供養と言うわけではないが、習慣になってしまった。
勉強しようとしても…いつの間にかあいつの事を考えながら、こうして椅子にもたれかかってギコギコと揺れている。
この前、『命を見つめて』という本を読んだ。
俺とほぼ同じ歳で亡くなった、加奈という病弱な少女の闘病日記だ。
出版のため日記を清書した彼女の兄、藤堂隆道氏が冒頭にこうコメントしていた。
『死はいわゆる消滅とは異なる、と思う。
誰かが生きたという証拠は、別の誰かの心の中に残っている訳で、
もしかしたらその記憶は、当の人間に何らかの生きる力を与えるかも知れない』…と。
あいつの場合も、そうだったのだろう。
あいつは消えた、消滅した、だが…
俺達の心の奥深くに入り込み、心の中に沢山の物を残していった。
一生忘れない名前。
かけがえのない俺の妻。
この日思い出したのは、あいつと一緒に風呂に入った日の事だった。
まだ俺が、あいつが背負っていた過酷な運命を知らずに、呑気にいがみ合っていたあの頃。
そして発熱し、色々な事を忘れて純粋無垢な子供のようになってしまったあの頃。
真琴「ん〜極楽極楽♪」
祐一「そうだろうな」
真琴「…え?」
真琴「…え?」
祐一「
真琴「…え?」
祐一「ほら、端に寄れ、狭くて入れないだろう」
しかし…何で頭を洗っている俺に気付かず湯船に飛び込めるんだ?
そんなに疲れてたんだろうか?
今日の真琴は、まるまる一日保育所のバイトだったのだ。
真琴「………き」
祐一「?」
悲鳴と共に、
真琴に食事を取らせ、今は名雪が風呂に入れている。
真琴は、ひとりではもう何もできなくなってしまっていた。
そう言ってお茶を出してくれた。
祐一「そんな事ないです」
7年前も、今も、俺があいつを連れてきて色々と迷惑を掛けている筈なのだ。
それなのに、秋子さんは優しく微笑んでくれた。
そうなのだ、俺達は家族なのだからそんな気遣いなどいらなかった。
普通の事だったのだ。
さすがは秋子さんだ。この大変な事態も、こう言って受け入れてしまっている。
真琴「あぅ…」
ドタドタと廊下が騒がしかった。
祐一「うおっ!」
祐一「お、お前ら…。なんつー格好だ…」
ふたりは全裸だった。
風呂に入ってた筈だから当然だろう。
それでも、やっぱり秋子さんは動じなかった。
タオルが擦れる音がした。
俺が目を逸らしてる内に、名雪は体にバスタオルを巻き直して、真琴にも巻こうとしたようだ。
だが…真琴は俺にしがみついてきた。
真琴「あぅ…祐一…」
悲痛な声だった、俺が目を逸らした事で不安になってしまったのだろう。
仕方なく、ふたりの体が視界に入らないように注意しながら向き直った。
祐一「え?」
祐一「一緒って、風呂か?」
祐一「おいおい…年頃の男女が…まずいだろ」
何度も俺の方から真琴の入浴中に乱入しておいて何を言うか! と言う突っ込みはやめて欲しい。
あれだけ元気だったからこそ、からかい甲斐があったのだ。
今の真琴は…見ていて辛い。
…されてしまった。
前の方は名雪の担当だ。
そりゃそうだ、前の方は…愛し方は知ってても (
おいおい!
)洗い方は知らない。
大体、家族だからといって、男の俺がここを洗う訳には…なあ?
変な所に触ってしまいそうなので、目隠しする訳にもいかない。
秋子さんに了承されても、名雪も交えて本当に裸の付き合いをする訳にもいかず…
俺はTシャツ短パン、そして名雪は…
何でスクール水着なんだ?
