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栞ちゃんにパジャマを着せてリビングのソファに寝かせた。 両親はいまだに帰ってこない。 栞ちゃんの治療費を稼ぐために両親は仕事で無理をしているそうだ。 治ったといっても完治したわけではなく、その後の経過観察やら何やらでまだまだ医療費はかかるのだろう。 借金もあるのかもしれない。 そして、美坂も奨学金を得るために無理な勉強をしているという。 学年一位の女が背負ったもの……重過ぎるよな。 「あはは……のぼせちゃいました」 「ゆっくり寝てなさい。ごめん……ね、栞」 「……」 「本当、自分の胸の大きさを自覚してください。息できませんでした」 「胸……って」 「でも、これで今日の一件はおあいこですね」 またも悪戯っぽい不敵な笑顔を浮かべ、あっさりと許されてしまった。 ……もしかしたら、無視の一件もこんな感じで、あっさりと許されてしまったんじゃないだろうか? 恨み言を口にする栞ちゃんの姿なんて想像できない。 仮に口にしたとしても、それこそのぼせた一件のように不敵な笑顔でおどけながら言う光景しか浮かばない。 だが、美坂の性格では自分自身を許せなかったんだろう。 なまじ責められない分、辛いのかもしれない。 罰を求める責任感の強い姉と、そんな考えがはなから頭にない優しい妹。 難しいな。何とかならないだろうか? 俺なんかにできることはあるんだろうか。 ………。 ……。 …。 深い思考に陥っていた意識は、突然に鳴り響いたベルによって覚醒した。 「はい、きた……美坂……です」 『……北川……君?』 「ああ美坂か、どうした? ……って」 栞ちゃんが傍にいることを思い出し、咳払いして言い直す。 「あら、北川君じゃない。どうしたの?」 『……』 絶句。 無理もない。美坂の声とはいえ俺が女言葉で話すのだ。引いたとしても文句は言えまい。 『……様子はどうかなって』 こちらの状況を察したのか、変に追求はしてこなかった。 「ん…まあ何とかやっていけてる……わ。栞も元気、安心して」 風呂でのぼせてしまったわけだが、それを話せばご一緒した事も話さねばなるまい。 ややこしくなるので今は黙っておこう。 ……問題を先送りしてるだけだな。 『…そう、よかった』 安堵の声。姉が妹の事を想ってないわけがないんだよな。 問題は、ふたりに残るわだかまりなんだろう。 「そっちはどう?」 『……こっちは、ちょっと』 「どうした……の?」 何だ? 美坂にはなにか問題あるのか? 『その…こういう状況だから、北川君にしか頼めないことなんだけど』 口調は普段の美坂のそれだった。この時間ならまだ父さんは帰ってきていないため、ひとりきりなのだろう。 それにしても、俺にしか頼めないとはどういうことなのだろう? 俺を信頼してくれているのか? 『あ、あの……』 そうか、それならその信頼に答えよう。 過ぎてしまった時間を悔やんでも仕方ない。これからできることを考えよう。 『……え、ええと……』 早く話すのだ、美坂よ。 『あの、その……』 俺は、お前達のためならどんなことでもでもしてやる。 『……Hな本の隠し場所、教えてくれない?』 「……」 美坂姉妹が背負っているものに直面して芽生えた厳粛な気持ちはあっけなく吹っ飛んだ。 『……アレするときっておかずが必要だから、男ならみんな持ってるんでしょ?』 「……」 『その、アレは男なら誰でもすることだから……』 「……」 頭痛がしてきた。頼む美坂、お前黙ってろ。 『おしっこは狙い定めるのが大変だったけど立ったまますぐにできて便利だなとか思ったんだけど……』 「……」 『拭いたら先っぽが変な感じして、ちょっと元気になっちゃって、収まらなくて』 ……んなモン振るっときゃいいんだ。 『ほら、あれ…生産は止まらないわけだから、溜めるばかりじゃ健康にも悪いのよ。きっと』 確かにそういうものなんだけど。 