これを最後にするつもりで。
ここに来る途中で散歩中のぴろを見つけた。折角なのでこいつも連れてきた。
天野「
祐一「ああ、そうだな」
祐一「
祐一「
俺は見つけた。
のびてしまった二人の元にぴろが駆け寄る。
少女「んに〜」
それと、もう一人の少女にも見覚えがあった。
天野「みちる? それに真琴?」
みちる? そうか、天野の元に現れていた妖狐がこいつだったのか。
2人とも呆然としながら自分の体を見つめて、手をにぎにぎと動かしたり振ったりしている。
みちると呼ばれた少女と真琴は、ふたりで手を取り合いぴょんぴょんと飛び跳ねている。
祐一「
天野「戻れたんですね!」
そうだった、あの時の天野は名字しか言わなかった。
俺は真琴を優しく抱きしめようと両手を広げた。
今の俺は…素直になれると思う。
しかし…
真琴は俺を素通りして、みちると共に天野に飛び付いた。
祐一「………」
この両手…どうすりゃいいんだ?
三人の少女達は言葉もなく、ただ抱きしめあっていた。
天野の姿は、聖母を連想する程に優しく、そして美しかった。
そして…天野の涙を始めて見た。
………
……
…
真琴が戻って来た事が嬉しくて、素直に抱き締めようとした俺が照れくさくて…
そして…俺より先に真琴に飛び付かれた天野にちょっとだけ嫉妬して…
思わず乱暴な口調になってしまった。
祐一「馬鹿野郎! 心配させやがって!」
祐一「力?」
ぴろが飛び乗った。凹凸の合う最高に居心地のいい頭が戻ってきたのだ。
祐一「力を貸してくれたって?」
真琴「人間って変な生き物だねって」
祐一「そうか…」
ありがとう…
妖狐達、ありがとう。
変だのバカだの、ずいぶんな言いぐさだけど…
こいつらを俺達の元に戻してくれて…
元気にしてくれて…
人間にしてくれて…
一緒に居させてくれて…
ありがとう…
天野は、こう言っていた。
『もしかすると、この街に住む人間の、その半分 ぐらいがあの子たちなのかもしれませんよ?』
そうなのかもしれない。
こいつらは、こうやって人間の世界に入り込んで来るのかもしれない。
暖かいぬくもりがそこにあった。
とくん…とくん…と、力強い鼓動を感じた。
こいつは間違いなく生きていた。
真琴「あぅ…苦しい…」
真琴が窮屈そうに身をよじった時、ちりん! と鈴の音がした。
ここに埋めてしまうつもりで持って来た、真琴の鈴だった。
祐一「そうだ、これ、忘れ物だ」
鈴を真琴の腕に巻いてやった。
俺が何よりも見たかった元気な真琴の笑顔だった。
……
何だか…結婚式で花嫁に指輪をはめるてやみたいだな…
何かを思い出したようだ。
何かを言い出したくて、口ごもっている様子だった。
祐一「真琴…」
じっと見つめ合ってるうちに…
俺は不覚にも…真琴にキスしたくなってしまった…
みちる「んに…」
みちる「…んに…?」
みちる「んに…!」
みちる「もどれたもどれた!」
みちる「んに? 美汐?」
みちる「ただいまっ! 美汐!」
真琴に向けた顔をそのまま思い切り殴られた。
祐一「何すんだよ、いきなりっ!」
あまりの剣幕に、ぴろは逃げていた。
祐一「
祐一「結婚する、って」
祐一「
祐一「
漫画を読んでやった時、真琴はそう願った。
それは、真琴が人の言葉で残した、最後の願い事だった。
間違いなく、真琴の意思だった。
祐一「
祐一「どうするどうする?」
真琴「……」
祐一「
元通り元気になった。それが嬉しくて…俺は泣いていたのかもしれない。
その時だった。
「成る程、いい子ですけど…確かに不器用ですね」
「にゃはははは、ふうふげんか〜♪」
恐る恐る振りかえると…
ぐあ、こいつらを忘れていた。
祐一「お、おい、真琴! どこ行くんだよ!」
そう言ってその場を逃げ出した。
天野「私達のお家に帰りましょう」
真琴「ぴろ、そこの上、もっと上だよ!」
ぴろがヴェールをくわえて飛び降りてきた。
『祐一とけっこんしたい…』
『そうしたらずっといっしょにいられる…』
みちる「なかよきことはうつくしきかな」
真琴はヴェールにくるまったぴろを幸せそうに抱きしめた。
まこまこ…真琴だからか?
このセンス、なんだか他人のような気がしない。
しかし…俺はついでかい…だが、何故にフルネームで呼び捨て?
