だった。

香里「さすがにあたしのプロトタイプだけあって、神出鬼没ね」

祐一「お前はお前でさらっと爆弾発言するな」

香里「文字通りよ」

祐一「頼むからこれ以上KANONの世界を壊さないでくれ」

香里「嫌です」

祐一「頼むから俺とあゆの世界を壊さないでくれ。舞はどうでもいいから」

俺はさりげなく言い回しを変えてみる。

香里「了承(ケンミジンコ1億匹分)」

祐一「…………」

何がどうなってるのやら。

北川「相沢!」

げっ、何で生きてるんだ!?

祐一「貴様、今までの北川ではないな」

北川「ふっ、主役になるためなら俺は鬼(エルクゥ)にもなる」

祐一「何っ、お前悪魔に魂を売ったのか?」

北川「もののたとえだ。そんな脆弱な化物に興味はない」

誰かこの暴言野郎達(含、香里)をギャルゲー界から追放しろ。

香里「誰が野郎よ?」

無視だ。無視。

祐一「なら、どうして助かったんだ?」

北川「たしかに、今までの俺なら今の墜落で死んでいただろう」

北川「だがっ!」

北川「今の俺はギャグキャラだから死なないのだ!」

祐一「…………」

今俺はここに一つの答えを出した。

フ○ーザ対両○勘吉……北川の理論で行くとフリ○ザは両津●吉に負ける。

祐一「いや、違うだろう」

北川「なにか言ったか」

祐一「ただの妄想だ」

北川「何っ! 妄想と鼻血はギャグキャラの特権だ。貴様にはやらんぞ」

北川「ましてや後輩に鉄棒またぎをさせていいのは俺だけだ」

俺はそんな痴れ者みたいなことはやりたくない。

祐一「俺にはそんな野望などない。もうあゆとの平穏な毎日を過ごさせてくれ」

北川「ふむ、あゆちゃんか。彼女は学校にはこないし、俺には無関係だな」

北川「よしっ、許可する」

北川「オフィスなり、ものみの丘なり、塹壕なり好きなところでAでもBでもCでもDでも楽しんでくれ!」

チーン!

北川「はうっ! な、何をする」

祐一「いちいち気に障ることを言うからだ」

というか何故そんな変なところで恋愛をしなければならないんだ。

北川「ギャグキャラにだって痛覚はあるんだぞ……」

祐一「五月蝿い。どうも今日はおかしいと思ったらお前がギャグキャラになったせいか」

さっきから『風の辿り着く場所』が流れているのもこいつのせいだろう。

祐一「主役なんかくれてやるから好きにしろ」

俺は去り際にもう一発股間を蹴り上げてやった。

まったく、主役なんてどうでもよかった。

俺の側にはあゆがいてくれるのだから。

 

 

北川「ふふふふふ。はっはっは」

来た。ついに俺の時代が来たのだ。

しかし、せっかく主役に返り咲いたのだ(嘘つけ!)。

とりあえず誰かを攻略しよう。

うむ、シナリオもないことだしそこにいる美坂なんかが手ごろだろう。

北川「どうだ美坂、主役になった俺への印象は変わったか?」

香里「全然」

北川「な、何故だ。俺は不死の体を手に入れて、しかも主役になったんだぞ」

北川「何故こんなグレートな俺様に振り向かないんだ!?」

美坂は俺を見下すように笑った。

香里「北川君は何も変わってないわよ」

北川「な、美坂、お前は俺のことをどう思ってたんだ?」

香里「地味なキャラクターだけどいらない時だけ目立つ人」

北川「…………」

北川「それは一体……?」

香里「言葉通りよ」

美坂はそれだけ言うと教室を出ていった。

なんてことだ、せっかく主役になったのに、いきなりふられちまったぜ。

まあ、よく考えれば、何もギャルゲーの主人公になることもないのだ。

俺はどちらかといえば学園ドラマの主人公の方が合っている。(そうか?)

よしっ、明日からこそ俺のサクセスストーリーを始めよう!

俺はそう自分に言い聞かせて教室を出た。

 

声「あの……」

校舎から出る前に俺は一人の女子生徒に声をかけられた。

いじめで心を閉ざした少女、天野美汐だった。

俺が明日からの学園ドラマでまず助けることになる女生徒だ。(マイ設定)