そう言えば手持ちのエロ本に飽きてしまったため、ここ数日は処理してないから溜まっていたはずだ。 『定期的に出さなくちゃ…』 「……」 『き、北川君? もしや放置プレイ?』 何故そんな言葉を知っている。 「自分の体でも思い出してりゃいいだろ……」 頭痛を堪えながらどうにか返答した。 『そ、それはちょっと』 ……そりゃそうだ。 俺だったら自分のナニを想像して……。 体の奥が僅かに熱く疼いた。 なに考えてるんだ俺は。美坂の体も、それに反応するな。 脳裏に浮かんだナニを必死で追い出す。 俺にそんな趣味はない。 だが、男と女では体だけではなく脳の構造も違うという。 だからだ。俺自身にそんな趣味はなくても美坂の脳や体が勝手に反応してるだけなんだ。 もしかしたら…栞ちゃんがこんなにもいとおしく感じるのも、脳が美坂のそれだから、その影響なのかもしれない。 『きゃあ!』 電話越しに美坂の悲鳴が飛び込んできた。 「ど、どうしたんだ?」 近頃はなにかと物騒だ。強盗でも入ったか!? 美坂の元に駆けつけようと足腰に力が入る。 しかし、いま俺は女なわけで腕力は心もとない。 そこらじゅうに目をめぐらせ戦闘態勢をとるための武器になりそうなものを探す。 『すごい…本当にこんなところが固くなってる』 「……」 自分の体を脳裏に浮かべて俺のナニが戦闘態勢になってしまったのか。 我が愚息よ、少しは節操ってものを持て。 『今、動いた…びくんって』 美坂、テレホンSEXみたいな真似は止めてくれ、頼むから。 『び、びくって…』 「美坂ぁ〜」 『えっ…? あっ、ご、ごめんなさい。今度は大丈夫。ちゃんとするから』 「うわっ、救いようがねぇ」 後でしろ…。というか『ちゃんと』というのは、どう『ちゃんと』するのか甚だしく気になる。 『こんなのあたしの体じゃない〜〜〜』 その通り、俺の体だ。 もしや、美坂は美坂で、俺の脳、俺の体、そして俺の性欲の影響を受けてこうなってしまってるんだろうか? なりたての男ゆえに、美坂も未知なる感覚に翻弄されているんだろうか? 「大佐、性欲をもてあます」 ……違う。 「ブルータス、お前もか」 男ってどうしようもない生き物だな……。 「あの、お姉ちゃん?」 「……栞? どうしたの?」 「電話の相手って北川さんですか? でしたら替わってもらえませんか?」 「オレ? じゃない、北川君に? いいけど」 改めて、なにやら怪しげな状況にある美坂に話しかける。 「栞……が、あんたと話したいそうよ」 「あんたと……え? だ、誰と?』 「『北川君』と話したいそうよ、さっきみたいなバカなこと言わないでね」 『……』 『わかったわ、替わって』 しばらくの沈黙の後、神妙な声でそう言った。 美坂は男の性欲にさいなまれ混乱していたが、俺が『北川君』と強調した事でようやく状況を把握したようだ。 栞の名が美坂に活を入れたらしく、妙に上ずった感じはなくなっていた。 やんちゃな我が愚息もようやく真面目になり大人しくなったようだ。 受話器を渡す。 「栞です。あの……電話越しでこんな話は失礼なんですけど、 でも、面と向かって言うのはちょっと恥ずかしいので…… 聞いてもらえますか?」 美坂からの返答の間の後、続ける。 「私、たくさんの人から生きる力をいただきました。 その力の一つが欠けただけでも、私は生きていられなかったと思います」 一旦深呼吸する。 「そして、力をくれた人のひとりが北川さんなんです」 真っ暗な部屋の中、俺は眠る事ができないでいた。 枕が替わったせい……などではない。 栞ちゃんの話が俺に衝撃を与えていた。 相沢は栞ちゃんの背負った運命を知った上でなお普通に接していた。 それがあの子の望んだ事だからだ。 だが、相沢はどうしても悲壮感が抑え切れず、それを察してしまった栞ちゃんが気を遣うことも少なくなかったらしい。 あの子は入院しがちのため人間関係は非常に狭かったそうだ。つまり接する事ができる人の大半は家族や医師、看護婦さんといった深い事情を知る者で占められたことになる。 