祐一「…納得」
名雪は長い髪をリボンでまとめていた。さっきは結ぼうとしている真っ最中に真琴が飛び出したらしい。
名雪「真琴、気持ちいい?」
真琴は心地良さそうにしている。
あの頃が嘘のように、素直に俺達に身を任せている。
俺と一緒に居たい、その思いを純粋に俺にぶつけてくる。
悲しかった。
その純粋さが、素直さが悲しかった。
口が悪くて、あまのじゃくで、毎晩俺に攻撃を仕掛け、事ある毎に突っかかってきた真琴。
俺は、元気なこいつにどうしようもないくらいに惹かれていた事を痛感させられた。
祐一「あの頃みたいに半殺しにされた方がマシだ」
憎たらしくなるくらい元気だったあの頃…
…真琴と一緒に風呂入ったのは初めてじゃない。
だから…あいつが死んだ事を、うまく受け入れられない。
グラ…
祐一「うわっ…!」
祐一「痛ててて…」
椅子のバランスを崩して、ひっくり返ってしまった。
祐一「うぅ……」
頭を打った、だからとても痛い。
だからだ、涙が出るのはその為だ。
悲しくなんてないんだ。
悲しくなんて…
………
……
…
祐一「うぅ…」
祐一「真琴ぉ……」
作者 OLSON
供養と言うわけではないが、習慣になってしまった。
勉強しようとしても、いつのまにか物思いにふけってしまう。
あの時、相沢さんに『強くあってください』と言った。
実際に元気でいるようだ。
この前も、私と軽く冗談を交わせていた…
私も、相沢さんも、お互いにカラ元気のような気がする。
そして…
あの子達に会えるのではないか?
このままではいけない、そう思いながらも。
大切な私の友達。
ほんの一時だけの邂逅(かいこう)だった。
相沢さんを拒絶せず、真琴が元気なうちに会って話をしたかった。
だけど…恐かった。
あの別れを繰り返す事に、私の弱い心は耐えられそうになかった。
あの子を失った時の事が、どうしても頭に浮かんでいたのだ。
私とほぼ同じ歳で亡くなった、加奈という病弱な少女の闘病日記だ。
出版のため日記を清書した彼女の兄、藤堂隆道さんは、妹を何よりも大切にしていたのだろう。
日記に書かれていた、加奈さんの彼に対する思いを読むにつけ、私を切なくさせる。
とても、身につまされる思いだった。
私にも、妹がいたのだから。
一生忘れない名前。
かけがえのない私の妹。
生まれてくる事を許してもらえなかった…私の妹。
あの頃の私はとても活発で、男の子と混じって、かなり危なっかしい遊びをしていた。
当時の写真を見ると、私は服装も行動も…まるで男の子のようだった。
目線を下げると、なだらかに続く斜面の向こうに、隣町が見下ろせた。
山の中腹ぐらいなのだろう。振り返れば、まだ木々は延々と高みへと続いていた。
ここでしばらくかけっこをしたりボール遊びをしていた。
そしてあの子に出会った。
遠くに転がっていったボールを取りに行くと一匹の子狐がいた。
私はその子を連れ帰り、治るまで世話をする事にした。
『みちる』と言う名をつけて。
みちる、私の妹の名前。
『両親は体が弱い妹につきっきり、旅行にも行け やしない。妹なんていなければいいのに』
ある年上の友達はそう言ってたが、贅沢な悩みだと思った。
その子には『みちる』という名が用意されていた。
私が二歳の頃に身ごもったのだが、残念な事に流産してしまった。
その後遺症で、子供を産めない体になってしまったそうだ。
私がお姉さんになることは叶わぬ夢だった。
もし生まれて来る事ができたなら、どんな日常が始まっていたのだろう。
どんな姉妹になれたのだろう。
どんな家族になれたのだろう。
色々とお話をして、遊んで、一緒に眠った。
まるで姉妹のように。
ハンバーグに入ってる玉ねぎは、犬や猫には毒になってしまうそうだ。
だからイヌ科の動物である狐にも、毒になるらしい。
作者注!
だが犬や猫には強く効きすぎて、血尿等の症状が出る事があり注意が必要です。
したがって『ぴろ』に肉まんを与えるのは結構危なかったりします。
『みちる』は残念そうにハンバーグを見ていたが、仕方なくドッグフードをかじり始めた。
美汐「みちる、ごめんなさいね」
美汐「あなたが人間だったら良かったのですが」
美汐「
立ち去る途中にもう一度振りかえると、あの子はじっと私を見つめていた。
あの寂しそうな瞳が目に焼き付いて離れなかった。
真水
桶
名雪「きゃっ!」
再会
玉ねぎやニラ等のネギ科の植物には、血液をサラサラにして血栓等を防ぐ健康効果があります。
再会
再会1部
再会2部
再会3部
再会エピローグ
おまけ
(本編とは関係ありません)
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