美汐「主役になられたんですね」

北川「ああ。祝ってくれるのかい?」

こいつはあの極妻(香里)より礼儀をわきまえているらしい。

美汐「いえ、ただ訊きたかったんです」

北川「何を?」

美汐「どうしてそんなに主人公になりたいんですか?」

北川「どうしてって、主人公は人気が出るものだからだ」

そんなの当たり前だろう。

美汐「そうでしょうか?」

北川「そうだとも」

美汐「私は脇役のままでいいです。脇役にだって生き様を見せつけることはできるんですよ」

美汐「私は形だけの主人公より、そういう脇役になりたいです」

美汐「北川さん。あなたには手も足も顔もあるんですよ」

美汐「あがくだけあがいてください。それが脇役というものです」

美汐「北川さんは胸をはれるほど脇役としてあがきましたか?」

北川「…………」

俺は何も言えなかった。どうしてそんなことに気がつかなかったのだろう。

俺は……まだ脇役としてあがききってない。

脇役がどうしたっていうんだ。

俺達脇役のなかには倉田佐祐理という前例がいたじゃないか。

そんなことを忘れて、ただ形だけの主人公にこだわったなんて俺は馬鹿だった。

北川「天野、俺が間違っていたよ。主役は相沢に返す。俺はまだあがいてもいない」

美汐「そうですか。どうするかは北川さんが決めることです。それでは私はこれで」

北川「ああ、じゃあな」

俺は間違っていた。

脇役にだってやれることはあるじゃないか。

そして俺はこの夕暮れの校舎に誓った。

脇役として

北川「天下をとるぞーっ!」

声「ほう、それは面白い」

声2「みせつけてくれるね」

声3「ヤキを入れてやるか?」

そこには3人の男達が立っていた。

クラスメイトの斎藤。

生徒会長の久瀬。

そして、担任の石橋だった。

北川「あ、あの、何でございましょうか?」

ただならぬ雰囲気に俺はたじろぐ。

久瀬「斎藤君から訊いたんだよ」

石橋「お前相沢から主役を奪ったらしいな」

久瀬「しかも、こともあろうか僕の唯一の出番である川澄さんをいらないと宣言したそうだね」

それを言ったのは相沢だ。

斎藤「手も足も顔もあるお前がそんな大それたことを望むなんて腹が立ったぞ」

北川「ま、待て。主役は返す。俺は脇役としてあがくことに決めたんだ」

斎藤「そうは問屋がおろさねえぞ北川」

久瀬「君と違って僕らにはあがくことさえ許されないんだよ」

石橋「あの火星の猫のようにな」

石橋「そんな我々の存在を無視して、主役を望むとは言語道断。お前の立場をしっかり教えてやる」

逃げようとしたが、俺は3人に取り押さえられた。

斎藤「どう料理する?」

久瀬「こんなこともあろうかと図書館で借りておいたいい本がある」

久瀬が鞄から何かを取り出す。

久瀬「これだ」

『宦官』

北川「ちょ、ちょっと待て! それはないだろう」

久瀬「ん、ああ間違えた」

北川「ほっ」

なんてものを置いてるんだこの学校の図書館は……。

久瀬「これだ」

『拷問術大典』

(柏木千鶴著 鶴来屋出版)

石橋「久瀬、いい物を持ってるじゃないか」

久瀬「ええ、うちの妹達に実践する前に実験してみたかったんですよ」

外道生徒会長め、家ではそんなことやってたのか。

斎藤「うちのクラスの美坂の部室に拷問道具はたくさん置いてあったぞ」

久瀬「ああ、あのクラブか。生徒会長権限で使わせてもらおう」

美坂あああああ! いなくなっても俺に害をなすのか!?

俺はこのあとカオナシ逆恨みトリオから地獄の責め苦を受け、最後に27個に解体された挙句、

腕立て伏せ1000回を強制された。

 

 

そして次の日

名雪「祐一知ってる?」

祐一「なんだ名雪」

名雪「昨日北川君が27個に解体されて捨てられてたらしいよ」

祐一「そうか、でもギャグキャラだからいずれ復活するだろ」

名雪「うん」

名雪は心配ないねと言うように笑った。

なるほど北川が死んでくれてるおかげで平穏な日々が戻ってきたようだ。

(注)北川が美汐に諭されたからです。

出来れば永久にKANONの世界から欠番していてもらいたいものだ。

香里「はぁ」

祐一「どうした香里。北川が消えてくれたのに浮かない顔して」

香里「相沢君知らないのね」

祐一「何を?」

香里「北川君はね、ギャグキャラらしく『プラナリア』の属性を持っているのよ」

な、何いいいい!

祐一「と…いうことは…」

祐一「奴が27人になって帰ってくるのか!?」

い、嫌過ぎる。

さらにたちの悪いことに

これが俺の初夢だった。





(言い訳)
 二次創作やっていた中で最大の汚点です。
 もう何も言いません、ていうか言えません、これに関しては。
 こういうのを書くと読者を怒らせるという反面教師にして下さい(汗)

 そういえば、この頃ってジャムネタ・ジャムオチがまだまだ盛んだったなあ……。




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