周りの人間が、自分が長くない事を知った上で辛い思いを堪えて接してたとしたら、その生活は非常に窮屈なものだったろう。 だから、何も知らず本当に普通に接していた俺や水瀬が与えたささやかな日常はあの子にとって心底心地よいものだったそうだ。 あの子が受けていた治療は、手術の痕跡からも想像できたようにとてつもない苦痛を伴うものであり、成功率も絶望的に低いものだったらしい。 それこそ、奇跡を期待するしかないほどに。 だから治療は諦め、死は回避できないとしても苦痛だけは抑えて残された時間を穏やかに過ごせるようにする方針を取っていたそうだ。 少なくとも、その方法には確実性があるのだから。 だが、相沢と過ごす時間があの子を変えた。 絶望的なまでに分の悪い賭けだとしても、生きたい、そう考えるようになった。 治療を決断する勇気も、耐え抜く気力も相沢が与えたのだ。 そして、その相沢との出会いは俺が取り持っていた。 3学期の初めごろ、授業中に何気なく中庭を覗き見てあの子を見つけ、妙に気になり相沢にその存在を伝えた。 栞ちゃんと相沢の付き合いはそれがきっかけだった。 あの何気ない行動が姉妹の運命を大きく変えていたのだ。 美坂姉妹に何もしてやれなかった無力感に苛まれていたが、なんだか気が軽くなった。 そうなんだ、自分にできることをするしかない。それでいいんだ、焦ることなどない。 栞ちゃんに勇気や気力を与えるのは相沢の仕事、そして、その出会いを取り持ち、ささやかな日常を与えるのが俺の仕事、それでいいんだ。 これが最良の役割分担だったのかもしれない。 問題はこれからだ。俺にできることは何があるだろう? そうだ、来年の舞踏会に美坂チーム全員で参加しよう。この調子なら栞ちゃんも参加できる体力がつくだろう。 でもその前に、進路を気にせず参加できるように勉強を頑張るか。 っていうか、まずは元に戻らないと話にならないか。 ……。 ……俺、美坂であり女……なんだよな? 色気のない白のTシャツ越しに胸を触ってみる。 窮屈なのでブラはしていない。というかつけ方がわからないのだが。 心地よい重みと柔らかさ、かすかな弾力。 これでもかと言わんばかりに女体であった。 美坂は俺の体で、今ごろは俺のコレクションや豊満なこの体を脳裏に浮かべ『処理』している事だろう。 いや、もしかしたら栞ちゃんの体かも…。って、バカな事は考えるな。 ……。 俺も、させてもらってバチは当たらないよな? お互い様だもんな。 手をそろりそろりと毛玉だらけのジャージに突っ込み、股間に導き……。 ……。 なんだか、栞ちゃんの話を聞いたら頭の中が真面目な方向にしか向かわず、なかなかその気にならない。 やめだ、やめ。 ノックの音 股間に這わせていた手を慌てて引き抜いたため、またも敏感な部分を思い切り擦り上げてしまい……、 「んくぅっ……!!」 やっぱり、なりたての女ではこの刺激には慣れることができない。 「お姉ちゃん、入っていい?」 「はっ……はひぃ」 でも、刺激の余波を堪えながら、どうにか返事ができた。 「……」 大きな枕を抱えて俺を見ていた。 「どうした……の?」 ドクン まださっきの刺激が体内でくすぶっていて火照りに変化してきた。まずい、まずいぞ。 立ち去れ、立ち去るんだ体の火照りよ。 「久しぶりに、一緒に寝てもいいですか?」 「なっ……!」 なにやら胸の鼓動が早くなったような気がする。 おいおい、落ち着け美坂の体。妹なんだぞ、妹!しかも血が繋がってる! それに女同士だ。 あ、いや、そういう問題じゃない! でも、俺にとっては異性の可愛い子で惚れた女の妹で相沢の彼女で。 どうやら、女の肉体と男の精神がぶつかり合ってショートしてるみたいだ。 「駄目……ですか?」 くうう、この顔には弱い。 「……おいで」 変なこと考えるなよ、俺。美坂の体も変な反応はしないでくれよ。 そう祈りながら布団を上げてやると、栞ちゃんははにかみながら潜り込んできた。 栞ちゃんの満面の笑顔を見ると火照りはあっさり収まり、それとは違った温かいもので胸が満たされる。 