舞がハンバーグに箸を伸ばす。

その箸をみちるの箸が素早く叩く。

みちる「ぱくぱくぱく♪」

当のみちるは何事もなかったかのような笑顔でハンバーグを食べている。

舞「………」

舞は何も言わずに再び箸を伸ばした。

ずいっ

ぱしっ

みちる「ぱくぱくぱく♪」

舞「………」

もう一度箸を伸ばす。

ずいっ

ぱしっ

舞「………」

みちる「ぱくぱくぱく♪」

さらにもう一度箸を伸ばす。

ずいっぱしっ

ずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっ

ずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっずいっぱしっ

舞「………」

みちる「ぱくぱくぱく♪」

舞「………」

ぽかっ!
みちる『にょげしっ!』

…とはやらなかった。

こんな子供にチョップをかますのは……さすがに大人気ないと思ったのだろう。

佐祐理「はえ〜っ、凄い箸さばきですねーっ」

佐祐理「あははーっ、舞はおかず争奪し合う相手が増えて燃えてますねーっ♪」

舞「…手強い、祐一」

祐一「いや、俺に言われても困るが…」

暖かくなったので屋上に出て昼飯を食べる機会が増えた。

真琴がいない寂しさを紛らわす為に、俺は舞の魔物退治を手伝っていた。

舞とは…あくまでも親友であり、戦友という関係だった。

命懸けの戦いを続ける為に、異なる人格をすり合わせるようにして強い信頼関係を培って来たが…

それが世間一般の男女の感情の入りこむ事を許さなかったのかもしれない。

既に真琴と結婚してるから決して浮気などしない。だから舞は…

 

食えないっ!
食わないっ!
食えるかっ!
……あらぬ想像を逞しくしてみた事はあるけど。

 

祐一「しっかし、二人の大学が近いから時々弁当をここで食うってのは解らないでもないんだが」

舞「…?」
佐祐理「はえ?」

祐一「何で制服なんだ? 他に着る服ないの?」

佐祐理「あははーっ、考えちゃいけませーん♪」

舞「…こんなのや」

舞「…こんなのもあるけど動きづらい」

祐一「動きづらい…って言うか動きがないんじゃないか?」

ぽかっ!

祐一「いでっ! 何すんだよ!」

みちる「ぱくぱくぱく♪」

舞「…祐一の質問に答えているうちに、佐祐理が作ったハンバーグ食べ尽くされた」

祐一「いや、俺に言われても困るが…」

天野「すみません、よく言ってきかせます」

秋子「ハンバーグなら、こちらにもありますよ?」

名雪「遠慮しないで食べてよっ」

真琴「手作りの肉まんもあるよ♪」

春が来て真琴は元気になった。

呆れるほどに騒がしい日々が戻って来たのだ。

真琴は少々緊張しながら舞に肉まんを差し出した。

夜の校舎で俺に攻撃をしかけようとして、舞に切りつけられた事があった。

だから舞が苦手だったのだが。

舞は、真琴の変化に驚きながらも肉まんを受け取った。

真琴「わっ」

なでなで

舞は肉まんを咥えながら真琴の頭を優しく撫でた。

真琴「あぅ…」

真琴は色々と変わった、よい意味で変わった。

積極的に人と関わろうとするようになった。

成長しているのだろう。

この調子なら学園生活も何とかなるだろう…多分…きっと…

秋子さんの人脈は凄い。

こいつらの戸籍を捏造(ねつぞう)してしまったのだ。

戸籍があるのだから正式に入籍もできる…できてしまうのだった。

戸籍の書類を書きこむ秋子さんが悪戯っぽい微笑みをしていた。

嫌な予感がして覗き込むと…

真琴の名字は『相沢』になっていた。

 『どうせ近いうちにそうなるんですから♪』

と、微笑む秋子さんには絶対にかなわないと思った。

その上に真琴をこの学校に入学させてしまった。

元々頭は悪くないらしく、学力は俺達の特訓であっさりと追いついてしまった。

真琴は、ここを卒業した後、資格を取って正式に保母になるらしい。

ちなみに今日の秋子さんは、真琴の入学手続きの為に学校に来ていた。

だが、みちるについては…

さすがにこいつに高校生という設定は無理があるので、小学校に通う事になった。

小学校はここから遠いし、当然昼食は給食である。

このふたりも、これからは大学が忙しくなるからここに昼飯食べに来るのは難しくなる。

だから…残念だが昼食でこのメンツが揃う事はもうないだろう。

そこで…記念写真を撮っておくことにした。

 

 

祐一「佐祐理さん、舞と並んで…もうちょい右」

         そうだ…

佐祐理「あははーっ、ここですか?」

  真琴達が戻ってきた時、こう言ってたな。

舞「はちみつクマさん」

   『人間って変な生き物だね』と。

祐一「で、秋子さんがその隣」

  『思い出がないと生きていけなくて』

秋子「はい、解りました」

『泣いたり笑ったり怒ったり一生懸命になってる』

祐一「真琴とみちるは真ん中に行けよ」

 『バカみたいでちょっとかわいそうだけど…』

真琴「あうっ!」

       『面白そうだね』と。

祐一「で、手前の四人は中腰になって」

       そうかもしれない。

名雪「この位?」

  今もこうして、思い出を形に残そうとして

祐一「あ、みちるは立ったままでいいぞ」

       泣いて笑って怒って

みちる「なんかばかにされてる気がするぅ〜」

    こんなに一生懸命になっている。

真琴「みちるは子供なんだからいいの!」

         確かに…

みちる「まこまこだって子供じゃないかっ!」

      妖狐達の言う通りだ。

美汐「ふたりともけんかしないで下さい」

俺達は思い出がないと生きていけないんだろう。

俺はカメラのタイマーをセットして駆け出した。

俺は秋子さんの隣に向かう。

こうして、泣いて、笑って、怒って…

足が滑った。

祐一「ぐおっ!」

そして無常にもシャッターは切られた。

泣いて、笑って、怒って。

痛い思いをして…

それらを思い出にして…

思い出を、生きる力にしていく。

 

 

…そうだ、確かに人間は、面白い。


再会
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  再会2部
  再会3部
再会エピローグ



おまけ
(本編とは関係ありません)


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