真琴と同様、妖狐の考える事はよく解らない。
天野「真琴、またあした、遊びましょうね」
が、今日の陽気で見る見るうちに融けていく。
もう、春だからな…真琴が待ち望んだ、春。
くい。
不意に上着の裾が引っ張られた。
祐一「ん?」
祐一「どうした? 真琴?」
祐一「
実は手持ちが心細かった。
体が熱いって…まさか、また発熱したのか?
折角戻って来たのに、また消えてしまうのか?
思わず乱暴に真琴の体を抱きしめた。
祐一「真琴…真琴ぉ…消えないでくれよぉ…」
祐一「いつまでも一緒に居てくれよぉ…」
俺は人目をはばからず真琴を抱き締め、泣いていた。
カエル柄のパジャマだった。
二度目の発熱をした朝、出かける為に着替えさせようとしたが…
脱ぐのを嫌がり、仕方なくパジャマの上にセーターとGジャンを着せたのだ。
この陽気では暑くて当たり前である。
しかし…あの時パジャマは着ていた真琴と共に消えたのに、何故…鈴だけが残っていたのだろう…謎だ。
祐一「…早く帰って着替えようぜ」
Gジャンだけ脱ぐ事は諸事情によりできないのだ。
よかった、脱ぐのを嫌がったのは、やはり気に入ってたからなんだ。
俺に脱がされるのを嫌がった訳ではなかったのだ。
それで安心して…思わずこう言ってしまった。
祐一「
祐一「
発熱してから、真琴は着替えも自力ではできなくなっていた。
だから風呂と同様に、着替えも名雪と力を合わせて行っていた。
真琴の体重がいくら軽くても、女の子の力では重荷だし、秋子さんは色々と忙しい。
なにより、俺がそばに居ないと真琴は不安になったのだ。
みちる「またね〜まこまこ、ついでに相沢祐一〜」
祐一「こらっ! 人聞きの悪い事言うなっ!」
祐一「
それをひょいひょいとかわす俺。
拳に合わせてちりんちりんと鳴る鈴。
その様子を冷静に見守るぴろ。
他愛もないやり取りが戻って来た事が、何よりも嬉しかった。
母「お帰りなさい、美汐、それと…あなたは…?」
夕食の準備ができた。
無理もない。これまで家族として食卓を囲む事などなかった。
みちるは両親を『おじさん』『おばさん』としか呼べず、あくまでも客人という立場を演ずるしかなかったのだ。
みちるは目の前の大好物のハンバーグにも手をつけることもなく、
ただひたすらに、目の前の穏やかな微笑をぼうっと眺めつづけるだけだった。
母「
みちる「………」
父「君の名前は?」
みちる「んに…なまえ…?」
母「そう、お名前」
美汐「教えてあげて」
みちる「みちるはね…みちるっていうの…」
父「みちる…?」
みちる「んに…」
母「そうね、そうだったわね」
父「君はみちるだったな」
母「
両親もあの夜の一件で、みちるの正体について直感があったのだろう。
荒唐無稽な話だが、今のみちるは、あの時と全く同じ姿なのだ。
もう何でもアリだと開き直り、受け入れてしまったらしい。
父「お帰り、みちる」
父「
みちる「うんっ! いただきます」
父「
父「
母「
父「私達の願い、かなっているかな?」
帰宅した。
俺達の家に帰って来たのだ。
母「お帰りなさい、みちる」
みちる「うんっ!」
祐一「
真琴「あぅ…ただいま…」
祐一「そうだ、ただいまだ」
そう言って、わしわしと乱暴に真琴の頭を撫でた。
名雪はまだ制服だった、部活の関係で今さっき帰ってきたばかりらしい。
祐一「わっ! まずい!」
名雪「ねこおおおおおおおおおおおぉぉぉ!」
名雪は真琴に襲いかかった!
祐一「大丈夫、とって食いはしない…
名雪はいつもそうして、遠くから猫を見ているだけだったのだ。
そしてその猫がいなくなった後…
憧れだったのだ。
猫の体から生まれる温もり。
そんな温もりを密着させて、ぬくぬくとそれを感じていたかっただけなんだ。
あいつが切望していたものとは、こんなにもささやかなことだったんだ。
祐一「ただいま、秋子さん」
真琴「………」
そうなのだ、秋子さんは、真琴のお母さんになっていた。
2度目の発熱したあの日、秋子さんに声もなく告げた言葉も『おかあさん』だったのだろう。
秋子「じゃ、おいしい晩ご飯、作るわね」
その時、秋子さんの目に光る物を見たような気がした。
振り返ると…
祐一「どうした? 真琴」
テレビの横の棚には、色々な写真を額縁に入れて置いていた。
祐一「覚えていたのか?」
ごく普通の、どこにでもありそうな(#FFFF00
そうか?
)仲のいい家族の写真。
だが、ここに写ってる暖かいぬくもりこそが…
再会
再会1部
再会2部
再会3部
再会エピローグ
おまけ
(本編とは関係ありません)
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