幸いにして、俺の精神にも美坂の脳にも近親相姦や同性愛のプログラムはないようだ。 「ふふ、あったかい」 ごく自然に頭を撫でてやれる。この温かい気持ちは兄や姉が妹に対して抱くもので間違いなさそうだ。 考えてみれば、俺が妹と一緒に暮らしていた頃はこんな感じで一緒に寝てたっけ。 寝てる間にあいつが俺の布団に潜り込んでる事がよくあったな。 それにしても同性愛って……男女で入れ替わった場合はどうなるんだろうな? 「……」 なでなでに心地よさそうにしていた表情にかすかな陰りが入る。 「私、お姉ちゃんにたくさん迷惑かけてますね。 私のせいでお勉強は大変になったし、 他のみんなみたいに旅行とかできなかったし」 「まだ言ってるの? もういいって。家族なんだし、 きょうだ…姉妹なんからどんなに迷惑かけたっていいの。 だいいち、迷惑だなんて思っていない……わ」 本来は他人に過ぎない俺がこんなことを言うのは差し出がましいとは思う。 でも、妹に対する美坂の想いを考えたらきっと同じことを言うと確信している。 「……お姉ちゃん」 すっ……と伸びた手が俺の頬に触れる。 あたたかい。 妹が元気になったなら、あいつともこんなことができるだろうか? …無理か。もう、俺たちは大きくなってしまった。男と女じゃまずいよな。 あと、あいつも俺と父さんに迷惑かけてしまったと負い目に感じるだろうな。 気に病まないようにうまくフォローしてやらなくては。 栞ちゃんの体に手を回す。すっぽりと両手の中に納まってしまった。 改めて、この子の小ささ、そしてこの小さな体で背負っていたものを実感した。 「強いね、栞」 だが栞ちゃんはゆっくりと首を横に振り、俺の頬に当てていた手を引っ込めた。 そして手首をむず痒そうに擦る。 「もう傷はよく見ないと判らなくなったけど… 私、あんな馬鹿なことをしてしまいました。強くなんてないです」 馬鹿なこと……いったい何だ? 「お姉ちゃんが無理してるのも私のせいだって知って、 もう迷惑かけられない、誰も苦しませたくないって思って 早く、いなくならなくちゃ……って思って」 ……!! 手首に傷があるってことは、まさか……!! 「でも血が出てきたときに、昼に出会った祐一さんとそのお友達のこと を思い出して、今の自分がどうしようもなく惨めに思えて… つられるように笑って、本当に久しぶりに笑って… 次の誕生日まで生きられないって お姉ちゃんに教えられた時にも流さなかった涙が流れて… 笑って出たはずの涙が止まらなくて… もう、おかしくもないのに涙が止まらなくて 自分が、悲しくて泣いていることに気づいて そして、ひとしきり笑ったら…腕、切れなくなっちゃいました」 そんなことがあったのか。相沢がそうやって支えていたのか。 「そのあとお姉ちゃんが私の部屋に駆け込んできて、 手首から出た血を見て私をひっぱたきましたよね。 ……手首より痛かった。あのときの泣いてたお姉ちゃん見て、 自分がどれだけ馬鹿なことしたのかって思い知らされて」 そうか。無視していたとしてもやっぱり妹を気にかけていないわけがなかったんだな。 「あれから、どんな顔してお姉ちゃんと話していいかわからなくて、 お姉ちゃんが学校行ってからは家で一人ぼっちで」 これは本来なら美坂が聞くべき話だ。 どんな形であれ人生を共にする覚悟を決めた者が聞くべき話だ。 これを聞かされた俺も、どんな顔して美坂に会えばいいんだろう? 美坂に話してやるべきだろうか? 「これからどうしていいかわからなくて。 ふらふらとそこらじゅうを歩きながら、 残された時間で何していいか、何ができるか考えて 気付いたら、ふらりと学校の校庭にいて そのとき、私はお姉ちゃんと一緒に学校に行きたかったんだって思い出したんです。 でも、ずっと休んでたから中に入る勇気が出せなくって そんなときに中庭に現れたのが祐一さんだったんです。 これが運命なんだと思って、残された時間で学園生活を精一杯楽しもうって思って …でも、そうしてるうちにもっともっと皆さんと一緒にいたいって思うようになっ ちゃいました。欲張りですね、私」 「そう……だったの」 あの時点では、治療はまだ決断できてなかったのか。 改めて、俺が取り持った相沢と栞ちゃんの縁の重さ、そして俺たちがもたらしたささやかな日常の価値を実感した。 「あの時の祐一さんのお友達とは、全然会えていないんです。 だから、今日お姉ちゃんと北川さんにぶつかった人がそっくりだったんで……」 …なるほど、姉の介抱ではなく突き飛ばした奴の追跡を優先したのはそのためか。 「お礼、ちゃんと言わないとね」 「……はい」 栞ちゃんの背中に回した手に力を込める。 心地よい温もり。もし俺も女だったなら、大きくなった今でも妹とこんな温もりを味わえたのかな。 「ずっと、こうしていられるといいね」 このまま元に戻れなくたっていい、そんな考えが一瞬だが脳裏によぎった。 「…そうですね。でも、一緒に寝るのは今夜で最後にします」 「……え?」 「お姉ちゃんに甘えるのはこれで最後です。私、自立しなきゃ」 ぐっと両手に握りこぶしを作り、闘志に満ちた顔で言った。 「お、おいおい」 「お姉ちゃんは、私のせいでたくさんのことを我慢してきたんですから お勉強の事は仕方ないです。それでも、自分自身の人生を考えて、 自分のしたいことをして欲しいんです」 「……」 「私、知ってます。お姉ちゃんに好きな人がいること」 「えっ……!?」 「…私に遠慮して我慢なんかしないで、もっと自分の人生を楽しんで欲しいです。 私、祐一さんたちと一緒にいられてすっごく楽しい。 でも、お姉ちゃんが我慢してたら意味がないんです。 だから、お姉ちゃんに甘えるのはこれで最後」 そう言って俺の胸に顔を埋めた。 心地よい温もり、胸いっぱいに広がる温かい気持ち、満ち足りた思い。これが最後なんて。 ……だとしたら、俺が受けていいものではない。 確かに、栞ちゃんだって自立しなければならない時がいつか来るだろう。 でも、最後の温もりは姉である美坂が味わうべきなんだ。 ……。 「…寂しいこと言わないでよ。せっかく一緒にいられるようになったんだから、もっともっと甘えてよ」 「……でも」 「オ…あたしが、栞を可愛がりたいの。これが、あたしのやりたいことなの」 そうだよな? 美坂? 「そんなに焦る事ないわ。しばらくはシスコンってからかわれるくらいにべったりでもいいじゃない」 焦ることはないさ、お互いに。 「お姉ちゃん…」 「それに」 ぷに 「きゃ!」 栞ちゃんの可愛い胸をつつく。 「まだ胸がこんなに小さいのに自立なんて十年早いわ」 …俺、とんでもないことしてるな。 「えぅ…胸は関係ないじゃないですか。そんなこと言うお姉ちゃん嫌いです。 私、なんかお姉ちゃんに吸い取られてます。返してください」 そう言って栞ちゃんはまたも俺の胸に顔を埋めた。 ぐりぐり〜と胸に埋めた顔を左右に振る。 妹から吸い取るという言葉で、苦しいような、すまないような、胸が締め付けられるような思いがよぎった……って、 「あ、ちょっと……だ……め」 む、胸が揉まれて、乳首が擦れて……いいかも。 って、そういう問題じゃなくて。 ぁん、だめ、もっと……って違う! 血の繋がった姉妹で、いや、男と女で、惚れた女の妹で、そもそも親友の彼女とこんな破廉恥な事。でも女同士で。 あ〜! わけわからん! ……美坂にばれたら半殺しじゃすまないな。 でも、これでいいんだ。 この温もりを美坂にバトンタッチするチャンスができたんだから。 色々と出すぎた真似をしてしまったが、悪い方向に向かったりはしないよな。 これで姉妹の溝が少しでも埋まるといいんだが。 それにしても、美坂には好きな人がいるのか…。 そりゃそうだよな。俺なんかより頼りがいのある男なんていくらでもいる。 それでも、俺はこの姉妹の傍にいたい。支えてやりたい。 …なんだかストーカーみたいだが、この気持ちは揺らがなかった。 ………。 ……。 …。 次へ 戻る |